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賑わいづくりのPDCA

ここ最近、幾つもの地方に出かけ、文化施設や遺跡などを起点とした賑わいづくりに関わってきた。多くの場合、見どころが点在している。歩いて行けないことはないが、少し遠い。幾つも回るとなると、流石に乗り物が欲しくなる。そんな状況からなのか、一般的な観光客は、目ぼしいところを一つだけ訪ねて、数時間の滞在で街をあとにしてしまうことが多いようだ。なんとも悲しい。土地の魅力をもっと伝えることはできないだろうか。

ものづくりの世界でもそうだったように、まちづくりでも現状把握が大事だ。このまちをどこからどこまでのエリアで捉えて、その中にどんな見どころや見どころの種があるのかを洗い出すことから始める。春ならでは、冬ならではの場所もあり、季節の移ろいはみておく必要がある。朝がよいところ、夜がよいところと、1日の中でも見どころは移り行く。あと、忘れてはならないのが、見どころの密度だ。ついでに周りたくなるストーリーと共に見どころが密集していると、その場所の魅力度が一気に上がるのだ。

とはいえ、冒頭で話したように、見どころは点在しているケースが多い。故に、見どころの棚卸しが済んだら、来訪者の視点で密集した見どころの群を作ることが大事になる。こことここをこんなストーリーで繋げて周遊してもらう。シンプルで分かり易いストーリーがあれば伝達力が高まる。ただ、魅力の総量が足りないと、残念ながら多くの人を惹きつけられない。故に、いまある見どころの間に、新たな見どころを足すことが必要になる。もしくは移動自体を楽しくして、見どころの一つとして仕立てていく工夫が欲しい。

どの地方に行っても、こんなことを妄想しているのだが、なかなか手触りが持てない。やはり、地図上にネットやまちの観光案内の情報をマッピングしても、どこが人気で、どんなルートで人が動いているかが分からないからだ。季節や時間でも大きく様変わりするとなると、現場で観察しようにも、必ずしも実態を把握できるわけでもない。ましてや、イベントなどが足された場合に、どう人の流れが変わったか、どのぐらい滞在時間が伸びたのかなど、把握しようもない。故に、見どころもイベントもそれぞれが別々の取り組みにしか見えない。複数あることのポテンシャルを発揮できていない状態だと思う。

昨今、観光DXが叫ばれる中、そうした状況を打破できる様々なツールが活用できるようになってきた。例えば、LINEを使って、バスの周遊チケットや飲食店、文化施設への経路探索を行えるソフトもある。利用者のアンケートを取ることはもちろん、裏では人流の解析をするための機能も提供される。

商店街の中の回遊など、もっときめ細かい人の動きをみたい場合には、ビーコンを使った仕組みがある。来訪者の持つスマートフォンの情報を匿名化して活用することで、町おこしをデータで支えることができるという。仙台や小田原などですでに活用されているようで、成果が期待されている。また、新たに機材を設置しないで、公衆Wifi を活用して人流解析を始められるツールもある。

他にも、安価な手法は幾つもあるようだが、どんなメッシュで人流を解析したいのか、どのくらいならコストを掛けてもリターンと見合うのかを考えて、道具立てを選ぶ必要があると思う。ただ、何より重要なのは現状を知ることにとどまらず、見どころを群に仕立てるストーリーと、密度が不足するなら間を埋めるイベントや新たな見どころ、さらには移動の見どころ化を合わせて考えることだ。

でも、こうしたストーリーは最初は往々にして机上の空論だ。したがって、現状に、新たに作り上げたストーリーを足すことで、人流がどう変化するかも含めて仮説を構築して、人流解析の結果と照らし合わせる。それを何度も繰り返して、真に賑わいを生む構想に仕立てていくことが大事だ。まさにトライアンドエラーということだと思う。人の流れを見たいという興味にとどまらず、こんなイベントをやったら、こんなストーリーを訴求したら、こんな見どころをたしたら、どう変わるだろうか。そんな仮説を常に持って、すぐさま試して結果をこうしたツールで検証する。こんなPDCAを回していけると、まちづくりの創意工夫が楽しくなると思う。

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