東京電力ホールディングスと中部電力が原子力事業で提携協議に入り、日立製作所と東芝も参画し、4社連合で原発事業の再編を行うとの新聞報道を受け、原子力発電について、再度考えてみよう。

まず、企業の信用力の見地からいえば、いずれ原発事業をそれぞれの企業から切出して統合させる可能性が出て来ることはポジティブであると言える。そもそも原子力発電は“発電コストが低い”として、沖縄電力を除く電力会社がこぞって参入した。しかし、いざ事故が起きれば、影響は甚大だと改めてわかったわけだ。にも拘わらず、原子力損害賠償制度が定める原子力損害賠償措置額は依然として1200億円(+拠出金最大140億円)程度のものしかなく、結局、無限責任が事業会社にかかる(政府の援助は原賠法16条)。そうしたリスクを民間事業会社1社が担うのは難しいと判断すれば、事業統合して運営していく、とするのは企業の信用力を維持する上で歓迎すべきこと、である。国のバックアップが期待できることもサポート材料である。

一方、最近はやりのESG投資(Environment環境、Social 社会、Governanceガバナンスの頭文字をつなげたもの。投資の際、環境、社会、ガバナンスの観点から優れた企業等を選んで投資する考え方)の見地から言えば、原子力事業の負担を減らすこととセットで考えるべきは、むしろ、再生エネルギーへの移行である。それぞれの企業がリスクを切り分け、再生エネルギーに注力することが望ましい。

ただし、それには、2030年のエネルギーミックス(原子力を22-20%、化石燃料56%、再生エネルギー22-24%)の目標を、守るべきかどうか、国が再度考え、意思表示する必要がある。このままの目標を維持する場合、原子炉は何基稼働しなければならないかはすぐわかること。もっとも、こうして掲げる日本の目標と世界の環境に関する見方は相当差があることを、グローバル社会の一員として、放置していいかどうか、も踏まえる必要がある。と同時に、再生エネルギーへのシフトは、消費者、すなわち国民の支払いが増えることも周知徹底する必要があることは言うまでもない。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34438270S8A820C1TJC000/

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