2019年10月の消費税率10%への引き上げを回避すべきではない。

債務残高対GDP比236.0%に達する我が国の“借金漬け”状況を改めて省みるまでもない。借金を減らすには、年間に使う費用(=歳出)を年間の稼ぎ(=歳入)で賄い、いわゆるPB(プライマリーバランス)を黒字にしていくこと、その黒字で借金を返済していくこと、が必要だ。そして、歳入を増やすには、歳入を構成する主要の“租税”を所得課税、消費課税、資産課税等を増やすしかない。炭素税など別の徴税スキームを考えることも将来的には重要になるが、諸外国比でもまだ低い消費税率の上昇は避けて通れない。

消費増税導入に際し、低所得者対策として軽減税率導入が決まっており、さらに景気対策としてプレミアム商品券やポイント還元などがほぼ決まった模様。消費増税で徴税する分5.6兆円のうち、実質的家計負担増2.2兆円という試算に基づき、2兆円超の対策を打つ、という。

プレミアム商品券がどれだけ意義があるのか不明だし、中小小売店でキャッシュレス決済がどれだけ現実的なものなのかも不明だ。軽減税率についての解説がいろいろなところでなされているが、実際の適用が始まれば慣れるまで不自由だろうし、そもそも新たな既得権益を作り出してしまう軽減税率が新たな弊害を生まないで済むのかにも自信はない。景気対策を適切に打つことは必要だが、過度になれば財政再建のための消費増税の目的が本末転倒となる。

目先の効果として景気と増税のバランスを考える必要があるのは言うまでもないが、消費増税導入はそもそも長期的なビジョンとして、受益と負担のバランスや世代間のバランスを調整するためのものであるということを忘れずにいたい。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO38035790R21C18A1MM8000/

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