エッセンシャルワーカーの外国人材活用と日本的特殊性のギャップをどう埋めるのか?

人手不足の対策として期待されるインドネシア人人材

インドネシアのイダ・ファウジヤ労相は、日本に対して今後5年間で25万人の労働者を送り出す目標を発表した。これはこれまでの10万人から大幅に増加したもので、日本政府が在留資格「特定技能」の受け入れ見込み数を拡大したことが背景にある。この発表により、特に介護や看護といったエッセンシャルワーカーの分野での人手不足の解消が期待されている。

日経新聞の記事によると、インドネシアから日本への労働者派遣は増加傾向にある。2023年には、技能実習を除く新規入国者のうち約2万人がインドネシアからの就労目的の入国者であり、特定技能だけでも約1万5千人に達している。これはインドネシアが日本への主要な労働力供給国となっていることを示している。

労相の発言によれば、日本の技術力や規律の高さに対する信頼が、インドネシアの労働者たちが日本で働くことを選ぶ理由の一つである。また、インドネシア人労働者は自身の競争力を高めることを目的として、日本での経験を積むことを目指していると述べられている。しかしながら、その目標を達成するためには、介護士や看護師の資格の相互認証の必要性が指摘されている。特にインドネシアの大学や看護学校で取得した資格を、日本で認定する仕組みが求められている。これにより、両国間の労働力の移動がスムーズになり、インドネシア人の日本での活躍が促進されることが期待される。

サービスと働き方に対する「当たり前」の違いは大きい

インドネシアからの労働者の増加は、日本のエッセンシャルワーカーの人手不足を補うものと考えられる。特に看護や介護といった分野において、技術的なスキルは世界共通である。しかし、その一方で課題も存在する。
例えば、ホスピタリティに対する考え方には大きな違いがある。日本における看護・介護は、患者の医療的なサポートに加えて、生活面での支援も行うことが求められる。
しかし、インドネシアでは、看護師が患者に対して提供するのはあくまで医療的な支援が中心であり、生活の面倒を見ることは家族の役割とされている。このため、インドネシアの大病院では、家族が患者を徹夜で看護することが一般的であり、病院の通路やロビーに家族が寝泊まりする様子は、まるで被災地の避難所を思わせる光景だ。

こうした違いは、ホスピタリティに対する期待の度合いが国によって異なることを反映している。日本のエッセンシャルワーカーが提供するホスピタリティは、しばしば「過剰品質」として評価されることがある。特に海外の基準から見ると、日本のサービスレベルは非常に高いものである反面、ナンセンスにもみられる。
日本では、介護や看護の分野においても、患者の生活の質を高めるための細やかなサービスが求められる一方で、インドネシアではその役割が家族に委ねられるという違いがある。このような文化的背景から、インドネシアの労働者が日本で働く際には、サービスの「当たり前」の基準が異なることからくる誤解や摩擦が生じる可能性がある。

働くことやサービスを提供する際に、それぞれの国で「当たり前」とされる基準は大きく異なる。これらのギャップを理解し、両者の基準をすり合わせる努力が、今後のインドネシア人材の活躍において重要である。国際的な労働移動が活発化する中で、単に技術的なスキルの移転だけでなく、文化的な価値観やホスピタリティの基準を理解し合い、調整することが、双方にとって実りある結果をもたらす基盤となる。

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