KDDI復活の奇策を考える(または楽天モバイル)

突然の「菅ショック」により、KDDIの株価が苦戦している。これは菅義偉官房長官が国内の携帯料金について「4割程度下げる余地がある」と発言したことに起因し、国内の通信事業への依存度が高いKDDIの株価が一人負けしている状況のことである。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34666150Y8A820C1000000/

もちろんただ手をこまねいているわけではなく、以前より非通信事業の収益を伸ばす努力を続けており、17年度実績では5217億円と、ある程度の規模に育ってきた。しかし、このタイミングで発表されたものはネットフリックスとの連携プランという、他のキャリアでは3年も前に発表されているもので目新しさはない(ソフトバンクは2015年8月24日に提携を発表している)。この内容に市場は素直に反応したということであろう。

国内の契約者数の大幅な増加が見込めない中でどのように攻めていくか。ソフトバンクのように海外に大きく攻めるというのもあるが、何度も挑戦をした結果大きなインパクトの出せていないドコモの例をみると、やはり一筋縄にはいかない。すると、やはり国内をどうするかという話に戻る。既定路線で非通信事業をがんばるのも結構だが、実はまだ取り切れていないパイが残っている。それは、「ガラケー」である。

■スマホの伸びが横ばいに

http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc262110.html

平成29年版情報通信白書によると、近年のスマートフォン比率は72%程度で高止まりの様相である。これを3社で分け合っている。一方で残る30%弱のガラケーはスマートフォンへの移行が進まず、引き続き残り続けている。移行しない理由の多くは「料金」「バッテリーの持ち」「通話のしやすさ」等であろう。これらの不便さを一気に解消できれば、理論的には契約者を倍増することができる。

auには過去に大ヒットしたガラケーが存在する。最近15周年を記念して復活モデルが発表され、ファンの話題をさらった。

http://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2018/07/12/3265.html

これらのアセットに加えて大胆な策をとることができるか。そのヒントは、インドにあった。

■ 出荷台数でガラケーがスマホを抜いた国、インド

ここ1年でインドの携帯電話事業の景色が様変わりしている。過去には10以上の事業者がひしめき合う市場であったが、勝ち負けがはっきりしてきたため業界の再編が急ピッチで進んだ。ここで大きく躍進したのが、リライアンスジオである。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27567150R00C18A3FFE000/

1年間で1億以上の加入者を獲得し、シェアを14%程度まで伸ばしたジオ。その起爆剤となったのが格安のフィーチャーフォン「JioPhone」と「300円弱で通話/SMSし放題、データ42GB」という破壊的なプランである。

https://kobit.in/archives/11637

「JioPhone」はフィーチャーフォンではあるが、一部のAndroidアプリも動作する独自の「KaiOS」を搭載している。いわば、スマートフィーチャーフォンとも言える存在だ。このユニークなOSの開発会社にはGoogleも出資している。

https://japanese.engadget.com/2018/06/29/google-os-kaios-2200/

つまり、KDDI復活の奇策として「破壊的なプランでINFOBARを出し、ガラケーを全部とりきる」というのが考えられないだろうか。Googleアシスタントが動作するため、音声入力も動作する。スマホのタッチスクリーンに抵抗のある高齢者でもかんたんに利用できる。しかも、見た目がちょっとクールなので「らくらくスマホ」を敬遠していた層でも問題ないだろう。

■ 楽天モバイルの奇策はこれか!?

話は変わるが、楽天がMVNOからMNOへと参入するニュースが話題となった。新規割当を受ける周波数帯のネットワーク構築にかける設備投資の金額が約6000億円と、従来の常識からするとかなり少ない額を見積もっていることも驚きであった。まだ詳細が公開されていないが、これを読み解くキーが同じくリライアンスジオである。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33095880Y8A710C1000000/

CTOをして抜擢されたのが、ジオで上級副社長を務めたタレック・アミン氏。ネットワーク構築の知見もさることながら、その人脈により端末調達でも力を発揮する可能性もある。先に説明した市場環境を考えると、一気に市場を獲得する策として検討していたとしても不思議ではない。

競争も一段落したかと思われた国内携帯電話事業。今後政府の介入をきっかけとしたダイナミックな変化が訪れるどうか。いち消費者としての興味は尽きない。

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