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ITエンジニアフリーランスがダウントレンドになりそうな気配

フリーランスにまつわるトラブルについて漏れ聞こえるようになりました。フリーランスの入場を禁ずる企業も出てきており、フリーランス界隈では大きな潮目を迎えています。

いわゆる「悪貨が良貨を駆逐する」状態です。何が起きているのかの整理や、今後の対策などについてお話します。

相次ぐフリーランスにまつわるトラブルの背景

フリーランス界隈で起きる問題が増加している背景としては、フリーランスそのものと、仲介するフリーランスエージェントらの変化によるものだと考えています。

フリーランスになることがゴールだった意識低い系フリーランス

2018年、2019年にピークとなったプログラミングスクールの広告では、当初はITエンジニア正社員転職をゴールに掲げていましたが、あまりに内定が出ないため開業届だけで済む「フリーランスになろう」と煽る方向にシフトしました。

度々このnoteでも話題にしますが、昔の業務委託は「自社の給与水準では雇えないが、特定業務のスペシャリストでありどうしても働いて欲しい人」と契約するものでした。しかし今は未経験・微経験のフリーランスが増加しています。

そもそもの話として、フリーランスという言葉が問題であると考えています。一部プログラミングスクールや情報商材、フリーランスエージェントではフリーランスという言葉が「自由」の象徴であり、正社員になることが束縛の多い「不自由」の象徴であるように見せる傾向があります。実際は契約がなくなるとただの「無職」であり、末端のタスクだけを消化するのは「フリーター」のようでもありますが、このあたりに気づくのは契約を失い始めてからのようです。

フリーターのようなフリーランスが増えた結果、「飛ぶ」という事象が発生します。いわゆる連絡がつかなくなる状態です。昔からある話ではありますが、フリーランスに気軽になる方が増えた結果、アルバイト感覚で「飛ぶ」方がいます。私もITエンジニアではないですが、発注元から借りたPCごと連絡がつかなくなった業務委託人材の件と対峙したことがあります。

相手が企業体であれば謝罪や賠償を求められるのですが、連絡がつかなくなった個人はなかなか追いにくく、後述するように住所が虚偽だったりすると厄介です。発注元が追いかけるコストを払わないと判断した結果諦めるケースもよく見ます。

フリーランスエージェントが増えすぎて劣化

主に次の2点からフリーランスエージェントを新規に開業しがちです。

1点目は、フリーランスエージェントは開業時に派遣会社のような免許が不要であり、誰でも始められるためです。

2点目に、SESのように自社で正社員エンジニア採用もしないため、例え案件がなくても給与に相当するものを支払わなくて済みます。案件が取れた場合にのみ依頼先のフリーランスに再委託すれば良いだけです。

こうしたことから安易にフリーランスエージェントを始めがちです。商習慣を理解せず、またトラブルやリスクを特に理解しないままうっかり起業するため、トラブルが発生しがちです。

海外勢の手頃なお金稼ぎ

2021年のコロナ禍の金余り現象に後押しされたエンジニアバブルでは、とにかくエンジニアの数を集めるのが正義でした。正社員採用が望ましいですが、投資家からの圧力もあって実装要員としてフリーランスを集める需要も高いものでした。

コロナ禍によるフルリモートワークの広がりもあって、全国採用もありましたし、一部の企業ではスタートアップであっても全世界採用をしていました。当時でもDeepLが急速に発展していたので、テキストベースであればなんとか指示は出せる状況でした。

今でも採用に苦戦するスタートアップなどであればフルリモートで広く求人をかけるわけですが、そうなるとやたらと海外からの応募があります。

私も入場した先の現場でステージング環境を構築するインフラのタスクで一緒になったことがあります。エンジニアが居らず選考がゆるゆるだった現場だったので入れたようなのですが、都合が悪くなると日本語が通じないふりをしたり、本番環境とまるで違うミドルウェアで組まれていたりしたので退場手続きを進めました。結果、数ヶ月の在籍で彼は消えましたが、アウトプットを残さないまま100万円/月をかっさらっていきました。

正直なところ、フルリモート万歳勢から刺されそうですが、全く持って顔を合わさない契約はリスクが高すぎると考えています。

北朝鮮の暗躍

海外勢の中で、最もリスクが高いのは北朝鮮絡みでしょう。

日本に限らず、アメリカでも北朝鮮のエンジニアが身分や国籍を偽ってフリーランスとして開発の現場に入り込んでいるということを警告しています。

米政府は22年、北朝鮮のプログラマーが身分や国籍を偽り、外貨の獲得に加担しているとの警告を発した。日本の警察庁も24年3月、北朝鮮のIT技術者が日本企業から業務を受注している疑いがあるとの情報を開示した。

ただでさえ業務委託を使いたいほど忙しい事業会社において、外注先に関連して公安に捜査協力をしたり、コミットされたコードの確認や各種操作ログを調査しなければならないのは相当つらいシチュエーションでしょう。

個人の身分証明の難しさ

諸々のリスクを鑑みると、発注者からすると身元の確からしいSES事業者に対し再委託禁止で業務委託契約を結ぶというのが大方の対策になるのではないかと思います。

フリーランス新法のリスクを考えると発注できない

2024年11月からフリーランス新法が始まります。

従来の下請法では資本金1,000万円超3億円以下または5,000万円超の法人事業者が「親事業者」とされていましたが、フリーランス新法ではこの資本金の縛りがなくなります。

従って資本金1,000万円未満の中小企業や個人事業主から個人事業主に対する発注がスコープに入ってきました。中小SESや、フリーランスからの再委託などの契約がフリーランス新法の対象に入ることになってくることが大きいでしょう。

フリーランス個人で見ると、契約が始まってしまえば保護の対象になるので歓迎でしょう。しかし、これまでお話したようなトラブルが多い現状では契約を躊躇する中小企業が出てくると考えられます。特にX界隈でよく見る「自身で受託して捌ききれない案件の再委託先をXで募集」というようなフローはリスクが大きいので、減少していくと考えられます。

フリーランスが生存していくために

一人で働くにしても、法人格を持っていないと契約できないシチュエーションが増加していく可能性があります。従業員を雇わない事業者であればフリーランス新法の対象にもなります。

法人化し、自己ブランディングを進め、変なエージェントや媒体を使わなくても受注できるようにすることが身のためでしょう。企業から指名の上で直接受注を目指していくのが理想です。

https://niben.jp/niben/pdf/NF202311_20.pdf

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