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電動化、自動化、ネットにつながる。クルマの未来はそれがゴールだろうか?

今、自動車業界は100年に一度の大変革の真っ只中だ。巷では、素材メーカー、部品メーカー、完成車メーカーまで大騒ぎになっている。発端は、メルセデス・ベンツを作っているダイムラーが2016年に発表した「CASE」という中長期戦略だ。車はインターネットにつながり、人の操作無しに自動で動く。車は所有するものから、不特定多数でシェアしてつかうものに変わる。そして、ガソリン車は無くなり車は電気で走るようになる。ダイムラーの見ている未来はこんな世界だ。

数日前にGMの新戦略のニュースが出た。日本の自動車業界に「電気ショック」と評された戦略の内容は、今後の5年間で30車種、年平均6モデルというハイペースでEVを投入して「総合自動車メーカー」を目指すというものだ。米中2国への集中、ガソリン車の大幅削減により資金を捻出し、EVと自動運転に270億ドルを投じるという。韓国LG化学と組んだ車載電池の内製化、ホンダへの技術提供による付加価値の取り込みを並行しておこなっていく。

日本勢はハイブリッドに軸足にEV、プラグインハイブリッド車、燃料電池車と一点突破ではない少し異なる形を模索している。とはいえ、各国のCO2規制も強まる中、5年前にダイムラーが提示した未来に世界中が向かい始めたのは間違いない。改めて未来を描くこと、それを率先して実践することの重要性を感じる。自社の動きが速くなり、自社の収益実現が早まるのに加えて、社会を正しいと信じる未来に向けて動かしていくことにもつながるからだ。

足元ではトヨタのハイブリッド戦略が功を奏している。VWは、ディーゼルの不正によりディーゼル重視の目算が外れたのも一因だが、かなりまずい状況だ。一方、トヨタは、今このタイミングでできることにもしっかりと目を向けて、着実に取り組んだことが結果に繋がった。未来は現在から繋がっているものなので、今の累積、積み重ねを、どう未来へとうまく繋げていくかを大事にしていきたい。

でも、もっと大事なことがある。2016年のダイムラーの中長期計画でも触れられていたが、CASEは、「何に使うかが大事な道具」であることだ。つまり、CASEでどんな未来社会を作りたいかが重要だ。以前、車とは移動の手段だった。歩きでは行けない遠い場所へと移動させてくれるものだ。その後は乗っている間の快適性もどんどん高まっていった。操る楽しみも生まれ、レース活動へと発展してきた。所有者のライフスタイルを彩る大事なものとしても活躍した。

これからはどんな役割を担ってもらうか。CASEという機能が目の前にあれば、その組み合わせでやれそうなこと、やりたいことが考えられる。またそもそも生み出したい未来の社会や生活があるはずだ。その中でモビリティが貢献できること、モビリティに追加したい機能も出てくると思う。車が人の集う動く店になる。車が人の遠隔の目になる。車との会話が楽しめる。車が踊る。車が街を彩るアートになる。車が色々なものにトランスフォームする。移動中や停止中にも人や社会の役に立てる。などなど妄想は膨らむ。

CO2の規制や電動化規制は、持続的な社会の実現に向けてもちろん大事な要素だ。でも今のモビリティのままで、電動化して、インターネットにつながり、公共物となり自動で動く。これだけの世界観では、頑張りと成果が釣り合わないと思う。これだけ大きな産業である自動車産業なので、いやこれからはモビリティ産業としてやっていくにあたっては、街に笑顔や賑わいを生むことに突き進んで欲しい。モビリティ産業に関わる一人一人が自らの感性をフルに活用して、CASEで揃わんとしている機能や身の回りの機能を組み合わせた「賑わいの素」を沢山生み出して欲しい。それがモビリティ産業の責務だと思う。


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