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景況感回復で悩ましいECBの金融緩和策

ユーロ圏7月分PMI速報値は過去21年間で最高水準に達したが、昨年からの好調を継続させた製造業に加え、サービス業はロックダウン規制の緩和に伴い急激な回復を果たしたことによる。特に観光セクターが主導しているところを見ると、ワクチン接種に伴う急激な経済再開が効いている。ドイツも最高水準をキープ、フランスは前月や市場予想対比下回ったものの高水準に留まり、ユーロ圏の経済状況は良好にあると言える。

リスクはデルタ株の感染拡大。また、英国ではフランスのベータ株感染拡大に伴い、フランスをレッドリストにこそ加えなかったものの、フランスからの帰国の際は隔離が義務付けられている程。ワクチン接種による経済再開と高揚感は確かにあるものの、一抹の懸念は残ってはいる。

とはいえ、新規受注など先行指数も堅調で、コロナウイルス再感染拡大リスクも現状の回復傾向に水を差す程にはならない可能性のほうが大きい。そのため、我々の予想でも、ユーロ圏の第3四半期GDPは2.8%と記録的な高水準としている。

そうなると、ECBの金融緩和策をどうするのか、について気になるところだ。先日のECB会合後、シンメトリックな2%インフレへのターゲット変更に伴い、フォワードガイダンスの文言を変更したばかり。すなわち、ECBのインフレ見通しが予測している範囲で2%に達し、その先々も2%を維持できるということにならない限り、政策金利は現状、もしくは現状以下の状態を維持する、というものだ。しかし、これだけ強い景況感の回復のもと、インフレ上振れは本当に一時的なものなのかどうかが鍵、ということになろう。これは米国と同様である。つまり、世界は“同根の問題に振り回される状況を、テーマを替えてまだ継続させている”ということになるのである。

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