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グローバルスタンダードとなる財政政策を伴う成長戦略

ラピダスが北海道変える 投資5兆円、半導体工場の衝撃 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

海外で経済政策の新たなコンセンサスとなっているのが、成長戦略としての財政政策です。具体的には、気候変動対策や経済安保、格差是正等の将来の社会・経済課題解決に向けてカギとなる技術分野や戦略的な重要物資、規制・制度等に着目し、政府の関与を拡張するというものです。

実際、米国のイエレン財務長官が進めるバイデン民主党政権の成長戦略は「モダン・サプライサイド・エコノミクス=MSSE」と呼ばれ、人的資本の蓄積やインフラの整備、研究開発の促進、環境対策の推進などへの効果的な財政支出による成長戦略が、新たな経済・財政運営のルールとなることが示されています。

そしてイエレン氏は、1兆ドルのインフラ投資と1.75兆ドルの子育て・教育・温暖化対策をMSSEアプローチと位置付け、格差や気候変動に対処しつつ、労働供給や生産性を底上げすることで潜在成長率を中長期的に押し上げ、包摂的でグリーンな成長を目指すとしています。

具体的には、超党派インフラ投資法で総額1兆ドルのインフラ投資に加え、半導体・科学技術法として国内半導体製造業へ5年間で527億ドルの資金援助、インフレ抑制法として4330億ドルの経済対策を打ち出しています。

他国を見ても、中国は「中国製造 2025」の中で、重要分野の7割国産化を目標としています。また、「国家集積回路産業投資基金」を設置し、半導体関連技術に計5兆円を超える大規模投資を実施しています。

EU でも、2020年5月に電池や半導体といった戦略的な重要物資のチョークポイントを分析し、特定国への依存を低減させ自立化を図る「2020産業戦略アップデート」を公表する一方で、2019年7月に打ち出された「EU 復興パッケージ」では、イノベーション支援やグリーン・デジタルへの移行などのために、合計で約 1.8 兆ユーロの予算を計上しています。

このため、この機会に海外の成長戦略としての財政政策の検証を行いつつ、時代の大きな変化に合わせて「新しい資本主義」を確立し、実行していくことが、岸田政権には求められます。しかし、この取り組みがうまくいくには、財政健全化目標の柔軟化が必要であることの認識が必要でしょう。

多くの海外主流派経済学者が指摘しているとおり、2010年欧州債務危機を受けて財政健全化が実施されましたが、この健全化は規制を理由に行われたものであり、強力すぎたためにEUの回復を遅らせました。いくら財政健全化を強力に進めても需要が減ってしまえば税収が減ってしまうためです。

今回取り上げだ北海道のラピダスもそうですが、岸田政権にはグローバルスタンダードとなった成長戦略としての財政政策を速やかに決断・実行に移していくことが求められています。

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