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景気予測調査から見た四半期決算見通し

大企業景況感7〜9月、2期連続改善 価格転嫁進む - 日本経済新聞 (nikkei.com)

●経常利益は計画上方修正

9月12日に公表された2024年7-9月期法人企業景気予測調査は、今年8月下旬にかけて資本金1千万円以上の法人企業に対して行った景気予測調査であり、今期の業種別企業業績計画を予想するための先行指標として注目される。

そこで本稿では、今年10月下旬からの四半期決算発表で、今年度の企業業績計画の上方修正が見込まれる業種を予想してみたい。

下図は、法人企業景気予測調査の調査対象企業の各調査時期における売上高と経常利益計画の今年度見通しの推移を見たものである。まず売上高を見ると、全産業と非製造業では増収率が下方修正、製造業で上方修正となっている。このことから、四半期決算でも今期の売上高計画が上方修正される業種には注目が集まるものと推察される。

一方の経常利益は、非製造業の上方修正により全産業も上方修正になっているが、製造業はここ元の円高進展を受けてか下方修正となっている。とはいえ、非製造業は増益計画に転じている。このことから、10月下旬からの四半期決算発表では、製造業の一部で業績下方修正が出てくることが予想される中、非製造業で業績計画が上方修正される業種には注目が集まるものと推察される。

 ●増収率上方修正が期待される「その他サービス」「石油・石炭製品」「鉱、採石、砂利採取」

以下では、10月下旬からの四半期決算で、今期売上高計画で上方修正が期待される業種を見通してみたい。下表は業種別売上高計画を前年比と前回調査からの修正率で比較したものである。

 結果を見ると、製造業では「木材・木製品」以外、非製造業では「鉱・採石・砂利採取」「建設」「不動産」以外の業種で増収計画となっている。

こうした中、前年比の上方修正率が高い業種は「繊維」「石油・石炭製品」「非鉄金属」「鉱・採石・砂利採取」「その他サービス」となっている。

「繊維」や「非鉄金属」「鉱・採石・砂利採取」については、「鉱・採石・砂利採取」以外は経常利益計画も上方修正されているものの、いずれも依然として二桁の減益計画となっていることからすれば、不十分ながら価格転嫁により売上高計画が上方修正されていることが推察される。また「石油・石炭製品」の上方修正については、地政学リスクの高まりに伴う化石燃料の価格上昇が反映された可能性が示唆される。

一方、「その他サービス」については、「産業廃棄物処理」や「自動車整備」等が含まれ、経常利益計画も上方修正されていることから、夏場の度重なる地震や台風などの自然災害などにより需要が拡大している可能性が推察される。 

●「生活関連サービス」「農林水産」「情報通信機械」等が増益率大幅上方修正

続いて、経常利益計画から増益率の上方修正が期待される業種を見通してみよう。結果を見ると、特に製造業の多くの業種で減益計画となっており、これは諸々のコスト増や海外経済の減速懸念等が主因と推察される。 

こうした中、増益率の上方修正が目立つ業種は「石油・石炭製品」「非鉄金属」「情報通信機械」「農林水産」「生活関連サービス」等であり、いずれも二桁を大きく上回る上方修正率となっている。

特に3桁の上方修正となっている「生活関連サービス」では、クリーニングショップや理髪店、美容室、エステティックサロン、旅行代理店や葬儀屋などが該当するため、夏の旅行需要が盛り上がったこと等が反映されたことが推察される。

また「農林水産」については、売上高計画が小幅下方修正になっている中での経常利益計画上方修正ということからすれば、原材料価格の低下が上方修正に寄与している可能性が示唆される。

一方、「情報通信機械」については、鉱工業生産指数で内訳を見ると、7月に無線通信機器が大幅増産となっていることから、国内で携帯端末などの増産効果が功奏していることが推察される。他方「非鉄金属」については、売上高上方修正も減益計画となっているため、価格転嫁による上方修正と推察される。そして「石油・石炭製品」については、中東情勢の緊迫化等に伴う化石燃料価格上昇により製品価格に転嫁されていることに加え、在庫評価益が寄与していること等が示唆される。

なお、日銀が来月公表する9月短観の業種別収益計画(大企業)は法人企業景気予測調査に比べて聞き取りのタイミングが若干遅いことから、ここ元の円高や原油安・日銀の追加利上げ等の影響をより織り込んでいる可能性が高いため、9月短観における大企業の収益計画も四半期決算と今期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。

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