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先の見えない不安の中で今テックが出来ることは

世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を「パンデミックとみなせる」と宣言し、米国株式市場もブラックマンデー以来の下落率(10%)ということで、ニュースを見ると連日不安を掻き立てる見出しが並びます。

東日本大震災から9年を迎えた3月11日に、9年前のことに想いを馳せながら、当時の状況を振り返った方も多いのではないでしょうか?

そんな際、以下の記事で村上臣さんが東日本大震災直後のことを振り返りながら9年間の間に培われてきた「シビックテック」と呼ばれる機運、その積み重ねに関して投稿されていたことに、とても触発されました。政府の対応に不満を述べるだけでなく、テクノロジーを活用しながら、手を動かして地域、行政、自分の所属するコミュニティのためにできることを行動していく、ということがいかに大事か、ということが述べられています。東京都が開設した新型コロナウィルス情報サイト台湾で活躍している「天才IT大臣」こと、オードリー・タンさんなどの報道をご覧になった方もいるかも知れません。

と、同時に、自分が何をしているのか、猛烈に自省が促される、そんな3月11日を過ごしていました。孫正義さんの先日のツイートも目にして、ますます9年前の記憶が思い起こされます。

当時は自分も震災直後にインターネットの画面に張り付きながら情報収集や発信をしたり、海外で注目されているデジタルメディアの災害時の活用事例を紹介する記事を書くなどの取り組みをしていました。海外のカンファレンスに参加したり、国内でも支援につながるイベントを開催したり、周囲で活動している人に触発されながら、何が出来るかを模索していたことが思い出されます。

ただ、今回のコロナウィルスによってもたらされている事態に関しては在宅勤務をしながらリモートワークで継続的に日々の業務をしつつ、9年前とは違う感覚です。嵐が過ぎ去るのを待つように、早く沈静化すればいいのに、と願うばかりの自分がいることも感じます。

テレビやメディアで生々しい被害の状況が映し出されていた9年前の震災時とは状況が異なるからかもしれません。インターネット上で多くのサイトが立ち上がり、ミートアップが開催され、コラボレーションが行われるようなプロジェクトも2011年当時に比べるとあまり見出すことが出来てない印象です(もちろん、昨年春に東京から地方都市の浜松に引越をしたことも関係があるかもしれません)。

そんなことを思っていたところ、昨晩デジタル・ヒューマニストであり、東日本震災後に日本で展開された情報集約サイト「sinsai.info」に利用されたクライシス・マッピング・システム「ウシャヒディ」のメンバーである、パトリック・メイヤーさんのツイートを目にしました(パトリック・メイヤーさんのTED仙台の際の動画はこちら

(コロナウィルスの脅威に対して)なぜ「デジタル人道主義者」からの大きなクラウドソースの反応が見られないのですか? #COVID19 (新型コロナウィルス)がもし2010年や2011年で爆発していたら、デジタル人道主義者たちは全力を尽くすだろう。ロシアの火災に対するHelpMapの対応を考えてみようhttps://bit.ly/3cVbhwk
私が見落としていることや誤解していることは何ですか?

彼の問いかけにFrontlineSMSという同じく人道的なクラウドソーシングサービスを運営していたケン・バンクス氏が回答しています。

パトリック、私たちは違う時代にいます。そして、以前ほど「コミュニティ 」はないと思う。私たちの時代のようにオープンに協力し合う人はいないようです。専門家に聞いてみると、それはおそらく「進歩 」と呼ぶかもしれません。

同じく当時ウシャヒディのメンバーで現在は国際赤十字でデジタル担当のヘザー・レーソン氏はこう答えています。

私はこちらのクラウドソーシングサイトがそれに該当するのでは、と考えていました。私たちの多くは今日、組織の内部で働いていて、公に(インターネット上で)話さない機関とも働いています。なので、各国により事情が異なることもあるので、地域ごとのシビックテック・コミュニティが連携しデジタルの取り組みを進めていくと思う。

ヘザーさんが紹介しているサイトは「コロナウィルス・テック・ハンドブック」(https://coronavirustechhandbook.com/)という名前がつけられたGoogleドキュメント上に整理された情報のリンク集です。私も開設直後から定期的にチェックをしているのですが、常に匿名の共同編集者が100名近くアクセスし、情報が順次更新されていることが分かります。編集中の項目には以下のようなものが現在用意されています。

・モデルと予測(数学モデルや予測市場など、将来何が起こるかを予測するすべての方法)
・ミスインフォメーション対策(あらゆる形態の誤った情報に対処するための、オンラインでの信頼、検証、事実確認、読者体験へのソリューション)
・インフォグラフィック
・科学者向けツール
・医師のためのリソース
・ハードウェア
・ボランティア活動
・コミュニティとライブラリ

長くなってしまいましたが、これらのサイトを見ながら、東日本大震災を契機に生まれた「シビックテック」と呼ばれるような機運を、自分のできる範囲内で取り組んでみたいとの想いを持つことが出来ました。「コロナウィルス・テック・ハンドブック」の日本版のようなリンク集を作成してみる、或いは海外の動向をまとめてCOMEMO / noteや自分のブログに書いてみるなど、少し意識して取り組んでみたいと思います。

海外に目を向けると、実は#COVTECH(COVID-19 & TECH)、「コブテック」と呼ばれるような、コロナウィルスに立ち向かうテクノロジー活用が数多くあります。オンライン上で行われるハッカソンなども少しずつ広がりつつあるようです。

先程ご紹介したパトリック・メイヤーさんが彼の活動の原点と以前に紹介していた2006年のTEDプレゼンテーション動画があります。天然痘を根絶させ、後にグーグルでパンデミックの兆候を見つけ出すシステムを構築したラリー・ブリリアントさんによるものです。とても力強いものがあります。よかったら是非ご覧ください。

かつてはアラブの春の民主化で活躍し、震災時には人をつなぎ、アイス・バケツ・チャレンジで草の根寄付を実現させたテックやソーシャルメディア。

ここ最近はフェイクニュースやデマ、プライバシー侵害などで評判の悪い「テック」ですが、今こんな時期だからこそ、テックのいい面をもう一度信じて、向き合ってみてはいかがでしょうか。

Photo by John Barkiple on Unsplash


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