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求める挑戦の難易度を元に働く場所を決めよう~働くなら、大企業か、スタートアップか?~

 Potage代表 コミュニティ・アクセラレーター河原あずさです。人材育成や組織開発を通じたキャリア支援も行っています。

 今回、COMEMO編集部から与えられたお題は「#就職は大手かスタートアップか」です。

 大体においてこのような二者択一の回答は「どちらでもいい/人による」が正解だと相場が決まっているのですが、ぼくなりに「挑戦」というキーワードを軸にしながら、議論を掘り下げていきたいと思います。

 結論から書くと、大事なのは、それぞれの人たちがどんな「挑戦」をしたいかの解像度を上げて、明確にした上でキャリアについて考えることだと思っています。

 と、それだけ書くと一般論もいいところなので、続きも読んで頂き、腹落ちしてくださるととても嬉しいです。ハートマークのいいねを押していただけるとなお嬉しいです。下書きのVoicyも聴いていただけるともっと嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。


便利に使われている「挑戦」という言葉

 日経COMEMOの読者層を考えると「どんどん成長していかなくては」「新しいスキルを身につけなくては」というような感覚を持って日々過ごしている方の割合が少なくないかもしれません。

 「挑戦」は、そんな層に対して、ある種、便利に使われている言葉です。曰く「何が起きても変じゃない時代に、挑戦しないと生き残れない」とか「やりがいある職場で挑戦の日々を過ごしませんか?」とかとか……現代社会はいわば「挑戦は正義」という価値観がどんどん強調されていて、それが一種の呪縛になっている状況も見受けられます。

 確かに「挑戦しなさい」とそこかしこから言われると「確かに今の自分は生ぬるい状況かもな…もっと色んなことにチャレンジしなきゃいけないのかな」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

 僕がそういう方々にまず伝えたい言葉があります。それは「挑戦はすでに誰しもがしている」ということです。挑戦しなきゃ、と焦っている人達の多くは、ただ言語化ができていなかったり、意識できなかったりするがために「挑戦していることを挑戦と思えていない」という状況にいるだけなのです。

 例えば、上司から新しいタスクをふられて「こういうの経験ないと思うけどぜひやってみてください」と言われるのだって挑戦だし、子供を生んで育てるのも挑戦です。新しい営業先に飛び込むのも挑戦だし、TOEICのテストをうけて点数を上げようとするのも挑戦です。

 これらの行動は「今までやっていなかったこと」であり「乗り越えたときに新しいことが身についている」であろうことです。そのような小さな挑戦を多くの方は日々繰り返しているし、その1つ1つに、いいも悪いもないと思うのです。それを「挑戦」と言い切れないのは何に起因しているかといえば、多くの場合は「自分への自信のなさ」ではないかと考えています。

 たとえば大企業勤めの方がキャリアエージェントに会ったときに「〇〇という急成長が見込まれるスタートアップにC×Oというポストがあります。自身の成長のために挑戦してみてはいかがですか?」と言われたとします。それが自分にとって適切な挑戦だったら行くべきですが、明確にそのような負荷の高い「挑戦」には、人による向き不向きがあります。そして自分に自信のない人ほど「あなたならできます」と言われると嬉しくなって、つい、実際は向いていない環境に身を投じてしまうということもあるうるのです。

 大事なのは、できるだけ客観的に、自分の特性を理解して、自分の理想とする負荷(パニックゾーンには至らない程度の適度なストレスやプレッシャー)が発生している環境に身を置いて、身の丈にあった挑戦をすることではないかと考えています。

このような記事もあります。「条件次第」という言葉の解釈によってとらえかたが変わりそうなデータですね

「小さな挑戦を積み重ねる」が大企業を選ぶメリット

 ではどのように自身の特性を客観的に把握すればいいのでしょうか。ここで役に立つのが、僕も取り扱っているEQPIなどの、パーソナリティ診断のアセスメントです。今まで400人以上の方が受けていて、自己理解に役立てています。

 このEQPIには「挑戦心」「向上心」というパラメーターがあります。これをみると、その方の「状況に感じるハードルの高さへの耐性」や「成長したいという欲求」が見えるのですが、一見チャレンジングに見える「スタートアップで働く人たち」の数値の出方をみると「強い人もいるしほどほどの人もいる」という「人によって違って、ばらつきのある」状態なのです。つまり、スタートアップで働いたり、起業したりしているからといって、みんながみんなハードルの高い挑戦を求めているというわけではないということなのです。

 ここで大事なのは、自分がどれだけの強度がある挑戦を求めているかということです。挑戦心がとても強い方は「ものすごくぼろぼろになりながら高い壁を乗り越えて自己成長や社会的・経済的なリターンを得る」ことに充足感を覚えるタイプです。より社会的なインパクトを求める仕事や、グローバルな仕事や、ベンチャーの仕事が適性としてあっていますし、今からリスクをはって、一次的な給料が下がろうともストックオプションを獲得して、IPOを目指して果たした結果大きなリターンを得るというような、高リスク高リターン型の挑戦をスタートアップに身を置いてすることへの満足度は上がる傾向があります。

 一方で世の中には、適度な手ごたえの仕事を着実に繰り返して、成功体験を積み重ねて、自分のペースを大事にしながら成長をしていきたいというタイプの方もいらっしゃいます。むしろ、世の中全体を見渡したときには、そのような「小さな挑戦を積み重ねていきたい」タイプの方が多数派ではないでしょうか。

 そして一般的に、大企業はこの「小さな挑戦を積み重ねる」働き方を叶えるには、理想に近い環境なのです。人数が多い分、タスクは分散され、1人あたりにかかる業務的プレッシャーは軽減しますし、万が一のときに替えがきくことが多いです。失敗したとしても吸収できる体力と信頼が大企業には存在します。部署が多い分、比較的負荷が高めの仕事と低めの仕事が存在し、もし選択を間違えたとしても、元の部署に戻ることもできます。このような環境で、自分にとって適度な負荷を選びながらのびのびと挑戦できるわけです。

求める挑戦の難易度に合わせた環境の選択を

 ぼく自身もまさに、この大企業ならではのメリットを活かしてキャリアを歩んできました。富士通に新卒で入社した後に、コンシューマー向けのサービスをやりたくて子会社だったニフティに社内公募に応募して移ります。音楽系サービスの立上げをやったのですが、チームの関係性がうまくいかず、当時立ち上がったばかりだったイベント事業への異動を志願。イベントの仕事をしている時期に応募したシリコンバレー研修プログラムに選抜されて長期出張。その後、サンフランシスコに3年間赴任。帰国後はイベント領域の新規事業を立上げて、東急グループに事業を売却…という、大企業でないとなかなか歩めないキャリアでした。この間、会社は5回移っていますが、退職届を出したのは独立する際に会社を辞めたタイミングの1回だけです。非常にローリスクで、多岐にわたるチャレンジを繰り返すことができていました。

 この通り、大企業には挑戦の種がたくさん眠っているし、比較的、リスクをコントロールする形で実現することもできます。教育や育成を含むインフラが充実しているし、挑戦の選択肢も広めに存在しています。ぼく自身は、ミドルリスクミドルリターン型の人間なので、この大企業の特徴がとてもフィットしていたし、大企業にずっといたからこそ、今のキャリアが実現していると考えています。

 もっとも、先述した通り、すべての人達に大企業と言う選択肢がフィットしているわけではありません。そのような、高いリスクとリターンを求めていたり、ハードル高い壁を乗り越えることに生きがいを感じるタイプの方は、スタートアップを選んだり、起業したりすればいいのです。大事なのは、自分自身のリスクへの許容度や、挑戦に求めるハードルの程度や、ストレス耐性をしっかりと理解できているかどうかです。それを踏まえた上で、所属したい組織の抱えている「挑戦の難易度」を照らし合わせて、自分にフィットしそうな場所を選べばいいのではないでしょうか。

キャリアコーチングもやっています。ご興味ある方はぜひチェック下さい!


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