「米国の景況感は絶好調」とFOMC委員が強気になっていることが、発表された9月のFOMC議事要旨で確認された。しかし、聊か自信過剰気味にも見える。家計消費好調、可処分所得が上昇している、という点はよいにせよ、貯蓄率が上昇していることさえ、強気な景気見通しの証拠の一つとして羅列されてしまっている。日本では『貯蓄から投資へ』、と必死に促すもなかなか投資に回らない、と嘆いている。その背景に、将来に対する漠たる不安があるから、日本国民は貯蓄するのだ、という解説されるのが普通。しかしところ変わって米国だと、さらに消費が増えるかも、と解説される。ポジティブシンキングにも程がある、と見えなくもない。

しかし、そんな米国も、頭痛の種は多い。そこら中を取り巻く地政学的リスク、米中貿易戦争の過熱化、シアーズに見られる小売りセクターの再編やそれに伴う波乱など。加えての財政赤字問題。

議会予算局CBOは2020年度に財政赤字1兆ドル突破と試算。本来は2022年度に同1兆ドル突破から二年前倒しで達成との厳しい見通し、である。トランプ政権が財政政策を発動してきたことに加え、2017年12月からの大幅減税により、ダブルで財政赤字悪化ペース拡大に効いてしまうため。向こう数年間は財政赤字の対GDP比は増加し、2017年3.5%から、2022年5.4%、2028年にかけて4.6-5.2%程度というイメージである。連邦債務残高対GDP比も当然悪化。IMFの見通しでは2018年の同比率は108%。債務残高対GDP比で見れば日本より“まし”だが、財政赤字対GDP比はよほど米国の悪化が激しい見通し。米国のデフォルトは実質的にはあり得ない話だが、これまでも時折、政府閉鎖を経験したり、定期的に市場のリスクとして浮上してきたことを考えれば、米国の巨額財政赤字にも対応をしておく必要がある。そうでなければ、パウエルに嫌味を言って金利上昇を阻止しようとしても、勝手に金利上昇圧力がかかってしまうことになりかねない。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO36526830W8A011C1MM0000/

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