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欧州の“財政リスク後退”を信じていいか

欧州議会とEU加盟国は気候変動やデジタル化などの分野への公共投資を一定程度容認しつつ、4-7年間で財政赤字を緩やかに削減する目標について合意した、ばかりである。これ自体は柔軟性を高めるという意味では良いこととして受け止められる。

そもそも、欧州は頑強な財政ルールがあり、それこそが信用の礎になっている。GDP対比で財政赤字が3%を超えない、債務が同60%を超えない、といった水準を遵守しなければならないルールになっており、日本のGDP対比で見た債務が260%と比較すれば、欧州の基準がどれだけ厳格か(日本が甘すぎるか)はっきりしよう。さらに、財政規律を守らない国の場合は、過剰赤字手続きが開始されるが、それでも是正されなければ補助金がもらえない仕組みになっている。

しかし、そもそも冒頭に述べた合意がなされる背景には、財政規律の弛緩が大きいことを忘れてはならない。これらルールがコロナを契機に、大いに弛緩していることは事実だ。財政弛緩が目立つのは記事が指摘しているイタリアのみならず。これまでのルールに照らせば、フランスやベルギー、スペイン、フィンランド、スロベニア、スロバキアなどもそれら基準に違反している可能性があるのである。

イタリアの財政再建への期待も高まっていることなどは良いことには違いないが、ドイツの製造業が冴えず、景気も冴えないことをどう捉えるべきなのか。ドイツが他国の財政赤字に対する許容を始める際は、自らの景況感に問題があるとき、の公算も大きい。財政赤字の対GDP比が2.8%に収まるということは、GDPが下がることによるサポートもあるのかもしれない。欧州の財政リスク後退を、文字通りに全面的に信用してよいのか、何とはなしに疑念が残る。

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