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思いを大切に育て孵化させる「これからのオフィスの意義」

コロナ禍に入りリモートワークが広がりを見せ、以前のようにオフィスに行くことが当たり前ではなくなった人も多いのではないでしょうか。
実際、私自身も緊急事態宣言が発令後にオフィスに行った回数はかなり少なくなりました。ではオフィスは必要が無くなったのでしょうか?
最近このテーマで話す機会も増えてきました。そのような中、日経COMEMOで「#オフィスは必要ですか」というテーマ企画が始まったので、今回は「オフィス」について考えてみることにしました。

今までのオフィスの役割

コロナ禍に入るまで、企業勤めするビジネスパーソンの多くは「出社」することがベースであり、オフィスは仕事をする場の中心にありました。多くの時間を過ごすことになるオフィスの環境の良し悪しは社員の生産性にも影響を与えることになります。また、魅力的なオフィスは採用力を高めることにも繋がるため、オフィスの各種機能を充実させる動きも多くの企業で進められていました。

チームで動く場合、1つの場所に集まることでコミュニケーションは円滑になり、スピード感を持ってプロジェクトを推進する上でも、オフィスという場は重要な意味を持っていました。

また、基本的に社員が出社する企業では、日々お互いの顔が見える状況で過ごすため、表情からちょっとしたモチベーションの変化に気付けたり、何か問題があったときに同僚や上司にすぐに相談できる環境を提供する役割も持っていました。

コロナ禍におけるオフィス事情

コロナ禍の緊急事態宣言下においては多くの企業で「在宅勤務」が導入され、9月現在では「在宅勤務」と「出社勤務」の両方が様々なバランスで導入される企業が増えています。

一度、新型コロナウイルスの感染リスクの観点から、一時広がりを見せていたフリーアドレス制を禁止する企業や、郊外にサテライトオフィスを新設する企業も出てきているといいます。また、ツイッター社では無期限の在宅勤務を容認するなど、「在宅勤務」中心になっている企業も増えてきています。

こうした在宅勤務を中心に据える動きに対し、カゴメ社では生産性の低下を懸念し週1日の「出社勤務」を必須としています。これは、社員へのアンケートの結果、「商品開発などにおいて意見をぶつけ合うことができず生産性が低下する」という懸念が多かったためとされます。

なお、Peatixでは、緊急事態宣言解除後は、オフィスは人数を制限した形で利用可としています。Googleカレンダーでオフィス出社を「予約」し、人数制限以内の出社が出来るようにしています。多くのメンバーは在宅勤務をベースにし、時々出社するというハイブリッドな動きとなっています。

オフィスの意義はどう変遷したのか

コクヨ社のワークスタイル研究所の所長である山下正太郎さんが、H¹O連続オンラインサロンにて、コロナ禍前のワークスタイルのキーワードは「フレキシビリティ」と「イノベーション」であったと述べています。
フレキシブルな働き方のソリューションとして、在宅勤務を含め、働く時間と場所を自由に選択できるスタイル「ABW(Activity Based Working)」がオーストラリアなど欧米で進んでいるそうです。時間や場所に縛られないため、短期的には生産性が上がりやすいのですが、長期的にはロイヤリティやエンゲージメントが下がりやすい特徴があります。ロイヤリティやエンゲージメントの低下を防ぐためにオフィスに工夫がされているといいます。

また、もう1つはシリコンバレー方のイノベーションモデルです。Facebook社がそうであったように、意図的に人が密集する空間設計にすることで、偶発的なコミュニケーションを生み出し、イノベーションの源泉にしていたのです。こうしたイノベーションモデルはコロナ禍で社員が密に集まることが難しくなった状況下では継続が難しくなっています。

コロナ禍においては、密を生み出す「イノベーション」型は継続が難しく、多くの企業が「フレキシビル」なABW型、すなわち働く時間と場所を自由に選択できるスタイルが広がっていくと考えられています。

ABW型においては、上述の通り、オフィスにはロイヤリティやエンゲージメントの低下を防ぐことが求められます。これこそが、今後のオフィスの持つ意義となるのではないでしょうか。

オフィスは必要ですか?

では改めて「オフィスは必要か」という問いについて考えたいと思います。私は「オフィスは必要である」というスタンスです。ただし、これまでと同じ機能・目的を求めるわけではありません。在宅勤務・リモートワークの「効率性の高さ」は確かにあるので、これからも多くの企業で取り入れられていくでしょう。しかし、オフィスは不必要にはならないと考えています。では、「オフィス」が持つ機能・目的はどのように変わっていくのでしょうか。

私はオフィスはオンラインでのコミュニケーションでは代替出来ない価値を提供する場になっていく必要があると考えています。具体的にはオフィスは「濃度の高いコミュニケーション」の場であり、結果「心理的安全性を高める」ための場になっていくのではないでしょうか。
オンラインだけでは、偶発性の高いコミュニケーションは生まれにくく、イノベーションモデルにおいて発生していた質の高い雑談は生み出しづらくなっています。イノベーションの源泉とも言える濃度の高いコミュニケーションを如何にオフィスで生み出していけるか。密を避けながらの状況下ではチャレンジではありますが、しっかりと距離感を保ちながら「雑談」を目的として集まる場としてのオフィスの位置付けは企業にとっても、事業推進の源泉になっていくのではないでしょうか。

まとめ

これからの時代、社員全員が毎日オフィスに集まるという状況に世の中全体が戻るとは思いません。よって、今までのような広さや座席数がオフィスに求められなくなっていくでしょう。一方で、オフィスには「濃度の高いコミュニケーション」が「安全に」生み出せる機能が求められていきます。今までのような機能やファシリティではなく、新たな空間設計が必要になっていくことでしょう。

事業の源泉となるエネルギーは社員の思いから生まれます。オンラインでは基本的に視覚と聴覚でのコミュニケーションとなりますが、実際に会える場では五感を駆使し、お互いの空気を感じることが出来ます。そのオフィスにおける「空気感」こそが「思い」の波動を生み、伝播させていく上で重要になっていくのではないでしょうか。
そして「オフィス」はその社員の事業に対する「思い」を大切に育て孵化させる場として重要な意義を持っていくことでしょう。

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