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新卒は大企業に入れるなら大企業が良いに決まっていた・・・最近までは

中小・ベンチャーにも良い会社はあるよと大人は言うけど

日経電子版で「#就職は大手かスタートアップか」というテーマで記事が募集されている。最近では、「成長したいのなら大手よりもスタートアップの方が良いよ」と就活生の間で実しやかに話されているのもよく耳にする。
また、大学などの就職支援でキャリアコンサルタントから「大手ばかり見ていないで、中小やベンチャーも良い会社があるのだから見たほうが良いよ」と就活生がアドバイスを受けることも少なくない。
学生からすると「お勧めするなら、大手よりも良いとおもうスタートアップや中小・ベンチャーの会社名を教えてよ。どうせ、競争率の高い大手企業よりも内定を貰いやすい競争率の低い中小・ベンチャーのほうがリスクが低いからお勧めするだけでしょ。」と白けた気分になることも少なくない。

さて、それでは大手と中小・ベンチャー、スタートアップ、学生は何を基準に選ぶべきなのか。

入社できるなら大企業が良いに越したことはない・・・これまでは

まず結論から言ってしまうと、何か特別な夢があるのでなければ、入社できるのであれば大企業に入ることを大多数の学生には勧めたい。もちろん、内定をもらうことは容易ではないが、入社できたときのキャリアの選択肢が豊富にある。
社内で経験できることも多様で、中小・ベンチャーでは難しいような規模の大きな事業にも携わることができる。転職をするときにも有利であり、海外に出た時にも世界的に名の知れた企業であれば相手の対応が違う。
私自身の経験でも、リクルートとスズキという2つの日本の大企業を経験しているが、海外に出たときのスズキのブランド力には助けられている。国内ではリクルートの方が就職人気で格上扱いされることも多いが、海外では逆転する。誰もが知っている企業の経験があるということは、知り合いのいない土地で人間関係を作るときのハードルを著しく下げる。
しかし、大企業の優位性が揺らいできているのも確かだ。それは3つの理由がある。
第1に、大企業で長く勤めても50代以降のキャリアに保証がない。人生100年時代と言われるように、平均寿命が延びるとともに、就労年数も長くなることは確定的な未来だ。しかし、企業は20代で雇用した従業員を30年以上も社内でキャリアパスを用意することが現実的ではない。若手にチャンスを与える必要もあって、50代を超えると社内でのキャリア展望がなくなる。しかし、人生100年時代では50歳で人生の折り返し地点だ。そうすると、大企業に入ったらキャリアが安泰ということはなくなる。
第2に、中央集権的な人事システムが個人のキャリア自律の障害となる。大手前大学学長の平野光俊氏が言うように、日本企業の人事システムの特徴は本社人事部が全体最適を見ながらすり合わせをして処遇を決める中央集権的な性格を持つ。反対に、米国企業は人事権の多くを現場の管理職が持つため分権的な性格が強い。中央集権的な人事システムでは、どうしても従業員個々人の要望よりも会社の都合の方が優先される。そうすると、従業員が自律的なキャリアを志向すると、どこかのタイミングで会社の都合と相容れない状況が出てくる。この相容れない葛藤を受け入れていくうちに従業員はキャリアの自律を失っていくし、個人のキャリアを重視すると離職に繋がる。
第3に、生え抜きの仕事の延長線上に会社の重要なポストがない問題だ。言い換えると、仕事で成果をどれだけだしても出世できない。事業環境の変化とグローバル化が進む中で、仕事経験を積んで身に着けてきた能力やスキルと経営者として求められる能力やスキルが乖離してしまう。
例えば、新入社員のときに国内市場を事業の主な対象としてきた企業が、この10年で急激に海外進出して海外売上比率を高めているといった事例は多い。そうすると、国内だけではなく海外事業も統括してみることができる人材が経営者として必要になるが、既存社員の多くは海外での経験は積んでいないので候補者となり得ない。加えて、海外展開がM&Aを中心戦略として事業拡大していたりすると、解離は一層大きなものとなる。
事業環境やステージが変化する中で、既存社員の能力やスキル(スキルセット)と求める人材の能力やスキルが乖離するという現象は経営史でも繰り返し確認されてきた現象だ。近年のグローバル化とDXはスキルセットの乖離を加速させている。

どこに入るかよりも、どのような成長を遂げてきたかが問われる

大企業に就職できたとしても、それで将来が安泰で人生を全うできるという時代ではなくなった。大企業が就職先としてもてはやされてきたのは「良い学校に入って、大企業に就職出来たら、将来は安泰だ」という価値観が昭和から平成にかけて支配的だったためだ。当然、良い大学に入って、大企業に就職できると有利なことも多い。しかし、それだけで将来が保証されるかというと、キャリアの問題はそう単純なものでもない。
結局、重要なことは大企業だろうと中小・ベンチャー、スタートアップだろうと、就職した先で何を経験し、どのような成長を遂げ、どのような価値を社会に提供するかが肝要だ。価値を提供できなくなると、所属に関係なく、キャリアと生活の安定が失われてしまう。
もし、将来の夢があったり、キャリアの強い希望があるのであれば、自分の望む将来を掴むために最も有利な就職先を選ぶべきだ。それが大企業であれば大企業の方が良いし、中小・ベンチャー、スタートアップの方が適していることもある。
就活生がやるべきことは、自分が社会にどのような価値を提供していきたいのか、キャリアの方向性を決めることだ。そうすると、就職すべき企業はどのような特徴を持ったところなのかが自ずと見えてくる。企業規模は問題ではないのだ。

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