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6月短観から見た23年度業績見通し

日銀短観とは 景況改善で日経平均どう動いた - 日本経済新聞 (nikkei.com)

6月短観における23年度の収益計画によれば、売上高・経常利益とも上方修正となりました。

こうした中、売上高計画の上方修正が目立ったのが、「対事業所向けサービス」「紙・パルプ」「繊維」「不動産」となっています。
まず、「対事業所向けサービス」については、職業紹介・労働者派遣事業が含まれていることから、ここ元の人手不足や賃上げ等に伴い労働市場の流動性が高まっていること等により、売上高が上方修正された可能性が推察されます。
一方、「紙・パルプ」や「繊維」などでは、これまでのコスト増の価格転嫁が遅れて反映されたことが推察されます。
他方、「不動産」では、4月に執行部が交代した日銀が当初の想定以上にハト派なスタンスとなったため、早期の金融政策の出口観測が後退したことが想定されている可能性が示唆されます。
従って、次の四半期決算における業績見通しでは、こうした業種に関連する企業について売上高計画がどの程度上方修正されるかが注目されます。

一方、 経常利益計画を基に大幅上方修正が期待される業種を見ると、上方修正率が最も大きいのは「紙・パルプ」となっています。これは、木材や原油など輸入原材料価格の低下が大きく寄与していることが推察されます。
それに続くのが「自動車」です。背景には、半導体不足の緩和に伴う世界的なペントアップディマンドの顕在化が期待されていることが推察されます。
それに続くのが「卸売」ですが、大企業の卸売りは主に商社が含まれるため、一部企業の資産売却益が反映された可能性が推察されます。
なお、新型コロナに対する国民の恐怖心低下や経済正常化が期待される「対個人サービス」や「宿泊・飲食サービス」もそれに続く上方修正となっています。
このように、次の四半期決算で経常利益見通しの上方修正が期待される業種としては、輸入原材料価格の低下に伴うコスト減が期待される素材産業に加え、半導体不足緩和に伴う加工業種、新型コロナに対する国民の恐怖心低下や経済正常化期待の恩恵を受けることが期待されるサービス関連産業等が指摘できます。

大企業の想定為替レートは、2023年度にドル円で131.7円/$、ユーロ円で139.2円/€となっていますが、足元のドル円レートは140円台を大きく上回っています。
中でも円高方向に今期の為替レートを想定しているのが、むしろ円安が恩恵になるとは限らないサービス関連産業ですが、「輸送機械」をはじめとした輸出関連業種も足元よりかなり円高気味の水準を想定しています。

今後、ロシアのウクライナ侵攻の動向、米国の景気後退懸念などによりリスクオフになり、各国中銀の金融引き締め姿勢が後退するなどして為替レートの水準が円高方向に進まなければ、こうした今期の為替レートを円高方向に想定している業種に属する企業を中心に今期業績が修正される可能性があることは注目に値すべきでしょう。

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