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脱炭素社会に向けて「海藻」が注目される理由

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

先日終了した広島サミットで議論されたグローバルな課題には、クリーンエネルギーや気候問題、自然危機、そして脱炭素社会などが多く含まれていました。また引き続き各国が協調しながら、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を加速させることで合意しました。

脱炭素社会というと自然エネルギーであるとか、電気自動車への移行であるとか、人間の社会活動による排出の減少について議論することが多いように思います。排出を減らすことと同じくらい重要なのが、炭素吸収側です。

出所:NTT宇宙環境エネルギー研究所「Beyond Our Planet」

森林が光合成により二酸化炭素を吸収することは広く知られています(グリーンカーボン)。よって、過度な森林の伐採を減らし、植林活動などにより将来に向けて育成していくことが大切です。もうひとつ注目すべきなのが、海洋での吸収です。

吸収源となっているのは、マングローブ林や海草藻場などの沿岸海域の生態系であり、いわば海にある森です。これらはブルーカーボンと呼ばれ、前述のグリーンカーボンにはない特徴を持っています。

海の森による炭素吸収は、陸上森林による炭素吸収(グリーンカーボン)が59.3%なので、量的には及ばない。しかし、ブルーカーボンにはグリーンカーボンにはない重要な特徴がある。

 それは、海洋中に長く炭素が貯留されることだ。植物や藻類に取り込まれた炭素は、一部は呼吸により排出されるが、残りは食物連鎖の中で生物中の有機炭素として順々に受け渡され、循環を続ける。この過程で糞(ふん)や死骸を経て無機物に分解されてゆくか、炭酸塩(貝殻など)や難分解性の有機物となって海底に堆積し、あるいは海中で浮遊を続ける。

 そして、海中の対流により深海域に移行した炭素は、実に1000年以上もの間、大気から隔離された状態で海中にとどまり続けるのである。深海という広大な炭素の貯留場所の存在が、グリーンカーボンにはないブルーカーボンの特徴と言える。

日経XTREND

海に囲まれた日本近海には、約1500種類の海藻が存在するそうです。毒を持つ海藻はなく、味はともかくとしてほぼすべてが食用になりうるものです。しかし、食用とされているのはせいぜい20種類程度。栄養面でみても海藻には、タンパク質、ミネラル、ビタミンが豊富に含まれています。

また、先日nomaの記事を書きましたが、ここで特にフィーチャーされていたのは我々には馴染み深い「昆布のうま味」でした。近年、欧米のトップシェフの間では従来の甘味、塩味、酸味、苦味に加え、うま味を活用する人が増えてきています。その結果、昆布はKOMBU、うまみはUMAMIとしてそのまま英語表記で通用しつつあります。以下はUMAMIについてnomaが説明しているInstagramの投稿です。

このように世界で注目を集めている海藻ビジネス。そのトップランナーとして活躍している日本のスタートアップが、シーベジタブルです。

2016年4月に地下海水を利用した海藻の陸上養殖モデルを確立し、全国各地で「海藻ファーム」を展開するシーベジタブル(高知県安芸市)は22年11月、海藻の新たな活用法を提案する食品ブランド「Re-seaweed(リ・シーウィード)」を発表した。第1弾商品として、アオノリを用いた発酵食品「青のり醤油」の予約販売を自社電子商取引(EC)サイトで今春をめどにスタートする予定だ。

青のり醤油の開発に携わったのが、21年11月にシーベジタブルがオープンした「SEA VEGETABLE Test Kitchen」で海藻料理や調味料の開発を担当する石坂秀威氏だ。石坂氏は「世界のベストレストラン50」で世界第1位に4回選ばれたデンマーク・コペンハーゲンの有名レストラン「noma(ノーマ)」の姉妹店的な存在として18年に東京・飯田橋でオープンした「INUA(イヌア)」のスーシェフ(副料理長)として料理開発を担当していた経歴を持つ。

日経電子版

また、海藻テックとして世界に挑戦しているスタートアップもあります。砂糖と寒天で作る和菓子「琥珀(こはく)糖」に注目し、健康に敏感な米国の消費者をターゲットに「グルテンフリー」や「ビーガン」といったトレンドに乗り急成長しています。

砂糖と寒天で作る和菓子「琥珀(こはく)糖」をベースにルビーやヒスイなどのように形作られ、ユズやハイビスカスなどといったフルーツや花の香味が楽しめる。小麦を使わない「グルテンフリー」で、ビーガン(完全菜食主義者)でも食べられる。健康に敏感な現地の消費者を知る三木アリッサ氏(30)が開発した。三木氏は食品スタートアップ、Cashi Cake(カシケーキ)の最高経営責任者(CEO)を務める。

「日本には世界に誇れる食文化がある」と考えた三木氏は食分野で起業し、菓子を最初の製品に選んだ。20年にはクラウドファンディングをきっかけに米国の有名タレントであるキム・カーダシアン氏とのコラボを実現し、知名度を高めた。菓子に続いて「海藻を中心としたプロダクト」(三木氏)を開発しており、22年以降に発売する。

日経電子版

まだまだポテンシャルのある海藻の利活用。海に囲まれた地の利を活かして、世界をリードする日本企業が羽ばたいていくことを期待しています。


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タイトル画像提供:divedog / PIXTA(ピクスタ)

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