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【就職活動・転職活動の現実】ITエンジニアがSESでしか内定をもらえないワケ

就職活動や転職活動において、内定が得られず苦労している方が増えていると感じます。4月に下記のnoteを書きましたが、さらに具体的な傾向が見えてきたので整理します。

内定が特に決まりにくい人の傾向と着地点

全体的に企業が厳選採用を行っており、特に第二新卒の時期を過ぎると、未経験者としての教育対象から外れる傾向があります。年齢としては卒業後+2年以内、かつ1社での経験のみというのが2024年8月現在の状況です。

希望年収の観点では500万円を超えると一つの壁があり、特に550万円以上の希望者は厳しい評価を受ける傾向にあります。

リファラル以外の流入経路(人材紹介会社やスカウト媒体)からの応募者が多い傾向も見受けられます。

自社サービスのみならず、SIerからの内定も難しくなっている中、SESでは内定が出やすい傾向があります。結果的にSESに就職するか、現職に残留することが多くなっています。ただし、SESの中には「案件が決まり次第入社」といった条件付きの内定も増加しており、これを内定と呼べるかは疑問が残ります。

内定が出ない理由

各企業はスキルレベルを以前より厳しく評価していますが、人物的な評価で不合格になるケースも増えています。具体的な原因について以下に説明します。

転職意欲が低い

転職意欲は大きく次のように分類できます。

  • 転職意欲が高い

    • 退職が確定しており、必ず転職する意思がある

    • 転職を強く希望している。

  • 転職意欲が低い

    • 良い企業があれば転職したい

    • 市場価値を知りたい

    • スカウトされたから来た

以前は「転職潜在層」と呼ばれ、この層をどう動かすかが採用人事のテクニックとして議論されていました。しかし、2024年の現在では、年収提示が伸び悩んでいるため動かしにくくなっています。加えて選考観点において「自社への興味関心」が重要な要素となっているため、転職意欲が低い候補者を積極的に採用しようとする企業は減っています。

(中途の場合)現職に不満がない

現職に特に不満がない人も転職活動を行っているケースが見られます。実際には転職する必要がないのですが、面接に来る場合もあります。どうして。

利己的な質問ばかり

カジュアル面談や逆質問の際に、「フルリモートは可能ですか?」「残業はありますか?」など、自己都合の質問ばかりをする候補者が少なくありません。こうした質問自体は必要ですが、それだけだと「利己的な人だ」と判断され、不合格になることが多いです。

過度に教育を期待している

「研修はありますか?」と尋ねる候補者もいます。研修があるのは良いことですが、「ある程度自分で学習し、その上で補助的な研修を求める」姿勢が求められます。与えられたこと以外自主的には何も学ばないという態度が見えると、不合格になります。

受けている企業について何も調べていない

特に中小企業では、応募先について何も調べていない候補者が非常に多いです。カジュアル面談であれば問題ありませんが、面接フェーズでは厳しく評価されます。

企業は面談や面接を通じて候補者の選別だけでなく、採用戦略の情報収集も行います。その際に重要になるのが、就職活動や転職活動における「軸」です。特に転職活動では、「次の会社を選ぶ基準」が明確でないと、企業側のアトラクト(引き寄せ)コストが増え、採用の優先順位が下がる傾向にあります。

【自社サービス】事業やドメインに興味がない

自社サービスを提供している企業の面接で、事業やドメインに興味がない人が増えています。エンジニアバブルの時代には、入社後に興味を持てば良いという企業もありましたが、現在は少なくなっています。そんな中、パーソルテンプスタッフ社の取り組みに興味深い育成のお話がありました。

パーソルテンプスタッフでは23年8月からBIMソフト開発のグラフィソフトジャパン(東京・港)と連携し、建設業界で即戦力となる派遣技術者の育成を始めた。BIMのソフトを扱うことができる技術者を現在の50人強から28年度末までに300人まで育てる計画だ。建設業界での勤務経験などを条件に、受講できる研修制度を用意。派遣時給の底上げにつなげる。

この記事のポイントは「建設業界での勤務経験」を条件に入れているところにあると考えています。このことは、かつて未経験歓迎だったtoB SaaSベンチャーの採用にも見られました。例えば、ERP企業で元・経理の人が合格したり、建築SaaS企業で元・現場監督が採用されるケースです。ターゲットとする業界出身者を優先的に育成する戦略は、ドメイン知識や事業共感が期待できます。

この記事については、最終的に派遣という形態になるため、年収や安定性の面で疑問が残りますが、未経験・微経験者を育成し、スムーズなオンボーディングや定着が見込めるという点では、母集団形成の方法として筋が通っていると考えられます。

人材紹介は思考の整理の手伝いをすべき

注目すべき点は、内定が出ない人の多くが人材紹介会社やスカウト媒体を通じてやって来ていることです。スカウト媒体は個人が主体で動くため仕方がありませんが、人材紹介会社の場合は、キャリアアドバイザーが関与するため、彼らの介在価値が問われます。

現在は、数をこなすことに重点を置いている人材紹介会社が多いですが、かつては候補者の思考整理や面接練習に付き合うことも見られました。今や人材紹介フィーが最低でも40%、場合によっては45%に達している現状では、それくらいのサポートを提供しても良いのではないかと思います。

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