見出し画像

新型コロナの5つの印象

 新型コロナが日本で確認されてから10か月近くが経ちますが、まだまだ解明されていないことが数多く残されています。専門家組織は「新型コロナ10の知識」としてこれまでにわかっていること10項目を簡潔にまとめたものを公表しました。

 私も3月に初めて新型コロナの患者さんを拝見してから多くの患者さんを診療してきましたので、この「10の知識」に加え、より現場の状況を反映して実際にどのような症状なのか、どこで感染した可能性が高いのか、検査はどのくらい陽性だったのかなどについて自分が持っている5つの印象を挙げてみました。

① 典型的なのはインフルエンザ類似症状

 当院を受診した新型コロナの患者さんの約7割は38℃以上の発熱があり、他の症状としては悪寒、頭痛、関節痛など、インフルエンザの初期症状とよく似ています。診療所なので軽症者が多いことからか、咳が止まらない、息苦しいなど呼吸器症状が強い方はほとんどいません。38℃以上の発熱は数日間持続する場合と、1-2日程度で解熱してしまう場合と半々くらいの印象で、受診時には解熱している方も少なくはありません。

② 味覚・嗅覚異常はかなり疑わしい

 約3割の発熱なし(38℃未満)の患者さんのうち、3分の2(全体の約2割)の方に味覚・嗅覚異常がみられました。本人の訴えでは「香水の匂いが全くしない」「ジュースが水みたいだった」など、何となくではなく明確な自覚症状と思われます。一方で味覚・嗅覚障害で来られた方はほぼすべて検査で陽性となっていましたので、このような症状が突然出現したような場合、新型コロナ感染が疑わしいと思われます。

③ 感染機会のほとんどは多人数・長時間にわたる会食でお互いがマスクなしでの会話

 症状出現前の行動履歴を聞き取りすると、9割以上の方が発症の5~10日程度前(潜伏期に該当)に昼夜問わず会食機会があり、人数は5~20人程度、時間は数時間以上で、食事が終わった後もお互いがマスクをしないで長時間会話をしていたエピソードがありました。一方、一人暮らしでテレワーク、会食機会や人ごみに行った機会が全くなく、聞き取りの範囲内ではありますが、どこで感染したのか全くわからない方もいましたがごく僅かです。  *「10の知識」の7番目「3密環境で感染リスクが高い。飲食を伴う懇親会など5場面で注意」

④ 7月以降の検査陽性率は横ばい

 3-4月における当院の検査陽性率は5割近くでしたが、当時は行政検査のみで保健所から高熱が持続しているなど、可能性が高い患者さんのみを検査していたことによると考えられます。当院では疑わしい患者さんにはまず抗原検査を実施していますが、感染者が再び増加し始めた7月から10月まで20%*程度でほぼ横ばいの状態が続いています(*保険診療分の検査陽性率で、自費分も含めるとさらに低くなります)。

⑤ 感染機会がなければそう簡単には感染しない

 「濃厚接触者ではないが職場に感染者がいた」「人ごみに出かけたので感染したかもしれない」など無症状でも検査希望で来院される方もとても多いのですが、経過やその時の状況から判断して感染の可能性が少しでもあれば原則的にPCR検査を実施しますが、陽性になった方は1人*だけおられました(*職場内で感染者、職場の判断で出社していた全員を検査して判明)。また高熱で来られた場合には原則的に抗原検査を実施しますが、③のようなエピソードがない方で陽性になった方は今のところ一人もいません。    *「10の知識」の6番目「他の人に感染させる人は2割以下。3密環境で感染を広げなければ流行を抑えられる」

 以上が実際の現場での新型コロナ患者さんの印象です。もちろんすべてが該当するわけではありません。当院は無床診療所であり、多くの方は自力で来られますので重症の方は来られません。またそう多くはありませんが全く症状が出ない無症候性感染者も存在することがわかっていますが、必ずしも「PCR検査陽性=他の人に感染させる」訳ではありません。PCR検査の陽性期間は1か月近くに及ぶこともありますので既に感染力がなくなっても陽性となり得ることをしっかりと理解しておく必要があります。       *「10の知識」の5番目「他の人に感染させる期間は、発症2日前から発症後7-10日間程度」

#日経COMEMO #NIKKEI

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?