メンツをかけた人民元7.0防衛の行方【中国の通貨・金融政策】

最近の人民元相場と中国当局の立ち回りについて、考察をまとめてみました。

米国の中間選挙報道に隠れて注目度が薄れてしまいましたが、それとほぼ同時期にPBoCから公表された10月末時点での中国の外貨準備高の水準は金融市場の先行きにとって気になるものでした。予想以上に減少し、水準としては2017年4月以来、1年半ぶりの低水準を記録しました。これは現在の元安相場に対してそれだけ通貨防衛を目的とする元買い・ドル売り為替介入を行っていたことになり、別の言い方をすれば、実弾投入が必要なレベルまで資本流出圧力が強まっていたことの証左でもあります。

今の中国には、「想定を超える資本流出(元売り)が起きているが、ドル/人民元の『7.0』にはこだわりたい」という苦しい台所事情があると思われます。想定を超える資本流出が起きていることは、主要国株価の中でも上海総合指数が突出して年初来下落していることからも明らかです。

しかし、1ドル7.0元という水準には理論的な意味というよりも、「騒がれたくない」という心理的な意味の方が大きいと思われます。メンツを重んじる中国が同水準を割らせないという意思を持っていることは想像に難くありませんが、理論的な意味合いの小さい水準の防衛に拘泥し、不均衡を蓄積させてしまうと、後の調整がかなりまとまったものになりかねないというリスクがあるでしょう。市場参加者は中国当局が7.0を守りたいことを皆、知っています。為替市場において誰しもが分かる形で防衛線を明示してしまうことのリスクは周知の通り大きいものであり、防衛は往々にして失敗するというのが歴史の教えるところであるように思えます。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58409

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