見出し画像

オミクロン株・年末年始にかけての動向を考察する

  新型コロナウイルス「オミクロン株」は、WHO(世界保健機関)が11月26日に命名し、懸念される変異株(Variant of Concern; VOC)に位置づけてから瞬く間に世界各地域に拡がっており、日本でも11月28日にアフリカから持ち込まれたことが判明しました。

 現在のところは水際対策および入国後の健康監視により市中での感染は避けられていると見受けられますが、連日数千人の入国者を受入れており、すべての人たちを施設などで待機させることが不可能である以上、市中での感染が確認されるのは時間の問題であると考えます。これまでに諸外国で評価されているオミクロン株についての知見として①デルタ株に比べて感染・伝播性はかなり高い ②既存のワクチン効果の著しい低下や再感染リスクの増加が懸念 ③重症事例は多くはなく死亡例はわずか というところが主な特徴と報告されています。これらを踏まえ、現段階での状況と年末年始にかけての動向について考えてみたいと思います。

 現在の国内の感染状況ですが、第5波が収束傾向となった9月以降は明らかなリバウンド傾向もなく、東京都では低い水準で推移しています。もし既にオミクロン株が市中で拡がっているのであれば、上記①②より検査陽性者は持続的に増加に転じるはずですが、少なくとも今週まではその兆しは見えてきていません。

 今回の水際対策はこれまでよりかなり強化されたような印象がありましたが、ある程度の潜伏期がある感染症は検疫のみで止めることはきわめて困難です。だからこそすり抜けることを前提として入国後の健康監視体制、行動規制などを徹底しなければなりませんが、日本は法的規制をすることができないことから、どうしてもお願いベースにしかならないため、各々がルールが守られなければ国内で拡がる可能性は常時あるわけです。

そんな矢先の事案が以下です。帰国者は第3者との接触は避けるように指示があるにもかかわらず2日にわたり共に過ごしていたわけです。

東京都内在住の20代女性は8日に米テキサス州から帰国後、14日間の自宅待機中に発症した。成田空港の検疫では陰性だった。16日にオミクロン型とわかった。入国時に陰性で、濃厚接触者でない健康観察の対象者の感染確認は初めてだった。女性は帰国便の同乗者に陽性者がおらず、自宅で待機できた。同州が検疫所の確保する宿泊施設で3日間の待機を求める地域に指定される前のことだった。この女性と8、9日に会っていた都内の20代男性の感染が15日に確認された。男性は女性と会った翌10日に発熱などの症状が出た。陽性と判明する前の12日には川崎市内でサッカーを観戦していた。男性もオミクロン株であることが判明した。

  ただこのタイムラインをみると、仮に8日に感染して10日に発症とすると潜伏期間は2日であり、(2日で発症する事例もあるかもしれませんが)これまでの潜伏期間である平均5-7日より短い印象です。オミクロン株の潜伏期間が短いのであれば拡がるスピードも速まるのかもしれません。一方でこれまでと類似と考えれば10日の発熱は他の原因の可能性もあり、オミクロン株感染では症状はなかったのかもしれません。

 それでは12日のサッカー観戦でこの男性が他の第3者に感染させてしまった場合のシナリオを考えてみます。観戦中はマスク着用、声を出さない応援だったということですが、スタジアム内だけではなく、公共交通機関の利用や途中での飲食機会などがあったかもしれません。これまでの新型コロナの潜伏期間は5-7日程度と言われていますので、もし当日感染者がいたならば症状を自覚するのは今週末(12/17~19)あたりになると推測されます。

 該当者が医療機関を受診して検査を行い新型コロナと判明した場合、すべての症例で遺伝子解析を行うはずですので、2-3日後には結果が判明します。オミクロン株が拡がりやすいことを考えれば、このイベントにおける感染機会があったかどうかは来週(12/20~25)の首都圏の感染者数の推移に現れてくる可能性があります。

 もし増加傾向にならなかったとしても、リンクの追えないオミクロン株検出者が確認された時点ではすでに水面下に多くのオミクロン株保有者が存在することが示唆されると思われるので、その数日~数週後には増加傾向になることが危惧されます。さらに来週末はクリスマスであり、再来週は年末休暇となります。これまでと同様に拡がりやすい環境に一人でも感染者がいれば容易に集団感染となるリスクがあります。

 年末年始は休診となる医療機関が多くなりますので、病原体保有者であっても軽症であれば検査を行わずに人との接触機会も増えることがあるかもしれません。東京都は既に年末年始の医療体制確保のための協力要請をしており、私も昨年に引き続き応じることにしましたが、昨年大晦日に1000人を超えたのと同じようなシナリオにならないように祈るばかりです。

#日経COMEMO #NIKKEI

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?