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日本の新興市場復活の鍵は、世界トップ投資家に学ぶ「経営の共通言語」だ

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

日本株が好調です。先週9日の東京株式市場で日経平均株価は、一時3万7000円を上回りました。これは1990年2月19日以来約34年ぶりの水準で、バブル崩壊後の高値を連日でつけたことになります。

この流れを受けて新たに日本市場に参入した海外勢を中心に、買いが買いを呼ぶ展開が続きます。海外勢は1月に現物株を2兆693億円買い越しました。月間の買越額としては記録のある1982年以降で7番目の大きさ(東京証券取引所)です。今後の動きはわかりませんが、日本株組入比率の低い海外インデックスファンド等が保有比率の調整をかけるといった需給要因を考えると、流れはまだまだ続くのかもしれません。

対照的に振るわないのが、東証グロース市場です。マザーズから名称変更され改革が進んでいますが、現時点では特に変化は見られず、250指数は2023年3月末比で6%安に沈んでいます。「上場ゴール」などと揶揄されることもあるように、グロース市場に上場している企業が投資家の期待する成長をできていないことが課題です。今後の人口減などの国内市場縮小トレンドを踏まえると、世界で戦える真のグロース企業を日本発で生み出すことは重要です。

2022年の市場再編で東証マザーズ市場からグロース市場に名称が変更されたが、投資家の立場では特に変化は感じていない。東証ではグロース市場での上場を維持する時価総額基準を引き上げる議論がされている。もし実施されれば、企業にとって成長戦略を再考したり、解像度を上げたりする良い機会になる。市場自体の新陳代謝の促進や、M&Aの増加といった効果も期待できる。

課題を感じるのが、グロース市場の立ち位置だ。旧マザーズ市場から旧東証1部へ「くら替え」するのと同様に、グロースからプライムへ上場区分を変更する企業が目立つ。この動きはグロース市場の魅力度を低下させている。米国のナスダック市場のように、日本の「真のグロース企業」を集めた市場があれば、海外投資家をこれまで以上に引き付けることができるかもしれない。

日経電子版

では、海外の機関投資家はなぜ投資をしないのか?実はグローバル投資の世界では「日本市場に投資をしたい、投資額を増やしたい」と考える投資家が大勢います。しかしながら、標準の投資分析手法を日本企業に当てはめたときに「何かが腑に落ちない」となり投資を見送ることがよくあるそうです。

これがなにか?を突き止めた本がこの度上梓されました。著者のひとりで友人の高岡美緒さんから相談を受けてゲラを先に読む機会に恵まれましたが、まさに私も感じていた前述のもやもやが晴れる内容でした(僭越ながら帯も書かせていただきました)。

結論から言うと、日本企業側は海外投資家で使われている「共通言語」を理解していないということです。ここでいう言語は英語ということではなく、投資を受ける際の面談はIRミーティングなどでのQ&A。投資家の視点で企業の何を重視して見ているか、そのフレーズに込めた意図を理解して説明できているかという点です。

本書には29の具体的な質問フレーズが登場します。良い問いは深い洞察を促すと言いますが、まさにそのような良質の問いです。

例えば、スタートアップのVCへのピッチを想定した第1章では、以下のフレーズが出てきます。

What’s the why now factor?/明確な成長ドライバーは必須要件

要は「なんで今なのか?」と問うているわけです。投資家というのはいつでも投資できるわけではなく、それぞれのファンドに設定された時間軸を意識せざるを得ません。世の中にはちょっと早すぎたために失敗したサービスがたくさんあります。規制緩和により今がチャンス!であるとか、技術的なジャンプが起こるタイミングであるとか、様々な理由をもって理路整然と「今なのだ!」と自信をもってピッチできるかが期待されています。

もうひとつ、私が心に残っている質問を紹介します。

Is there Founder market fit?/「何をやるか」と同じくらい「誰がやるか」が大事

最近ではPMF(Product Market Fit)という言葉は浸透してきたと思います。製品が市場に受け入れられた瞬間のことで、急成長のドライバーとなるものです。一方で、PMFにたどり着くのは容易ではありません。多くのスタートアップがこのマイルストンにたどり着くことなく、資金ショートにより退場していくのも事実です。特に初期のステージではプロダクトアイデアや革新的なビジネスモデルはあれど、実際には絵に描いた餅であることも真実です。だとすると、なにをもって成功確率を導き出すのか?それが「誰がやるか」「どういうチームで望むのか」という部分です。

本書はスタートアップ経営者や起業を目指す方はもちろんのこと、事業について深く考えるきっかけを求める実務者の方々に広く読んでいただきたいと願います。


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※ タイトル画像提供は筆者撮影


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