社外副業解禁でキャリアの中だるみを防ごう

三井住友銀行が10月から全従業員に対して社外での副業を認める制度を導入することを発表した。これにより、同銀行の約3万人の全従業員は、月20時間まで他の企業との雇用契約に基づく労働が可能となる。この副業解禁は、金融業界における働き方の多様化の一環であり、従業員のキャリア形成や成長の機会を広げるものとなる。本業に支障をきたさない限り、システム開発やデザインといった専門スキルを生かした外部講師の業務などが可能になることで、従業員は新たな挑戦をする場を得られることが期待されている。

日本経済新聞の記事によると、銀行業界では、既にみずほフィナンシャルグループが2019年に副業制度を導入し、2023年度には800人近くが活用している。三菱UFJ銀行も週1〜2日程度社外で働く制度を設けており、今回の三井住友銀行の解禁により、3メガバンク全てが社外副業制度を導入することとなる。副業を通じて金融機関の従業員が多様な経験を積むことが、業界全体の働き方改革の一環としての重要なステップであることがわかる。

銀行員は、日々の業務を通じてクライアント企業との接点や市場の情報に触れる機会が多く、社会情勢や変化の兆しをとらえる能力に秀でている。しかしながら、特に若い間はその能力を社内でのみ活かすことが求められ、社外で新たな経験や視野を広げる機会に乏しい場合が多い。そのため、20代後半から30代前半に差し掛かると、通常の業務を問題なくこなすようになる一方で、自分のキャリアの方向性に対する悩みや行き詰まりを感じやすくなる。そうした若手のエースとも呼べる銀行員たちにとって、副業の解禁は新たな挑戦と成長の場を提供し、自らのキャリアに対するモチベーションを高める好機となる。

筆者がプログラムコーディネートを務める異業種セミナー「Oitaイノベーターズコレジオ」には、毎年、地銀から若手の従業員が参加している。彼らはセミナー内でのグループワークにおいてリーダーとして活躍し、社会課題の把握と分析に優れた能力を発揮している。しかし、副業禁止の規定が、セミナーで練った事業アイデアを実現する上での制約となっていることを目の当たりにしてきた。若手の銀行員が社内で得た知識や経験を元に、社外での挑戦を通じてさらに成長しようとする意思を持っているにもかかわらず、その可能性が閉ざされてしまう現状は非常にもったいないと言わざるを得ない。

金融業界における規制緩和は、銀行が自ら新しい事業を生み出すチャンスを増やしている。従来の枠にとらわれない柔軟な働き方を認めることで、銀行員が自身の能力を最大限に発揮し、金融の枠を超えたイノベーションを生み出すことが可能になる。特に副業を通じて得られる外部での経験は、従業員の視野を広げ、社内での業務にも新たな価値をもたらすことが期待される。

銀行の若手人材にとって、通常業務の枠を超えた挑戦は非常に重要である。20代後半から30代前半は、キャリア形成において極めて重要な時期であり、その時期に新たな経験を積むことは、将来のキャリアの可能性を大きく広げることに繋がる。副業制度の導入により、若手銀行員は社内外で異なる分野に触れることで、新たな知見やスキルを身につけ、自らの市場価値を高めることが可能となる。これは彼ら自身のキャリア形成にとっても、ひいては所属する銀行にとってもプラスの影響をもたらすものである。

副業制度の導入によって、若手の銀行員が自らの才能を発揮し、金融業界に縛られることなく多様な分野で活躍する道が開ける。これにより、彼らが地域社会や経済全体に対しても新たな価値を生み出し、経済を活性化させるリーダーシップを発揮することが期待されている。副業を通じて得られる経験やスキルは、銀行業務においても新たな視点をもたらし、既存のビジネスモデルの枠を超えたイノベーションを引き起こす可能性を秘めている。

従業員にとって、会社に縛られず自由な働き方を選択できることは、個人の成長とともに、会社全体の活性化にも繋がる。副業制度を通じて、若手のエースと呼べるような銀行員が、その才能を最大限に発揮し、社会全体に新たな価値を提供することができる。これからの金融業界においては、柔軟な働き方を認め、個々の従業員が持つポテンシャルを引き出す仕組みを整えることが、企業競争力の強化と持続可能な成長を実現するための鍵となるだろう。

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