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Burning Japanが教えてくれた"Gifting"と"Give"のとても大きな違い

"Gifting"と"Give"の違い。

これまで私の中で、"Gift"と"Give"はほぼ同義だと認識していました。正確には同義だと意識することもなく混同して使っていたように思います。

先日、Burning Japanというイベントに参加し、その概念はガラリと変わりました。

今回はBurning Japanへの参加を経て変化した"Gifting"と"Give"の捉え方について書きたいと思います。

GiftingとGiveの意味

まずは言語的にGiftingとGiveの意味にどんな違いがあるかを見ていきましょう。

Gifting : giftの現在分詞。贈り物、 寄贈品、 進物

Gift : 贈り物、寄贈品、進物、(…の)賜物(たまもの)、恩恵、天賦(てんぷ)の才、才能、実に簡単なこと、贈与、贈与権

Weblio

とあります。一方、Giveは

Give : 与える :、あげる、(…に)提供する、授ける、(引き)渡す、(手)渡す、出す、施す、(…を)引き渡す、預ける

Weblio

となっています。この意味を紐解くと、Giftには"贈る"という意味が、Giveには"与える"という意味があることが分かります。どちらも相手に何かを渡すという部分は共通しているように思いますが、"贈る"という思いを持って渡すことと、"与える"という思いを持って渡すことには大きな違いがあるのです。

この違いに気づかせてくれたのがBurning Japanでした。

Burning Japanとは

Burning Japanの公式サイトの案内の引用ですが、こちらがBurning Japanの説明です。

バーニングジャパンはアメリカ・ネバタ州で毎年開催されているバーニングマンと同じビジョンで開催する日本独自のローカルイベントです。参加者ひとりひとりが「傍観者にならない」で、いち表現者として「売買ではなく与えあうこと」で関わりあうユニークなキャンプイベントです。アート作品やパフォーマンス、音楽のほか、会期中の暮らしに必要な全てを持ち込んで架空の街を作り、また元のようにきれいにして終えます。

バーニングジャパン公式サイト

この説明の中で出てくるバーニングマン (Burning Man) は、アメリカ・ネバタ州の何もない平原で約1週間に渡り開催されます。

各参加者は、この「プラーヤ」(Playa)と呼ばれる何もない塩類平原en)に街を作り上げ、新たに出会った隣人たちと共同生活を営み、そこで自分を表現しながら生き抜く。そして一週間後、すべてをに還す。この実験的な地域社会はさながら都市の様相を呈し、みずからを「ブラックロック・シティ」(Black Rock City, BRC)と呼称している。 ブラックロック・シティは、直径約3.4kmの大きな扇型の市街地と、中心部のオープンスペース、および周辺部からなる総面積約14.5平方キロメートルの五角形の街であり、そこで会期中に生活する人々の数は約7万人ほどである(2019年の主催者発表入場者数:78,850人)。 バーニング・マンという名称は、土曜日の深夜、街の象徴として場の中心に立ち続けていた人型の造形物「ザ・マン」(The Man)に火を放ち(burn)、それを完全に焼却することに由来する。

Wikipedia

そしてこのBurning Manの説明にあるように、参加者は「自分たちを表現しながら生き抜いていくのです」
参加者それぞれが傍観者にならずに自分が表現したいことを表現し、与え合い過ごす、それがBurning Manであり、Burning Japanなのです。

Burning Man / Burning Japan の10原則

そして大きな特徴として、Burning Manには参加に際して10原則があります。この10原則はBurning Manについてその根幹となる価値観やいまある状態を表したものです。イベントの規則というよりは、そこでのユニークな暮らしぶりを続けるのに必要な原理原則を表したもので、参加者が折りに触れて立ち返る心の拠り所でもあります。(Burning Japan公式サイトより)

10原則
 『どんな者をも受け入れる共同体である』(Radical Inclusion)
 『与えることを喜びとする』(Gifting)
 『商業主義とは決別する』(Decommodification)
 『他人の力をあてにしない』(Radical Self-reliance)
 『本来のあなたを表現する』(Radical Self-expression) 
 『隣人と協力する』(Communal Effort)
 『法に従い、市民としての責任を果たす』(Civic Responsibility)
 『跡は何も残さない』(Leaving No Trace) 
 『積極的に社会に参加する』(Participation) 
 『「いま」を全力で生きる』(Immediacy)

Wikipedia

私がBurning Japanに参加し驚いたのが、この10原則を参加者みんなが受け入れ、体現しており、10原則こそがBurning Man、Burning Japanを表すものだったのです。

この10原則は、参加者が「傍観者にならない」という大原則のもと、どのように表現していくのべきかを示しています。

Burning Japanでの3日間

今回私はBurning Japanの共同発起人の一人でもあるアフロマンスさん のテーマキャンプに参加させてもらいBurning Japanに初参加しました。

アフロマンスさんのテーマキャンプでは、DJブースやBar、テントサウナにキッチンカーなどがあり、そこにいるだけでも十分楽しい空間と仲間がいる場でした。
(Burning Japanには複数のテーマキャンプがあり、それぞれのテーマキャンプを自由に行き来して過ごします。)

今回参加させてもらったテーマキャンプ

その中で、参加者それぞれが傍観者にならずに自分たちに出来るGiftingが何かを考え参加していました。

私は日頃から毎朝必ずコーヒーをドリップして煎れているほどのコーヒー好きなので、皆さんにコーヒーをドリップで振る舞うことにしました。2kgのコーヒー豆を持参し、テーマキャンプにいる時はコーヒーを淹れて皆さんに飲んでいただきました。朝夕は割と寒かったこともあり、多くの方に喜んで飲んでいただけたのがとても嬉しかったです。

ドリップしてコーヒーを淹れてました

また他の参加者のGiftingとしては、たくさんのご飯を作ってくれたり、フルーツを配りに来てくれる人、歌を歌ってくれたり、絵を描いてくれるアーティストなど、参加者みんなが文字通り傍観者になることなくGiftingをしながらBurning Japanでの時間を楽しんでいました。そしてお金が一切通じないBurning  Japanの世界なのでこれら全ては無償なのです。

ファイヤーパフォーマンスのプロにポイを教わる長男
大会優勝経験もあるDJに指南を受ける次男

様々なGiftingと出会う中、とても印象に残っているGiftingがありました。
それはメインの音楽フロアにあったBarだったのですが、とてもユニークな仕組みでした。Barには様々なお酒のボトルが置かれているのですが、その手前に光のチューブとボタンがあり、お酒を頼むとボタンを押す流れになっていました。で、ボタンを押すとお酒のボトルの前にあるチューブの中を光が行き来し、1分弱くらいかけて止まるのです。で、その光が止まったところにあるお酒を飲むという流れです。自分が飲むお酒が決まるまでの間、Barの人や並んでいる参加者とコミュニケーションを取ります。それはとても穏やかで楽しい時間でした。

商売としてお酒を販売しているのであれば如何に効率的にお酒を出していくかを考えるでしょう。それに対しBurning JapanのBarでは何のお酒を出すかに約1分かけるのです。これはGIftingが前提だからこそ実現出来たことであり、日常生活では出会えない体験でした。

Barの皆さま
飲むお酒を決める光るチューブ

Giftingにおいて大切なこと

こうしたGiftingですが、いわゆるビジネスや商売との最大の違いとして感じたのは、Giftingしている人が「心から楽しんでいる」ということです。自分が心から楽しいと思って"贈る"からこそ、日常ではなかなか味わえない、ゆとりのある素敵な空気を生み出すのです。

そして自分が贈る行為に対して見返りを求めていないことも、とても大切なことであり、そこにいる人みんながポジティブな気持ちになる場を作っていました。

GiftingとGiveの違い

Burning Japanでの体験を通じて、私なりに感じたGiftingとGiveの違いについて考えてみました。

以前よりGive & Takeという考えは浸透しており、最近ではまずGiveをしようというGive Firstという考えも目にする機会は多くなっています。

こちらの記事の中で

信用されるためには"ギブアンドテイク"ではなく、"ギブファースト"の考え方が大事だ。なぜなら、あなたにはどんなことができてどんな能力があるかを人に知らしめるためには、その人のために何かをやってあげなければいけないからだ。

日経ヴェリタス2021年8月8日号

と書かれています。この"ギブファースト"という考えに"Gifting"と"Give”の違いを感じるのです。Giveは最終的にTakeすることが前提になっていると感じます。だからこそ"最初にGiveしよう”という考えが生まれるのではないでしょうか。それに対し"Gifting"は見返りは求めていません。そこに大きな違いがあると考えています。

まとめ

テーマキャンプ仲間と

見返りを求めず、自分が楽しいと感じ、みんなの喜ぶ顔が見たくて能動的におこなう"贈り物"が"Gifting"であり、だからこそとても気持ちの良い場、素敵なコミュニティが生まれるのです。

経済的な話をすると"Gifting"は見返りを求めていないので、自分が出来る範囲で実施する必要があります。無理をしてしまうと自分が楽しむ気持ちが薄れてしまいます。

自分の出来ることを能動的に考え、みんなに贈る世界。

経済社会に生きる私たちの日常においてGiftingだけで過ごすことは難しいことも事実です。でもGiftingという考えを持った上で行動してみると少しですが社会を素敵に出来る。今ではそう考えています。

そして、そのような考え、経験という大きなGiftをくれたBurning Japanに心より感謝しています。

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