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ファーウェイ(华为)報道の日本と中国の違い

先週は中国メディアも日本メディアも华为(Huawei)の報道一色でしたね。日本のメディアの後半はトランプさん来日一色だったかもですが。

私たち研究員は日本のメディアも中国のメディアも読んでいて、報道内容や皆さんのコメント内容が両国のものでだいぶ異なっています。また、当然ですが中国人と日本人とでは今回の件での影響が全く違いますので、中国から日本でのを見てるとだいぶ違和感がある、そして興味深いなぁと思ってました。

私たちが今回の件がどうあるべきか、などと言ったところで... なのでそこは触れませんが、日本のみなさんも「中国ではこうなってますよ〜」って知りたいのかなぁ思ったので、今回は日本と中国の報道の対比をnoteにしてみました。(日本での報道はみなさんお詳しいと思いますので少なめにしときます、せっかちな方は「中国ネット民の意見やコメント」からお読みください)

日本での報道と実際のところ

日経新聞さんがまとめてますね、そりゃそうですよね笑

タイムラインでまとめてくれればもっと読みやすいと思います。ほかの記事の内容も追加してまとめると

【影響】
・トランプ米政権によるファーウェイへの事実上の輸出禁止措置で世界中で混乱が広がっている。日本企業も慎重な対応が必要になる。
・Googleのソフト使えなくなる、AndroidOSも利用できなくなる、なのでファーウェイ、19年秋にも自前OSをサービス開始か
・英半導体設計大手アーム・ホールディングスが取引停止の方針を決め、新規開発が困難になったとの見方が広がっている
・ファーウェイ問題、消費者にも余波(日本でも多少Huaweiの端末を売ってるから)
【政治】
・トランプ氏、ファーウェイを取引材料に 対中貿易交渉で
・米国、ファーウェイ製禁止要請か 5G基地局で韓国に
・中国の習近平(シー・ジンピン)指導部が米国への対抗と愛国を国民に呼びかけている

なるほどですね。これをふまえての私のまとめですが

そもそもの原因は大きくは2つあって
・Huaweiはアメリカと中国の貿易戦争の材料にされている
・Huawei製のものにバックドアがあって情報抜かれるリスクが高いから禁止にする 
 で、今回の騒動になっているということですよね。

そして、日本は事実上アメリカに従うしかないので、日本もHuawei製の通信機器とか使えなくなる、端末も販売できなくなる。また、HuaweiはAndroidOSが使えなくなるし、GmailやPlayStoreが使えなくなりそう。そうすると中国人は影響あんまり無いかもだけど、外国人(日本人)には辛い。

中国は貿易戦争って言ってるけど、使えるカード(関税面とか使える交渉材料が)はアメリカの方がかなり有利で、でも中国はメンツ主義があるから敗北を認めることはできない。今後どうやって落とし所を見つけるのか?

そして一番のポイントは「iPhoneユーザーばっかりだし、大部分の日本人にはHuaweiは日常生活で接する機会が無い」。だから結局よそごとで、みんな何か意見言いたいだけでしょう。Huaweiがどんな会社なのかも実際にはほとんど知らないし、多少詳しい人でもたまに目にする中国凄いよって記事で書かれてるくらいの内容しかHuaweiについて知らない。

中国での報道と実際のところ その前に

中国の報道について紹介する前に、先に知っておいてもらいたいことが2点あります。

1つ目は、中国は今回の「貿易戦」の当事国なので、世論の面からも戦いが行われているということ。

2つ目は、中国の正式な報道は「いわゆる政府のメディア」が中心となってます。ですから日本で報道されてる「中国メディアの報道内容」だけを伝えても、それは「中国での実際のところ」とは異なります。

今回は「政府系メディアのニュース」「社説」「個人メディア」「ネット民」からできるだけ多様な声を紹介したいと思います。ですが、日本の何倍も人口がいて、考え方も様々なので、決して中国にいる全てがこのように考えてるわけでは無い と理解してください。

今のところ世間の関心のピークは2回

まずは新華社の発表したデータから見てみましょう。

これを見ると、5月15日にアメリカがHuaweiに対しての措置を実施することを発表してから、中国国内でHuaweiへの関心が高まりはじめました。

5月17日に山が盛り上がってます。これはHuaweiのチップ生産企業である「HiSilicon」のCEOが社員に対して発表した「十年备胎,一夜转正」(十年準備してきて、一夜にしてときが来た)という手紙が報道され、このときに世論の議論が最初のピークに達しました。

内容を簡単にまとめると、Huaweiチップの「予備軍」として長年にわたって辛抱強く発展してきた「HiSilicon」がこれで「正式軍」として一緒にアメリカの制裁と戦うことになったぞ。チップ開発には莫大なお金と時間が必要なので、Huaweiにはもう一度10年をかけて「予備軍」を育てていく時間も余裕も無い。「HiSilicon」のCEOはこれからも(以前から言っていたように)「技術の自立」を慣行して開発しましょうと呼びかけた というもの。

そして2個目の山になってる5月21日に議論は最高潮に達します。Huaweiの設立者でCEOの「任正非」がHuawei深セン本社でメディアの取材を受けたときです。

これについてはCCTVや中国青年網などが下記のように報道しました。

抜粋すると、「任正非」は発言の中で「アメリカの禁令はまだHuaweiに大きな影響を与えていない。Huaweiはグローバルな事業展開をまだ続けている。予想では今年の成長スピードは遅くなるが、マイナスや産業発展への傷害には及ばない。チップについても極端な供給停止はないだろう。アメリカからまったく供給してくれなくなってもHuaweiは困りません。」と話しました。

Huawei自社開発OSについての情報発表

また、人民日報が「商標出願情報」からHuaweiのOS開発状況に注目。

内容は、「グーグルがHuaweiとの提携を中止すると発表した。android OSが使用できないことが問題になるではないかとの疑問に、Huaweiが自主知的財産権を持つOSの開発情報が入ってきた。情報を見てみると「华为鸿蒙」(HuaweiのOSの名前)がHuaweiのソフトなどに使われます」といったもの。


また、新華社のビッグデータ分析によると、アメリカの禁令が発表されて以来、ネットユーザーの一連の報道に対する感情が下記のように変化していると報道されました。

↑なんか変なやつが右下にいるけど、団結ってことかな

その間にはこんな事件もありました。これは日本では全く報道されてないと思いますが、中国では話題です↓

FOX Businessのキャスター「Trish Regan」が番組内でのHuaweiへの制裁についての発言。それを見たCGTN(China Global Television Network)のキャスター「LIU Xin」が意見する動画を配信しました。すると、それに対して「Trish Regan」がまた番組内で11分間も言い返し、更にツイッターで「LIU」キャスターに喧嘩を売ります。このツイートの攻防はヒートアップしていて、アメリカ時間5月29日午後8時(日本時間5月30日朝9時かな)に「Trish Regan」の番組内で2人が議論を展開する という予定になっています。どうなりますかね。(そもそもTwitter禁止の国の人がTwitterでプロレス(ガチ喧嘩かもしれんが)するって面白い)

たくさんの誤報も

この状況のなかで、不正確な情報があちこちから発信されています。主に「Huaweiへの供給会社が提携中止すると発表した」とする間違い報道です。

情報によると、ネット上で「パナソニック」「東芝」「infineon社」などがHuaweiとの提携を中止すると報じられましたが、その後すぐにそれぞれの会社が公式的な否定発表をして、噂を打ち消しました。

中国ネット民の意見やコメント

では中国のネットユーザーは今回Huaweiの件についてどう考えているでしょうか。ユーザーの質の高さで評判が高い議論プラットフォームサービス「知乎」(zhihu)ではすでにたくさんのスレッドがあり、識者たちが議論を展開しています。

下記に紹介しますね。最も盛り上がっていた議論は「イギリスARM社がHuaweiとの提携中止でどのくらいの影響があるのか」についてで、既に2600以上の回答がありました。

↑個人的にはハードウェアのところが最も痛手だと思いますが、強気な意見も多数

また、たくさんのスレの中で僕が最も注目したのがこれです「Huaweiの勝ち目はどのくらいありますか」。みなさんも一番興味ありますよね?この議論は回答数が一番多いわけではないのですが、面白かったので、興味深い答えをいくつか紹介したいと思います。(長いです!)

↑600以上の回答が、Huaweiの国内ライバル社務めの意見も

「技術の面ではシリコンバレーとの差は1~3年遅れだと思う。そして市場の差は10~15年遅れ。しかしHuaweiが今ブロックされたとしても、国産で進めていくことは可能だ。Huaweiは既に1年分以上の在庫を用意してあるから。それは、ハードウェアの開発経験があればわかると思うが、ちょうどPRD段階から正式量産にかかる最大周期となる。」

「Huawei規模のメーカーの需要量があれば、国内企業の開発と生産もより良く発展させることができる。」

「中国の技術は現在はまだアメリカとは勝負できないかもしれないが、2016年のアメリカ製品よりはマシだと思う。いまのハードウェアやネット環境を一時的に2016年に戻しても我慢できなくはない。そしてそれは今の発展があまりにも早すぎるからだ。」

「OSに関しては、一つの例が参考になる。マイクロソフトはPCのOS開発があまりにも強く、他の企業が参入するチャンスがない。しかしマイクロソフトがちょっとだけスマホOS開発を油断したらすぐに市場を失った。今回の禁令は、欧米のチップ企業にとっては「油断」となり得ます。アメリカ政府から市場参入を禁じられたから気の毒ですが、それは中国企業にとっては今までに無いチャンスとなるだろう。」

また、「KL9009」というユーザーの答え(これはとても興味深く、これだけで一回詳しくまとめようと思ってます)を抜粋すると

「Huaweiの勝ち目を議論する前、まずは勝の定義を明確にしないといけないです。アメリカが歴史の流れに逆らう戦争を始めた、スーパー大国が1つの会社を相手に戦いを始め、その会社を倒産させる気です。」

「Huaweiは死ななければ、アメリカはこれから自分たちの信用喪失に代償を払うことになります。」

「もしHuaweiがダメになったら、Huaweiもその程度の会社に過ぎないことが証明されます。そのとき我々はHuaweiの死体を踏み台にして前進すれば良いのです。」 

などなど。

他の意見の中には、WIFI規格協会やSD規格協会がHuaweiを排除したことに対して「5Gを発展すればWIFIいらなくない?」や「Huaweiにも独自のストレージ基準がある。SD規格協会は昔のDVDとLDの戦いの敗者LDのようになるのではないか」とありました。

中国のネット識者たちは「今回の戦いで我々はしばらく苦しむだろうが、これは絶好のチャンスでもある」と意見する人が多いです。さらにトランプの一連の行動に対しては「今回の件は、中国製品の実力を海外に認識させる結果になっている。もはやアメリカとトランプが無料で広告してくれているようなものだ。もしかしてトランプ氏は共産党員なのでは?」などのコメントも。

いかがでしたか。
Huaweiへの禁令は貿易戦とはまた違いますよね、貿易戦については改めて書きたいと思います。


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中国情報局@北京オフィス
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