見出し画像

コロナ禍で生まれた働き方の課題を解決するために試した3つのこと

外出や出張の急激な減少による物理的な働き方の変化


新型コロナウイルスの流行で自分にとって何が一番大きく働き方に影響したかというと、それは外出や出張の急激な減少であった。

2019年には1年の約1/3を東京離れて過ごしながら仕事をしていたのが、2020年2月の海外出張を最後に、その後は基本的にずっと東京の、それも電話ボックスの倍くらいの小さな個室オフィスに閉じこもって仕事をすることになってしまった。

元々自分のオフィスを離れて仕事をすることも日常茶飯事で、リモートワークについてはコロナの問題が起きる以前から対応していたので私自身はこの点には特に問題はなかったし、むしろ取引先がオンラインでの会議やミーティングに対応してくれるように急激に変化したので、その点では大変働きやすくなった。相手の方は、実際にはなかなか自宅からというわけにはいかず通常通りオフィスから、というオンライン会議もかなり多いのが実情ではあるのだが。

ただ、コロナ前は、オープンなシェアオフィスで時に顔見りと雑談なども楽しみながら仕事をすることが多かったが、感染予防の面に加えてオンラインのミーティングが増えることで防音の点でオープンなオフィススペースの使い勝手が必ずしも良いわけではなくなったため、自宅から徒歩で通える小さな個室のオフィスが自分の仕事のメインの場所に変わった。

また、それまでは都内であっても移動しながら仕事をすることが多かったので、ノートパソコンのディスプレイで間に合わせていたのだが、同じオフィスの個室にずっとこもっていると、ディスプレイの小ささが気になると同時に、うつむき加減にディスプレイを見る角度が首に負担をかけ、肩こりもひどくなったので外付けのディスプレイを購入した。

最も大きな課題は、メンタル・マインドのコンディションを保つこと

現象面としてはこうしたことで解決がついたが、なんとしても解決しなければならなかった課題は、気分転換とモチベーションの維持、そしてアイデアを生み出すきっかけを得ることだった。

コロナ前は国内外を転々と移動しながら、新しい風景を目にし、知らない人に会って話し、食べたことのないものを食べ、という刺激がよい気分転換になっていたし、またそうした中でインスピレーションを得たりアイデアを考えたりするのが普通であった。また、移動時間が自分にとってゆっくりと考えごとをする時間になっていたということにも改めて気がついた。

外出や移動がなくなり、いってみれば自分がこれまでアイデアを生み出してきた原動力を失ってしまったために、これをどのように取り戻すかということはとても大きな課題だった。

また、コロナ感染に対するストレスもあるが、人と接触することの激減や、収入を維持できるかといった不安など、この状況でのメンタル面のマイナス影響は無視できないものがある。

この問題に対しては、いくつかの方法で対処することを試み、まだ十分とはいえないが一定の成果を得たのではないかと思うので紹介したい。

解決の試み1:近所の散歩の精度を上げる

1つは個室のオフィス周辺と自宅周辺を、小さな路地に至るまで徹底的に散歩をしてまわることである。ランチはいつもオフィス近くの店でテイクアウトして個室で食べることがもう1年半ほどの習慣になっているが、食事をした後にはよほど用事が立て込んでいない限り、また天気が悪くない限りは腹ごなしを兼ねて散歩することにしている。コロナ前は自宅や個室オフィスの周辺は決まったルートしか歩かないことが普通であったが、今回のコロナの状況を機に、ランチ後の散歩でそれまで通ったこともなかったような小さな道をくまなく、しらみつぶしにといって良いくらい歩き回った。そこで自分が知らなかった飲食店を見つけ、そこがランチのテイクアウトを提供していれば注文をしてみたり、また自分がランニングをする時に適する道の広さや人の少なさ、あるいは坂のありなしといったことを知り、自分のランニングコースに取り入れるなどの効用があった。これが国内外の移動で知らない土地を歩くほどの刺激があるかと言われればそうではないかもしれないけれど、自分の身近にこんなにも知らない道があり、知らない建物や寺社仏閣などがあるということは、自分の好奇心を刺激してくれる点で悪くない試みだった。ただ最近は散歩するレベルの距離にある範囲の道はほぼ歩き尽くしたといってよく、それに代わるものを見つけることが課題となっている。

解決の試み2:オンライン雑談を意識的に


2つめの試みはオンラインで話をする時間を増やすことだ。今年の初めにクラブハウスが盛り上がった時には、かなりクラブハウスを活用することも多かった。最近では以前より利用は減っているが、クラブハウスにしても何か特定のテーマと時間と相手を決めて話をするというよりは、自分の知り合いがフリーな状態でオンラインでいるのを見つけては、ちょっと短い時間の気軽な会話を楽しむことにクラブハウスを使ったりした。また、オンラインで仕事の話をする時に、余裕があれば前後に雑談的な話を入れることも増えたように思う。考えてみると私が仕事をする相手は女性の比率が少なくないように思う。女性のちょっとしたおしゃべりに私も付き合わせてもらうことで思いがけない情報交換ができたり、またそういった会話をしたことが元で仕事に関するオファーもらったりなど、気分転換だけでなく仕事に結びつく面でもプラスが多いように思う。もちろん男性同士でもこうした話をすることはあるが、コミュニケーション能力に長けていておしゃべりが上手であるという点では、このようなコロナの状況下では女性の方が有利なのかもしれない。

解決の試み3:新型コロナウィルスに好奇心を寄せる


そして3つめは、新型コロナウイルス自体に興味を持つことで自分の好奇心を満たしている、ということがある。世界中の医療関係者など専門家が、いってみれば総力をあげて1つの共通の課題に集中的に取り組んでいる状況というのは、おそらく自分が生まれてこのかた初めてのことではないかと思う。日本語だけでなく英語の情報にも目を通していけば、日々新たな研究の成果が生まれ、新たな取り組みの試行があり、その結果がレポートされるという状況は、非常に興味をそそられるものがある。そして難しい専門媒体などのページを一つ一つ見て歩かなくても、研究の成果や新たな発表の内容について Twitter で情報提供してくれる人が非常に多いことも、私のような専門外の人間が容易に世界中の動向を知ることを助けてくれた。また、ウイルスそのものだけでなく、コロナ禍の社会状況の在り方や人々の多様な反応という点も非常に興味深い。外出して新たなものに触れることができない代わりに、強烈に好奇心を刺激される状況が続いている。

もちろん新型コロナウイルスに好奇心を持つことが自分の対応方針を考えたりまた感染予防について知見を得るという意味でも役に立っているが、それ以上に自分が新しいことを知るという欲求を満たしてくれるものになった。

なお残る課題とは


それでもなお残される課題かもしれないと最近感じはじめているのは、移動時間や待ち時間などの、いってみれば時間の余白あるいは”のりしろ”がない状態でオンラインのミーティングが立て続けに進んで行く、新しい時間感覚に対する慣れの問題が出てきているように思う。

移動や待ち時間などがないから時間の使い方は効率的になっているはずなのだが、その分打ち合わせの数が増えてしまったりするし、自分がオフィスにいる時間が長いわりに生み出されている成果が少ないような感覚に、少し戸惑いを感じている。

いずれにしても、まだまだ新しい働き方の状況は始まったばかり。いろいろと試行錯誤をつづけていくつもりだ。

#日経COMEMO  #コロナ禍で変えた働き方

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?