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こだわり製品・サービスに学ぶ「自分の値段を上げる」3要素

 Potage代表取締役 コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。コミュニティづくりのノウハウを活かして個人や組織のコミュニケーションをデザインするお手伝いをしています。

 今回の記事は、こちらの日経COMEMOのテーマを元に、お届けします。

 最近の物価高、みなさんはどうお考えでしょうか。「どう」も何も「困る」としか言いようがないかもしれませんが、事実として急激な円安や世界情勢もあり、物価高が続くのは避けられないような状況です。

 そもそも、今回のようなある種イレギュラーな事態が起きなくても、安倍政権以降の政府および日銀は金融政策において、緩やかなインフレ(年間平均2%)を目指していたので、物価が上がるのは、ある種の既定路線だったわけです。その政策の是非はここでは問いませんが、平均所得が上がらない以上、多くの人たちが戸惑いを覚えていることは想像にかたくありません。

 とはいえ、嘆いてばかりいても仕方ありません。ちょうど選挙もあるので、今の経済政策に対して投票行動で意思表明をすることは大前提として、この急速な変化に適応するための自衛策をうっていく必要性も感じています。

 ではどんな自衛策を考えるべきかと言ったら「自分の値段を上げる」ことに尽きるかなあと思うのです。自身の市場価値を上げて、インフレに耐えうる収入を得ていくことが、当たり前の話ですが、大事だということです。

 もっとも、それが簡単にできるなら誰も苦労はしていません。年収を上げるべく努力をしてもうまくいかない人たちはたくさんいます。

 では、うまく自分の市場価値を上げるためには、どんなポイントをおさえればいいのか。そのためのヒントが、まさに今回の日経COMEMOのテーマ「  #値上がりしても買う理由に隠れているような気がしています。

 どういうことかというと、値段が上がったとしても買いたい製品やサービスと、単価が上がったとしても採用したい人材には、共通点があると思うのです。

 というわけで、以下「高くても選ばれる製品やサービスの特徴」と共通している、市場価値を上げられる人材の要件を整理します。ぜひお読みいただいて、面白かったらハートマークの「スキ!」を押していただけるととても嬉しいです。

当記事の下敷きになっているVoicyの放送です。

https://voicy.jp/channel/2789/339817

こだわり生活者が製品やサービスを選ぶ3つの要件

 例えば、発売当初から値上がりが続いていて、今回の円安でも大きく値段を上げた「Apple製品」は、典型的な「値上がりしても選ばれる製品」です。特にiPhoneの人気は、同じ値段を払えばもっと高性能なAndroid端末が手に入るにも関わらず、かなり根強いものがあります。

 ではなぜ、iPhoneは値段がどんどん上がっても、市場から選ばれ続けているのでしょうか。

 ちょっと古いデータで恐縮ですが、下記の統計調査では、こだわりある買い物をする消費者(こだわり生活者)が、こだわりなくものを買う消費者(非こだわり生活者)に比べて重要視する(重要視すると回答する人の割合にギャップのある)3つの要素が明らかにされています。この3つの要素がまさに「市場価値を上げられる人材の要件」に当てはまると思うのです。

 まず重要な前提をお伝えすると、この3つの要素には「機能性」や「品質」は含まれません。この2要素は「こだわり生活者」も「非こだわり生活者」も重要視しています。つまり、購入するための基本条件にはなるものの、製品やサービスを選ぶ「決め手」にはなりづらいということなのです。Android端末も品質や機能ではiPhoneにひけをとらないのに、後者が熱烈な支持を市場から得ていることを例に見ても、この点はうなずける気がします。

 では決め手となる3つの要素とは何でしょうか。調査によると、それが「希少性」「独自性」そして「デザイン」なのです。

 そして先述した通り、この3要素は「市場価値を上げられる人材の要件」にまさに合致します。以下、順番に解説します。

①希少性

 こだわり生活者は手に入らない限定の品、いわゆるレアな逸品の持つ希少性を重要視して、製品やサービスを購入する傾向があります。なかなか手に入らない限定モデルや、品薄になっている製品があると「ほしい」という気持ちが喚起される「こだわり生活者」の心理は、容易に想像できますよね。

 これと同様に、人材市場においても、希少性の高い人材は自身の市場価値を上げることができます。

 人材の希少性、というと「自分には当てはまらない」と思う方も多いでしょう。確かに、引く手あまたの凄腕のエンジニアやデータサイエンティストならまだしも、日本企業につとめる多くの人は、様々な業務をオーソドックスにこなすことに長けた「ゼネラリスト」です。「自分には希少性はない」とあきらめている方も少なくないでしょう。

 そんなみなさんに意識してほしいことがあります。「希少性は、つくりだせる」ということです。

 その典型例がダイヤモンドです。ダイヤモンドの原材料はただの炭なので、それ自体にほとんど価値はありません。しかし、丁寧にカッティングされたものを量を制限して流通させることで、市場の価値を上げることに成功しているのです。

 では人材としての希少性を持つにはどうしたらいいでしょうか。例えば会社員であれば、他の社員を見渡したときに、周りが持っていないスキル、したことのない経験、持っていない知見を自身が持っていると、その会社における希少性につながると思うのです。

 例えば、ITの知識をほとんどの社員が持っていない会社で、ネットワークやインフラやプログラミングの知識を持っている人材がいたら、会社がDXを推進する際にはとても重宝されるでしょう。手書きやエクセルでチラシをつくっている町の不動産屋さんに、Adobeのイラストレーターが使ってデザインができる人材がいたら、これもまたかなり重宝されるはずです。

 ITの知識を持つことは、ITの会社にいたら当たり前のことですし、イラストレーターを使えることは、デザイン会社にいればこれもまた当たり前のことです。しかし、ITやデザインの知識を持っている人が少ない会社に身を置くと、人材としての希少性を産み出すことができます。

②独自性

 こだわり生活者は、他の製品やサービスにない独自性があるかどうかを、購入を決める判断材料として重要視しています。これを人材に置き換えると「代替不可能なキーパーソンの市場価値は高い」ということとつながります。自分ならではの仕事や行動はどういうものなのかを省みることで、自分が代替可能な人間なのか、その職場や業界におけるキーパーソンと言えるのかどうかを推し量ることができるわけです。

 ただ、独自性は、大半の方にとっては、いきなりつくるのが難しいものです。ただし、自分なりの切り口で、独自性を比較的容易につくりだす方法があります。何かと言うと、自分が持っている複数のスキルや経験を組合わせて、オリジナリティに変える方法です。

 僕自身を例にとって説明します。僕のコアスキルは、場づくりやファシリテーションですが、それができる人材は世の中にたくさんいます。しかし僕の場合は「場づくりができる」「大きな会社で新規事業をつくった経験がある」「スタートアップやクリエイターのメンタリングした経験がある」「EQPIという性格分析のスキルを持っている」といった、多岐にわたるスキルや経験を有しています。

 これらの要素を「ファシリテーション×新規事業×メンタリング×性格分析」という風に組み合わせて掛け算して提供しているサービスが、会社内にイノベーターを育成するコミュニティ型組織開発プログラムです。

 このように、自分が既に持っている要素を組み合わせることで、オリジナリティある仕事を産み出すことができ、自身の市場価値につなげることができるのです。

③デザイン

 デザインには「わかりやすさ」「親しみやすさ」「気持ちよさ」など、様々な要素があります。Apple製品が市場から選ばれる要素の1つは間違いなく「見かけがカッコいい」そして「使っていて気持ちいい」という、UI/UXデザインです。ちょっとした体験のデザインの違いが、AndroidやWindowsとの差別化につながり、数多くのこだわり生活者を魅了しているのです。特に近年では、使って気持ちいい感覚をいざなう体験のデザイン、すなわち「UXデザイン」がより重要視されるトレンドになっています。

 僕の個人的な見立てですが、市場価値を上げられる人材に共通する大きな特徴があります。「一緒に仕事をしていて気持ちがいい」ことです。そういう人たちは、どんどん人が寄ってくるし「この人といるといいパフォーマンスがあげられるな」という雰囲気を出すことができます。

 この要素こそが、ハイパフォーマーが持つ「UX」です。

 周りに対して「一緒に仕事すると気持ちがいい」と思える状況をデザインできる人材は、市場価値を上げることができます。そのためには「コミュニケーションを磨く」ことがとても大事になります。

 いきなり人当たりをよくしろと言われても、難しいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この「コミュニケーション磨き」にはすぐに実践できることがいくつもあります。

 僕は企業向けに社内のコミュニケーションをデザインするプログラムを実施していますが、そこでお伝えしていることをいくつか抜粋すると、例えばこのような実践術があります。

・頬の運動を習慣化して表情筋を鍛える。結果、自然な笑顔をつくれるようになる
・EQ(感情知性)を測定して、トレーニングすることで、他者への共感力を身に着ける
・話を聴くときに丁寧にあいづちを打つ。ワンパターンにならないように、複数パターンのあいづちを組合わせる
・相手の喜怒哀楽の感情を先回りした「共感コメント」を発する習慣を身に着ける
・斜に構えないように相手と接する。斜に構えると、斜に構えた人ばかりが周りに集まってくる。  などなど

 市場価値の高い人材の多くは「人たらし」です。愛される力があり、人間味のあるコミュニケーションを志向します。相手の気持ちに立って発言をし、相手の言葉を丁寧に受け止め、丁寧に返します。そして、この多くは、本人が意識して「体験」をデザインしていった結果、後天的に身に着けたものだったりします。

 もちろん見た目という意味でのデザイン(つまりUI)も、市場価値に影響するかもしれませんが(容姿がどうしても価値と紐づく業種業態というのも存在しますよね)より重要なのは、丁寧なコミュニケーションにより、一緒にいて心地いい「UX」をデザインできることなのです。

物価高の時代、値上がりしても選ばれる人材を目指そう

 「値上がりしても選ばれる製品」と「市場価値を上げられる人材」の共通点についてご説明しましたがいかがだったでしょうか。

 多くの人たちが、自身の市場価値を上げようとするときに、それぞれの業種に紐づいた特定のスキルを獲得しようとしたり、資格をとろうとしたりします。それはそれで価値を上げることにつながることは否定しませんが、製品やサービスに例えるならそれは「機能性」や「品質」を上げるプロセスです。

 それらはあくまで大前提であり「こだわりある人選びをする」企業や個人にとっては、決め手にはなりません。最終的には、その人材の希少性、独自性、そしてデザイン(コミュニケーション)で、採用するのかどうか、そしてより高い待遇を用意するかを決めるのです。

 「希少性」「独自性」「デザイン」を意識して行動をデザインすると、周りから自身への反応は徐々に変わってきます。そこでポジティブな反応の連鎖を産み出すことが、より市場から必要とされる自分自身をかたちづくっていくのです。

 全階層向けに「コミュニケーションをデザインする」プログラムを提供しています。ご興味ある方はぜひホームページのフォームよりお問合せ下さい

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