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メタバースで生まれるクリエイターエコノミーと職業のゲームチェンジ 〜メタバースで押さえたいポイント④

お疲れさまです。メタバースクリエイターズ若宮です。

メタバースに関する連載も4回目、これまでUGCやコミュニティ、プラットフォームについて書いてきましたが、今日はクリエーターエコノミーに焦点を当てたいと思います。


インターネットでwebデザイナーという職種が生まれたようにメタバースクリエイターという職業が生まれる

連載の初回で指摘したように、成長しているメタバースはUGC(User Generated Content)型のメタバースであり、ユーザーが自らアバターやワールドを作り他のユーザーとそれを楽しむという形で、常にユーザーによって新しい遊び方が生み出され続けています。

この中で、最初は趣味として自分が楽しむためにコンテンツを作っていた人が、やがて他の人に提供するようになり、「クリエーター」として対価を得られるようになってきました。

インターネットの黎明期も、最初は一部のPCオタクの趣味の延長、といった感じで、個人のテキストサイトやホームページがほとんど。なんの役に立つの?というコンテンツも多かったものです。しかし、そこから数年でインターネットは一般化し、ウェブのコンテンツに対する需要が急増、「webデザイナー」や「Webエンジニア」といった職業が確立され、インターネットが実用的にも活用されるようになると、人気職種になったわけです。

メタバースも今はニッチな「趣味」のように思われていますが、今後普及しメタバースで過ごす人が増えるに従い、メタバースという新しい情報空間が広がってより多くのコンテンツが必要になり、クリエイターに対する需要は右肩あがりに増えるでしょう。


すでにさまざまな「クリエイター」が生まれつつありますが、メタバースのクリエイターは、ここから数年でますます注目される職業になるはずです。(こうした変化を見据えて、弊社メタバースクリエイターズはクリエイターの活躍機会をさらに増やし、クリエイターという職業の可能性をグローバルに広げることをやっています)


アバタークリエイター

インターネットの普及によってwebデザイナーやWebエンジニアという職業が生まれたように、メタバースクリエイターの需要も増えていくはずですが、もっといえば、メタバースのクリエーターはwebよりもさらに幅広い可能性があると考えています。

メタバースは三次元であり「自分自身」も「世界」もつくれる、という意味で二次元の「ページ」よりもさらに自由度が高いからです。

一口にメタバースのクリエイターといっても、アバターやワールド、アイテム、エフェクトなど、さまざまな専門性やジャンルがあります。


特にアバターのクリエイターはVTuberの人気に伴い、すでに需要が高まっています。今後メタバースを利用する人が増えれば、オリジナルのアバターを欲しがるユーザーも増え、さらにアバタークリエイターへの需要は加速するでしょう。(中国では「造顔師」という職種が生まれているといいます)


アバターはメタバースの世界においては「アイデンティティ」です。最初はプリセットされたアバターから始めても、徐々に独自性を追求するようになります。VRChatでも、過ごす時間が増えるに従い、

誰でも使えるパブリックなアバター
 ⇒アバターワールドで見つけた自分好みのアバター
 ⇒購入したアバターのカスマイズ
 ⇒オリジナルのアバター

というように徐々に使用アバターのオリジナル度合いが上がっていく傾向があります。

すでに人気のアバタークリエイターにはファンがついており、クリエイター単位やアバター単位でのイベントも開催されていたりして、アバタークリエイターは漫画家のように、その存在を生み出した「先生」と呼ばれてリスペクトされています。


ワールドクリエイター

「ワールド」や「スペース」などと呼ばれるメタバース内の空間を自由自在につくれるのが「ワールドクリエイター」です。

彼らはメタバース空間をデザインする役割を持ち、しばしば物理世界を超える空間を生み出します。

メタバースクリエイターズ所属のLuraさんは日本トップのワールドクリエイターです。こちらの記事でも紹介されている『Kagaribi Onsen』はVRChatでも人気になっているワールドですが、

温泉と休憩所のある地下洞窟は複雑な形状にデザインされており、滝や光の演出も含めて神秘的な雰囲気をまとっています。

僕もかつて建築を生業としていた身ですが、平面図・立面図・断面図などの3軸の図面では表わせないような、自由な空間造形には本当に驚かされます。脳内が完全に3Dなのだとおもいます。

このようにこれからは空間デザインの能力を持った人が「メタバース時代の建築家やインテリアデザイナー」として活躍する可能性があります。メタバースで生活する人口が増えてくれば、建築学科や美大で空間デザインを学んだ学生にとっても「メタバースクリエイター」という道が新たなキャリアパスとなり得るでしょう。


アイテムクリエイター

メタバースの世界が広がるにつれて、いろいろなアイテムも必要になってきます。アバターが着るファッションアイテムやアクセサリーが必要になりますし、ワールドを飾るために家具などのインテリアアイテムを作るアイテムクリエイターも増えています。

すでにバーチャルファッションの領域はアダストリアやビームス、大丸松坂屋なども参入し立ち上がり始めているので、ファッションアイテムやアクセサリーをつくるクリエイターもどんどん増えています。ワールドクリエイターが建築家やインテリアデザイナーだとすれば、彼らは、物理世界でのファッションデザイナーやインテリアデザイナーに近いと言えます。


エフェクトクリエイター

また、メタバースならではのクリエイターとして、さまざまなエフェクトや動的なギミックを手掛けるクリエイターもいます。バーチャルライブでは光の粒子を使ったパーティクルエフェクトや、空間を変えてしまうフィルターや視界ジャックなどを駆使し、まるで魔法使いのように世界を自在に変化させます。

エフェクトクリエイターは、物理世界の舞台演出家や照明家に似ているとも言えますが、メタバースでは物理空間では難しいような演出も制約が少なく低コストでできてしまうので、より自由度が高くさまざまな表現ができます。Perfumeの演出を手掛けるライゾマティクスみたいな感じですね。



上記のように、一口に「メタバースクリエイター」といっても、2Dのweb時代に以上にさまざまな方向の専門性をもったクリエイターが生まれているのです。


すでに1千万稼ぐクリエイターも

今後、メタバースの人口や生活時間が増えてくるとさまざまな文化がメタバース内に移行してくるでしょう。物理世界での建築、ファッションデザインなども半分くらいメタバースの活動になってくるわけです。メタバース人口の拡大に伴うメタバースの情報空間の拡大と共にクリエイターの需要もますます増大すると考えられます。

既にメタバースのクリエイターは年間数百万円以上の収入を得ている方も増えており、「職業」として成立しはじめています

VRChatで人気のアバタークリエイターやワールドクリエイターは、一つのコンテンツの売上で数百万円になる人もいます。メタバースクリエイターズ所属のイカめしさんは、個人のアイテム販売だけで900万円以上の売上を達成しています。

Robloxでは、トップ500のクリエイターが年間2000万円以上の売上を上げていると発表されています。若いクリエイターも多く、中には10代前半で1000万円を超える売上を上げるクリエイターもいるのがRobloxの凄まじさです。

また、前回の記事でV版のInstagram/TikTokとしてご紹介したZEPETOではファッションアイテムの販売で収益化し、数千万を稼ぐほど成功しているクリエイターもいます。

メタバースのクリエイターとして生きる道は既に一部確立されつつありますが、今後、物理世界の職業の一部がメタバース側に移行していくと、新しい職業としてますます多くの方が活躍できる可能性が増えていくでしょう。


メタバースで生まれるクリエイターのゲームチェンジ

すでに述べたように、メタバースが広がると、建築家やファッションデザイナー、家具職人など、物理世界でのさまざまな職能もメタバース上の職業になってくるかもしれません。

モノづくり的な職業に限らず、VR演劇やバーチャルライブのようなエンターテイメントもメタバース空間で行われるようになっています。そしてそうしたエンターテインメントのショーやイベントがメタバースで開催されるようになると、演出や制作的な裏方やイベントスタッフが仕事になったり、それを取材するバーチャルフォトグラファーなど、新しい職種も生まれてきます。

物理世界の職業がメタバースでも起こってくる中で、面白いのは物理世界での経験が直接的に活かされるとは限らないことです。

例えば、現実世界の建築家がメタバースで人気のワールドをつくれるとは限りません。VR演劇やバーチャルライブでは、従来の演劇や音楽業界で活躍していた「プロ」よりも、VRを楽しんでいるうちに自発的にそういう企画を始めた(ちょっと言い方はあれですが、いわば)「素人」が新たな形のエンターテインメントを生み出していたりします。

VTuberもそうですが、物理世界のアイドルとしては必須と思われていた見た目などの物理要素から解放されることで、メタバースでは新しい才能やアイデアを持つ人たちが活躍するチャンスが生まれ、従来のヒエラルキーや業界の枠を超え始めています。

また、たとえば演劇や建築などにおいては、既存の業界にいるとどうしても「物理的身体性こそ重要」という感覚を捨てきれないところもあります。もちろん、アートやエンタメには物理的な身体性やその制約があればこその面白さがあります。しかし一方でそれが固定観念になることもあり、VRやメタバースではむしろ経験がないからこそ既存の概念に縛られず新しい経験をつくり出していく可能性があるのです。「新しいことは"持たざるもの"から始まる」というパターンですね。

メタバースにおいては、こうしたある種の「職業上の下剋上」が起こる可能性があり、これから多くの新しい才能が生まれていくでしょう。これからメタバースの最前線でそうした変化に立ち会い、変化をつくり出していくことに、とてもワクワクしています。


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