見出し画像

「狭く深く」か「広く浅く」ではなく、「そこそこ広く深く」

「狭く深く」か、「広く浅く」かという二者択一はものづくりをしていると、永久にぶつかり続ける問いであり、壁です。先に結論をいうと、そのどっちでもなく、「広くて深い」ほうが良いに決まっていると思う。多くの人や企業がそう思っているがなかなかできないものづくりをする際に永久的な命題を解決すべく、深く追求したモノを広く届けるその実践方法を考えてみたいと思います。

広くて深いが一番良い

画像1

ものづくりの世界で、職人がつくる1点モノと、工場でつくる量産品が対比はよく語られます。職人がつくるモノが仮に120点のだとしてもそれは少量しかつくれないことが多く、一方で量産品は60点だとしても大量につくる事ができる。

この是非を比べることはなかなか難しい問題であると思う。

120点と60点ではクオリティで2倍の差があると言える。一方で120点でも1個しかつくれなければ一人しか幸せに出来ない、60点でも1万個つくれるなら一万人を幸せにできるとも言える。

ものづくりをする際に永久的な命題とも言えるが、一番良いのは120点のものを一万個つくれることではないか

その理想を追いかけながら、ものづくり企業としては、「そこそこ広く深い」ものづくりが実現していくプロセスを描けるかが大事だと日々実感しています。

「狭↔広」は経営の問題、「浅↔深」は技術の問題

豆の焙煎

「そこそこ広く深い」ものづくりの実現のために要素を分解して考える事が大事です。

まず「狭↔広」は量の問題に起因しているし、これは再現性を担保してどの程度まで届けられるかと言う組織や経営の問題と捉えると良いと思います。

一方で「浅↔深」はクオリティに起因しているので、技術の問題として捉えると良いと思います。

端的に言うと、技術としての深さは120点を追求しながら、少しずつ組織的経営的にそのつくれる量を増やしていく事への挑戦をすることが「広くて深い」を実現します。

事例:ブルネッロ・クッチネリ

画像3

出典:ISETAN MEN'S net

ブルネロ・クッチネリは、世界中で愛されるイタリアのファンションのラグジュアリーブランドです。彼らは、イタリアのソロメオ村(人口400名程度)を拠点に、古城を改装して本社をしています。一着数十万円するジャケットなど、職人が丁寧につくった仕事で高付加価値を実現し、世界中に顧客がいて、愛されています。創業者は自らを「我々はアルティジャーノ(職人)の会社」だと言うそうです。

では、この会社の規模はどのくらいだと思いますか。

彼らの売上は700億円あって、イタリア国内だけで1000名以上の従業員を雇用し、ミラノ株式市場の上場企業なのです。

手仕事の職人企業と言われて、こんな規模をイメージできていたでしょうか。

職人的な仕事で、高付加価値なプロダクトを実現し、ある程度の物量をつくりながらも、ブランド力を落としていないのは、まさに「広くて深い」を実現出来ているから。

経営力と技術力の両輪をきちんと回して会社を大きくしています。

産業の集積

画像4

ブルネッロ・クッチネリの例から学べる「広くて深い」を実現する方法は、産業の集積によるローカルの力の結集です。

本社のあるソロメオ村の周辺には協力工房が多数点在して、パーツごとに協力工房の職人が仕上げて、それを組み合わせて、一着の服をつくっているようです。一着の服ができるまでに7回~8回も本社と協力工房の往復があるといいます。

あくまで機械ではなく手を動かす仕事をよってモノをつくるという事にこだわり、それを産業を集積させることで、量産を実現しています。

技術の問題としての「浅↔深」で考えると、プロセスを分解して、その一つ一つの工程に職人を配置して、工程の技術を徹底的に磨き、工程ごとに深い技術をもった職人をつくるということで、深さを担保しています。

そして、経営の問題として「狭↔広」を考えると、点在している「部分の深い技術」を繋げることで、一着の服を大量につくる事を実現して700億円分売上を実現する広さを実現しています。

要素分解して「広める」と「深める」を組み合わせる

画像5

次に、ものづくり企業の経営者として私が7年間の経営で実践している事を紹介します。

モノをつくるプロセスを要素分解すると、職人の手でしか実現出来ない「深める部分」と、実は機械と相性の良い「深さを崩さず広められる部分」がある事に気がつきます。

もう少しいうと、職人が手仕事で120点のモノがつくれるとすると、その工程を注意深く要素分解して、一部を機械で実現出来るようにすると言うことです。

例えば、カカオ豆のローストのプロセスは、豆ごとに1分1度の調整を細かく行います。その際に、焼いた豆を取り出して職人の官能で最適なプロファイルをつくります。実際にこの工程を取ると、温度帯がそもそもそこまで細かく設定できないので毎回時間を計り、都度取り出すという工数がかかります。

この場合は、職人しかできない深める部分は官能でティスティングできる技術であり、1分1度の温度調整は自動で出来る機械を開発出来れば取り出す工数がなくなり、かつより正確に1分や1度を測ることができます。

このようにプロセスを要素分解すると、大量生産は出来ないかも知れないですが、「そこそこ広く、さらに深く」という事ができるようになります。

「そこそこ広く、深い」を実現すると好循環が生まれる

画像6

ここまで紹介したような方法でまずは「そこそこ広く、深い」が実現するとものづくり企業として差別化に向けての好循環が生まれ出します

なぜなら、「そこそこ広く深い」ものづくりができると、時間が生まれるからです。量をつくれるので、売上が上がり、売上が上がれば職人を雇い育てる時間が生まれます。また、職人が育ってくると、最初の職人は、120点のものづくりから150点のものづくりを目指す時間も生まれます。

つまり、「狭くて深い」ものづくりしかできないところから「そこそこ広く深い」の段階に行けると、そこから「さらに深く、もっと広い」という好循環のプロセスに入る事ができるのです

深さだけを求めると、深くいけなくなるという矛盾

私は当初、深さだけを志向したものづくり経営者でした。
徹底的なものづくりで深さを追求したいと思っていました。もちろん今でもその思いは変わらないです。

しかし、ある段階で気づいたのは、深さだけを追求すると、深さがあるところで止まるという矛盾でした。

なぜなら、商売をやっている以上深さとは、お客さんの立場からすると商品のクオリティです。

例え職人が素晴らしい深さのものをつくっても、1個しか無ければ、食べれる人は限られています。そうなると、どんなに付加価値が高くても、次のための十分な原資を得られません。

また、職人のいう大きなクオリティの差は世の中の消費者からすると最初理解できなかったり、微差と捉えられる事が多くあります。なぜなら、そのクオリティに対してリテラシーはある程度量をこなして消費者が学んでいくものだったりするからです。そうなると、その素晴らしさは理解されず、フィードバックがなければさらに先に行くことが出来なくなります。

ものづくり企業の生きる道は「そこそこ広く、深い」ものづくり

画像7

先に結論で書いたように、やはり「広くて深い」ものづくりができる事が一番良いと思います。

「狭く深く」から出自したものづくり企業の生きる道は、まず現状の深さを妥協すること無く、今より少し広いを考えてみることが大事だと思います。

ポイントは深さを保ったまま!という点です。

そして、消費者側からも、クオリティの高いものが、ある程度量を担保してつくられることは、手に入りやすさを意味することで、歓迎されることであると思います。

ただ、量が作れるようになったからといって、安易に値下げをしないという点はブルネッロ・クッチネリから学ばないと行けないと言うことは付け加えておきたいです。

情報の非対称性がなくなり、価値観が多様化・細分化する社会において、個こだわりの良いモノが、そこそこ広く浸透する事は、とてもマッチしていると思うし、日本の素晴らしいものづくりの技術はこれからの社会において大いに価値を発揮して市場を席巻できると信じています。

そして、その実践企業の一つとなり、少しずつではありますが「そこそこ広くて、めちゃくちゃ深い」をMinimalのチョコレートで実現させるために、チームで努力をしたいと思います。

※Minimalのチョコレート&SNS

深さに妥協せずやってきた(はず笑)のMinimalチョコレートをぜひお試し下さい。僕の一押しは、Minimalのチョコレート技術を発揮したカカオ産地9カ国の食べ比べです。今年の2月大好評につき、限定数量で復活中。

Minimal公式SNSもぜひフォロー下さい!

🍫LINEアカウント
🍫Instagram
🍫Twitter
🍫Minimalのnote
🍫Facebook
*最新情報や限定商品が一番早いのはLINE@です。

山下のTwitterもぜひフォロー頂けると嬉しいです!


最後までお読み頂きましてありがとうございます。このnoteは私がブランド経営やモノづくりを行う中で悩み失敗した中からのリアルな学びです。何かお役に立てたら嬉しいです。良い気づきや学びがあれば投げ銭的にサポートして頂ければ喜びます、全てMinimalの活動に使いたいと思います^_^