このところマネーロンダリング疑念がデンマークダンスケ銀行やドイツ銀行などで相次いで浮上している。日本より先んじた2014年6月からマイナス金利を導入していた欧州では金融機関の収益確保はそれでも可能とされてきていた。第一に絶対的な金利水準が確保されていたため、マージンが確保できたこと、第二に手数料収入への入れ替えがスムーズだったこと、第三にそれぞれの金融機関が得意分野に舵を切ったこと(ウェルスマネジメントやトランザクションバンキングへの特化など)があげられる。しかし、さすがにマイナス金利が長引けば副作用が蓄積するのは日本と変わらない。マネーロンダリング疑惑もそれと完全に無縁ではないのではないか。

 では、欧州金融システムのリスクが大きくなっているのであろうか。
 

銀行のクレジットリスクを見る際の基本はCAMEL分析である。Capital Adequacy資本の充足度、Asset Quality資産の質、Management経営力、Earnings収益力、Liquidity流動性の頭文字をつなぎ、各項目の状況から総合的に銀行の健全性を判断する手法。1979年に米国で導入された銀行検査の評価体系である。

 資本、資産はどんどん改善しているし、流動性はECBが用意したTLTRO(貸出条件付き長期リファイナンスオペ)が再設定されるかが鍵だが、金融緩和政策の継続がキモになっている以上、2019年早期の再設定が予想されるところ。収益性はこれからの課題になるが、ファンダメンタルズはそこそこ安定していることがわかる。

 とはいえ、格下げリスクに加え、景況感が冴えないことも重石になりかねないなど、懸念は残る。ポピュリズムの台頭により脆弱になりかねない欧州で、金融システム不安が再燃すれば、ソブリンリスクに簡単に火が付くであろう。“そこそこ”安定している今のうちに、盤石な金融システムにしておくことが望まれる。

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