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イタリアの格付け、春は一安心だが……

イタリアの春の格付け見直しはひとまず、変更なし。堅調な成長環境を見込み(コンセンサス予想でも2024年の成長率は0.6%、2025年同1.1%)、政府の財政目標も概ね達成可能なためで、イタリア国債の利回りも昨年秋以降、大幅に低下している。政府の将来的な利払いの拡大圧力も限定的である。

だが、イタリアの場合、格付け機関が慎重スタンスを継続することは考えておくべきだ。三つある。第一に、スーパーボーナススキームでのもとで、コストが増えたため、対GDP比で見た債務比率動向が改善していないことがある。イタリア中銀の4月見通しでも、2024年の同比率は137.3%。なお、スーパーボーナスとは、コロナ禍に導入された制度で、住宅と建物のエネルギー効率を改善する費用の最大110%を5年間支援するプログラム、である。

第二に、GDPデータが四半期ごとに遅いタイミングでしか発表されないことがある。第1四半期のGDPの速報値が出るのは4月30日、第2四半期の速報値の発表は7月30日となり、これでは春の格付け見直し時期は終わってしまう。このように、格付け機関にとって成長率を格付けに反映し難い状況にある。

第三に、次世代EUの実施がデータに現れるのにも時間がかかることがある。格付け機関はNGEUの展開を成長・格付け見通しの重要な要因として重視している。しかしながら、このデータ発表も頻度もかなりまばらで、タイミングも遅い。改革プランの展開も、公表から評価に至るには時間がかかってしまう。

こうした不透明な状況を考えると、イタリア国債に関する信用力に懸念がないわけではない。足元でどうこうしている話ではないが、慎重には見ておきたい。

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