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廃棄古着の中からお宝を探し出す「トレジャーハンティング」という仕事

日本では年間85万トンの衣類が新品として販売される一方で、着なくなったり、痛んだりして年間75万トンの衣類が家庭から手放されている。その中で、リユース(再販)やリサイクルに回されるのは3割で、残り7割の古着は廃棄されている。若者の中では、古着ファッションが流行しているにも関わらず、古着のリユース率は低いのが実状である。

環境省 令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務(日本総研)

古着の再利用が進まない理由として大きいのは、回収された古着の中から、再販できる服を仕分けするための手間とコスト(人件費)が高く、業者としては採算が合わないことが指摘されている。

一方、海外ではリサイクル回収された古着の山から商品価値のあるものを探し出す作業が「トレジャーハンター」という職業として成り立つようになっている。

英国とスウェーデンで15店舗のヴィンテージ古着店を展開する「Beyond Retro(ビヨンド・レトロ)」は、古着の入手先として、慈善団体やリサイクル団体からの調達と、古着のリサイクル施設という2のルートを持っている。後者のルートには、ヴィンテージ衣料の専門教育を受けたトレジャーハンターを組織化して、各地の施設を巡回して、1日あたり何千点もの古着を回収している。

同社は、ヴィンテージ価値のある古着のトレンドを、流行、年代、サイズ、スタイル、ブランドなど項目別にデータベースとして蓄積しており、そこにトレジャーハンターが持つ経験を重ねて、有望商材となる古着の収集を行っている。

しかし、回収される膨大な古着の中から、商品価値あるヴィンテージ品を発掘できる確率は、0.1%未満に過ぎない。そこで残り 99.9%の古着を廃棄させない解決策として、「Beyond Retro LABEL」という独自レーベルを作り、古着の生地をアップサイクルしたヴィンテージ再生服の製作も行っている。服のデザインは20~30のスタイルに絞り込み、製造はインドの直営工場で行うことにより、販売価格はファストファッションと同程度に抑えられている。

※アップサイクルとは、廃棄されているような無価値の中古品を修理、加工して再販価値のある商品に蘇らせることを指している。

■Beyond Retro店舗の紹介映像

米国や欧州では、古着が回収されるリサイクル倉庫が Rag House(ラグハウス)と呼ばれており、古着小売業者への卸売部門もあることから、トレジャーハンターが掘り出し物を探す拠点となっている。※Ragは、ぼろ切れの意味。

日本でも、トレジャーハンティングができる倉庫は存在しており、そこで大量に仕入れた古着をメルカリなどで再販する副業者もいる。トレジャーハンターが増えることで、廃棄される古着の仕分け率は高まり、環境問題にも貢献することになる。

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