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『株式会社』はなぜ生まれた?

2020年1月1日から日経電子版で連載している「逆境の資本主義」。

第3回目は、資本主義の根幹を担う「株式市場の変質」です。

会社名の前後によく「株式会社」という言葉が入っています。これは「株式」を発行して投資家(株主)からお金をもらい、事業を行っている組織のことです。株式市場を通じて、多くの投資家がこれから成長しそうな企業の株式を購入したり、逆に売って換金もできます。企業が集めたお金を駆使して成長し、得た利益を労働者や投資家に還していくことで、広く富が配分されていく――。こうした市場の基本機能が、企業の成長鈍化や経済構造の変化によって変質してきていることを、データを用いて解説します。

世界で初めて株式会社が設立されたのは1602年。オランダの「東インド会社」です。この会社の株式を売買する市場として、同年にアムステルダム証券取引所が生まれました。貿易に使う船の建造など、事業に必要な莫大なお金を多くの投資家から募って集めました。集めたお金は「資本」となり、企業は事業を成功させ利益を増やすことを目指します。その利益の一部を投資家に「配当金」として還元したり、市場で売買される株式の価格(株価)を高めたりして、投資家に報います。

ところが近年、その株式市場の機能が変わってきました。世界の上場企業は成長のために株式を新たに発行するよりも、逆に株式を市場から買い戻す「自社株買い」を積極化しています。流通する株式の数が減れば株価は上がりやすくなるため、自社株買いは株主にとってメリットがあります。ただ、裏返せば企業が成熟し、次の成長に回すお金のニーズが減っていることも示します。限られた投資家しか取引できない未上場企業の株式にお金が集中するなど、成長により得られる「果実」は一部の投資家しか受け取れない状況も生まれています。

「株はギャンブル」――。日本ではこうした意識も根強く、ごく一部の人しか株式を購入したことがないことも事実。株式を通じて富を広く社会に行き渡らせるためには、一人ひとりが正しい知識を身につけて、認識を改めていく必要があるのかもしれません。

(日本経済新聞社デジタル編成ユニット 佐藤亜美)