ドイツメルケル首相がキリスト教民主同盟CDUの党首退任を決めた。「女性を登用しないと都合が悪い」という時代の流れにまったく関係ないところで、“女性”首相などといちいち“女性”を取り沙汰されることもなく、ドイツと欧州と世界の均衡を保つ重責を担ってきたメルケル首相は、文句なく格違いの“女性”政治家。私も含め、多くの女性たちにとって、密かな誇りの人である。

 しかし、さすがのメルケル首相も、寛容過ぎる移民政策への国内批判を抑え込めなかった。10月14日のバイエルン州選挙に続き28日のヘッセン州選挙でも保守政権が惨敗、ポピュリズムの流れに拍車をかけた。CDU、SPDの保守政権はあわせて69%を確保していたところから、47%へ、22%減。対し、野党は31%から53%へ。中でも、ドイツのための選択肢AfDの得票率が従前の4.1%から13.2%に躍進。同党としては国および大きな州で獲得した得票率としては過去最高に達した。

 ポピュリズムの流れが着実にドイツの安定政治を変えている。既成の体制派与党に対する国民の不満は先進国にとどまらない。メキシコやブラジルでも、少数与党出身の大統領候補が当選しており、もはや世界的現象になっている。

 メルケル首相は党首を辞任しながらも、2021年までの任期満了まで首相として在任する意向を示している。ただし、CDUとしては、党内の求心力を回復するためにも早急に次期党首候補を選出する必要がある。ニューリーダーをもって、来年5月の欧州議会選挙に臨まなければ、更に追い込まれる結果を招きかねない。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37099610Q8A031C1I00000/

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