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米中対立と5Gを軸に考える、欧州スタートアップに注目する理由

ヨーロッパの代表的なスタートアップ関連イベントの1つである ウェブサミットが日本でも開催されることになった。

ヨーロッパ発の同種のイベントでは、スラッシュが既に日本で開催されているがそれに次ぐものとなる。

徐々に他の国や地域にも目が向くようになってはいるものの、どうしてもスタートアップというとシリコンバレーに目が行きがちである、というのが一般的な認識だとは思う。アジアはまだしも、ヨーロッパは日本にとって遠い場所であり、入ってくる情報量もその重要度に比べれば少なく、それに比例して人々の認識もあまり高くないように感じている。

しかし、アメリカと中国の対立が深まり、例えば5G関連製品をファーウェイに代表される中国のテクノロジー企業からの導入を拒むなど、米中関係が悪化している中で、アメリカおよび中国の双方と関係が深い日本にとって、この対立は、スタートアップに限らず日本経済に非常に深刻な影を落とす可能性があると感じている。

こうした時に、経済的安全保障という観点でも、中国とアメリカ以外のマーケットにもきちんと目を配っておくことは、これまで以上に重要なことになるのではないだろうか。中国以外のアジア諸国も当然であるが、もう一つ重要な経済圏であるEU及びイギリスを含めたヨーロッパ圏というのは、きちんと見ておかなければならない地域であると思う。

また、スタートアップという点に限っても、フレンチテックとして知られるようになったフランスのスタートアップ振興策は日本でも徐々に認識されるようになっており、 CES では、アメリカのイベントであるにも関わらずフレンチテックのスタートアップ企業の出展は、ユーレカパークの一番大きな面積を占めるまでになった。

また、今後の産業を考える上で大きなキーになると考えられる5Gだが、スマートフォン端末を中心に見ると、どうしても Android や iPhone が目立つので米国が主導しているかのように見える。しかし、基地局など通信ネットワークのテクノロジーは、引き続きノキアやエリクソンなどヨーロッパ勢が中心を占めており、そこにファーウェイが肉薄しているという状況と認識している。

そして5Gになるということは、当面はまだスマートフォンの動きのように表面的には見えるけれども、近い将来にはスマートフォンとは別な軸でビジネス構造の転換が起きるものと見られている。その時に通信ネットワークがどのように作られていくかよって、そのビジネスのあり方が左右される可能性もあるだろう。

もちろんこの時に、データセンターなどのプレーヤーとしてGAFAをはじめとするアメリカIT企業の影響力を無視することはできないが、一方で大もとの通信のテクノロジーを供給するプレイヤーとして、ヨーロッパ勢のプレゼンスがどのくらい5Gの時代において大きいかということは、注視していきたいポイントだ。

また、スマートシティなど5Gで実現されるとみられるものが、実際に導入されビジネスとして成立していきやすいのが、果たしてアメリカのような国であるのかどうかということも、もうひとつの着目点だと思う。ある程度のエリアの中に一定以上の人口が集中している場所、つまりは都市というものが広く分布しているのは、アメリカよりはむしろ、日本や日本をはじめとするアジアやヨーロッパの国々の方ではないかと思う。こうした場所での5Gの実証および実用化というものが、今後の5Gビジネスのキーになるのだとすれば、5Gビジネスの相手先もアメリカ中心で、と考えることがバランスを欠く可能性があることは、たとえば新幹線に端を発した高速鉄道の普及とそのビジネスの世界的な広がり方を考えてみるとよいのではないだろうか。

もちろん、GAFAをはじめとするアメリカ企業の影響力を見くびってはいけないが、そこだけが今後も中心であり続けるかどうかということはよく見極めなければいけないし、またせっかくビジネスの潮目が変わるのであれば、そういう中で日本とスタートアップを含む日本のビジネス界がどのように世界のなかでチャンスを握るのか、ゲームチェンジを起こせるのか、という視点も忘れてはいけないと思う。

たとえば、イギリスは5Gの分野でNECに期待を寄せており、来月発効する予定の経済連携協定(EPA)がこの動きの後押しとなる可能性があるという。

こうした現在の国際社会・経済状況を重ね合わせると、ウェブサミットの東京開催は、国際的な視野のバランスを保つ意味でも大きな意義があり、その開催を楽しみにしたいし、それまでにこうしたイベント開催に支障がないような社会状況となっていることを願っている。

なお、もう1つヨーロッパで有名なスタートアップ及びオープンイノベーションの関連のイベントとしてフランスのビバテクノロジー(ビバテク)があるが、来年に実施が検討されているオンラインとオフラインのハイブリッド開催の最新の状況について、12月17日の日経イノベーション・ミートアップで、創設メンバーがパリからオンライン参加して直接語ってくれる予定だ。ビバテクのファウンダーの話をじかに聞くことが出来る機会なので、ご興味のある方はぜひこちらにも参加していただきたい。

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