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今求められる、社内公募制度と社員のキャリア形成のあり方とは。

皆さん、こんにちは。今回は日経COMEMOから募集があったテーマ、「社内公募制度」について書かせていただきます。

今回のテーマは「社内公募」です。社内公募といってもいろいろありますね。思い浮かぶのは、事業アイデアや、キャンペーンのネーミングなどを広く社内から募集することでしょうか。特定のポストへの人材登用で社内公募をかける、というケースもありますね。KDDIは、これまでエンジニアなど高い専門性が必要な職種を中心に、社外からの公募、つまり中途採用を増やしてきたそうですが、今後は社内から公募するポストも拡大するといいます。富士通は新任課長600ポストの社内公募を実施したと言います。ジョブ型雇用の導入とともに、どうやら社会公募制度が改めて見直されているようです。社内公募を人事異動の中心に据える企業もあるようです。三菱ケミカルホールディングス(HD)は21年から社内公募による人事異動を始めました。第1弾として中核事業会社の約200のポストに自ら手を挙げた人材が充てられます。四半期ごとに公募が実施され、「目指すキャリアを設計できる」ようになるといいます。一度きりの社内公募ではなく、キャリア設計・形成に結ぶつく社内公募ということでしょうか。

■サイバーエージェントの社内公募事例

まずは、「社内公募」の事例としてどんなものがあるか、簡単にご紹介します。

① 【キャリア】の社内公募=「キャリチャレ」
→キャリアチャレンジの略で通称「キャリチャレ」というもので、現部署での勤続1年以上経過した社員を対象に、希望する他部門またはグループ会社への異動をチャレンジできる社内異動公募制度です。2004年にスタートしました。募集ポジションは300以上。社員は、募集がかかっている部署の社員の話を聞いたり、キャリアの相談をしたりして、自分の希望で新たな仕事にチャレンジができるのです。(社内版の求人サイト「キャリバー」に募集職種や募集部署の情報が定期的に更新されています。)

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② 【キャリア】の社内公募=「FA制度」
→エンジニア向けに用意された制度で、2年に1回FA権を行使して、異動ができるというものです。
様々な事業部で活躍するエンジニアが、自己成長するためのチャレンジ異動を人事が支援する制度になっています。(技術者向け支援制度「ENERGY(エナジー)」の中の一つの支援制度です。)

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③ 【事業案】の社内公募=「サイコン」
→社員や内定者が新規事業の提案に挑戦できる場です。
書類審査を通過した新規事業案を、提案者が代表の藤田にプレゼンする模様を社内向けに動画配信しており、フィードバックを通して審査のポイントなどを提案者以外の社員も学べる仕組みになっています。

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上記の3つの制度や仕組み以外にも「公募型」の取り組みは複数あり、たとえば、全社の採用・育成・活性化を推進するためのプロジェクトへの参加メンバーを募ったり、施策のネーミング案を募ったりすることもあります。

■キャリアの社内公募のメリットデメリット

キャリアチェンジにおける社内公募制度のメリットとデメリットは以下のようなことが想定されます。

メリット:
自分の意思でキャリアを選択することで、仕事へのやりがいにつながる
② 転職をせずとも新しいチャレンジができることで、優秀な人材の社外への流出を抑制できる
人材の流動性が高くなり、会社全体が活性化する
④ 他部署への流出をさせまいと、管理職のスキルアップ(育成や適切な評価など)につながる
デメリット:
① 個人の意思を尊重しすぎて、人事異動の全体最適化につながらない可能性もある
上司と部下、または異動前の部署と異動後の部署との関係性に影響が出る可能性がある
③ 異動希望理由が前向きなチャレンジばかりではなく、後ろ向きな理由でも異動できる人が生まれる
④ 仮に手を挙げても希望通り異動ができなかった場合、モチベーションダウンになる

■社内公募制度を上手に使えば、個人と組織の成長機会になる

当社で最もうまくいっている仕組みの一つが、最初にご紹介したキャリアの社内公募制度「キャリチャレ」ですが、このような制度を機能させるためのポイントをまとめました。

① 個人のチャレンジを応援する風土がまず先
→そもそもこういった制度は、「個人のチャレンジを応援する」という企業風土がないと、なかなか実現しにくい制度だと思います。そうでないと、他の部署への異動を希望していることを知った上司やチームの仲間が、「今の仕事はどうするんだ」「組織のことを考えず、自分のことだけ考えて自分勝手だな」などと、否定的に捉えてしまうからです。
新しいチャレンジをすることは、社員の成長角度が上がり、大きなやりがいや成長実感を持ってもらえる良い機会へとつながります。中長期的に見ても、社員がチャレンジを繰り返しながら長く活躍してくれることの方が会社にとってもプラスです。
チャレンジを応援する風土がないのに制度だけあってもうまくいかないことは明白なので、まずはこういった風土作りからしていく必要があるのだと思います。
② リーダーやキーマンが抜けることを決してマイナスに捉えない
→個人のチャレンジや意思を尊重していると、当然リーダーやキーマンの異動も起きます。一見、チームにとってはマイナスに見えますが、見方を変えると、組織内の他のメンバーにチャンスが回ってくることになります。抜けた人の役割を、新しく引き継いで担った人が奮起して、さらに大きな成果を出すことも少なくありません。人材流動性を高めることは、組織の新陳代謝を上げ、個人のキャリア構築にもプラスの影響を与えると思います。
③ フラットに判断できる人が、会社の業績にとってプラスになる選択を行う
→当社の場合は、社内ヘッドハンターの部署(キャリアエージェントと呼んでいます)があり、会社全体の状況を踏まえて、フラットに異動の判断を行います。キャリアのチャレンジは、個人にとっても、会社の業績にとってもプラスに働くことが前提で、どちらか一方のメリットだけのために異動を支援することはありません。人が抜けてしまう部署にとっては短期的にはマイナスが生じてしまいますが、会社全体にとってプラスになるものであると説明ができれば、理解・納得してもらいやすくなります。

また、この「キャリチャレ」という制度以外にもジョブローテーションも随時行っており、当社のキャリア構築のチャンスは

1、自分の意思でキャリアチャレンジを行う制度=「キャリチャレ」

2、会社から期待された(声をかけられた)ジョブローテーション=「ジョブロ」

の2通りの異動方法がありますが、どちらも個人と会社の両方にとってプラスになるような判断をすることを意識しています

簡単に言うと、どちらの方法も「伸ばすべき部署に有能な人材をマッチングさせる」ことで、個人と組織の成長機会を作っているのです。

■「自分のキャリアは自分で築く」が主流に

最後に、これまで書かせていただいた通り、キャリアにおける「社内公募制度」は、個人が自立的にキャリアを構築する機会を拡大したり、個人の“働きがい”や更なる“能力開花”につなげることが可能になります。
どうしても「数年同じ仕事をしていると飽きる」という状況は発生するので、それに対応するソリューションの一つのパターンにもなります。

さらに、部署の垣根を越えた人事異動をしやすくすることで、結果的に全社の人材力向上や、適材適所の実現も可能になり、会社全体の組織力を高めることにもつながります。

組織を強化するためには、採用や育成を強化するだけでなく、社内の人材を流動化させることも非常に有効な手段であることを、人事だけでなく、マネジメント層は改めて認識をする必要があるかもしれません。

「自分のキャリアは人から与えてもらうものではなく、自分で築くものである」という考え方は、会社の規模や風土に関わらずどんな企業にも必要で、働き方やキャリア構築の選択肢が増えている今の時代だからこそ、これまで以上に積極的に会社の中に取り入れていかなければいけない要素なのではないかと思います。

「自分でキャリアを選べない」「キャリアの選択肢が社内にない」というのは、もはや企業において優秀な人材に長く活躍してもらう上で致命的な欠点になり得るのです。


#日経COMEMO #キャリアの社内公募

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