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新紙幣の経済的影響とキャッシュレス化

新紙幣24年7月発行、財務省など発表 1万円札は渋沢栄一 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

千円、5千円、1万円紙幣が2024年度上期をめどに一新されることになっており、この変更に伴って様々な需要が発生しています。

新紙幣の一般的な目的や動機としては、偽造防止とされています。このため、今回の刷新も最大の目的は偽造防止であることが推察されます。

しかし、今回の紙幣刷新の別の狙いとしては、「タンス預金」のあぶり出しが隠れていることが推察されます。

実際、日銀の資金循環統計によると、2022年12月末時点で家計部門が保有する現金が、前年比+2.4%増の109兆円と過去最高となっており、高齢者を中心に自宅で現金を保管する「タンス預金」を増やす傾向が強まっていることがあります。

事実、2004年の新紙幣刷新時には、新紙幣刷新の公表から流通開始までの期間に、日銀の資金循環統計における家計部門が保有する現金の増加率が低下していることが確認できます。このため政策当局側としては、紙幣刷新の要因も少なからず寄与したと考えている可能性があるでしょう。

今回の紙幣刷新には、主要各国から遅れるキャッシュレス化を促進する狙いもあると推察されます。その大きな目的は主に3点あり、まずはインバウンド消費の拡大です。そして二点目が、キャッシュレス決済に伴う人手不足緩和や生産性向上です。最後に三点目が、現金決済のインフラコストの削減です。

今回の新紙幣刷新に伴い、金融機関のオープン出納システムやATM、自動販売機などの特需が発生しています。ただ、金融機関向けのATMなどでは営業店舗の減少やキャッシュレス化等に伴い、貨幣流通量の減少が予想されており、関連業界の事業環境が前回の紙幣刷新時と異なる点には注意が必要でしょう。

一方、流通業やコンビニなど小売業向けのATMは店舗数の増加などから前回よりも更新需要が拡大することが期待されます。
しかし、小売り向けのATMは金融機関向けよりも単価が安く、更新サイクルが短いことが知られています。

なお、財務省が新紙幣刷新発表直後の2019年4月10日に衆議院財務金融委員会で示した日本自動販売システム機械工業会の試算によれば、今回の新紙幣による現金取り扱い機器の改修特需として約7,700億円のコストがかかる見込みとしています。

しかし、自販機の普及台数も減少トレンドにありますので、今回の紙幣刷新に伴うATMや自販機の改修特需は前回ほど大きいものは期待されず、特需の出現時期も分散されることが予想されます。

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