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本格的な賃上げに必要な外圧

中小企業の賃上げ率、横ばいどまりか 物価高補えぬ公算: 日本経済新聞 (nikkei.com)

このところ、春闘の本格交渉を控え、賃上げ報道が相次いでいます。基本的に賃上げは、①企業業績、②労働需給、③インフレ率、の三つの要素から決まるとされており、これまで国内のマクロ環境が整わない限り、なかなか大幅な賃上げの実現は難しいとされてきました。しかし、グローバルな競争にさらされる企業では、外圧という要素も賃上げを左右する無視できない存在になってきています。

こうした外圧による賃上げは、世界最大手の半導体受注メーカーTSMC進出で賑わう熊本周辺でも起きています。というのも、TSMC熊本工場が採用する23年春の大卒初任給は28万円と熊本県の相場よりも4割程度高い金額となり、中途採用の年収も厚遇されることが打ち出されたためです。

実際に私も現地に視察に行きましたが、」こうした動きにより熊本県内はおろか近隣県でも人材の争奪戦が激化しており、マクロ環境の変化以上の賃上げを余儀なくされているとのことです。また、教育現場でも熊本大学での半導体人材育成学科の新設や、九州内高専での半導体教育の拡充が進んでいます。

そして無視できないのが、TSMCの新工場では約1,700人が働く予定となっていることから、近隣では住居が足りない、商業施設が足りない、教育施設が足りないとのことで、直接的な賃上げ圧力のみならず、元来賃上げに最も重要な要素とされてきたマクロ環境にも好影響が及んでいることです。そもそも、県内総生産額が6兆円台の熊本県に、TSMC関連だけで1兆円規模の投資が入るため、劇的にマクロ環境が好転するのも頷けます。

なお、同様の動きは、ソニーや京セラの諫早新工場やIR誘致で人材争奪戦が起きつつある長崎でも確認されます。

岸田政権は、賃上げ企業への税制優遇や、人への投資に伴う労働移動の円滑化を通じて賃上げに結びつけようとしています。しかし、マクロ環境の長期停滞が続く上に、日本的雇用慣行により労働分配率が高まりにくい中で最も賃上げに貢献してきたのは、企業業績でも労働需給でもインフレでもなく外圧といっても過言ではないでしょう。

岸田政権が進める人への投資や成長分野への労働移動もさることながら、むしろ経済安全保障の強化にも貢献する有力な外資系企業の積極的な誘致や生産拠点の国内回帰を積極的に進めた方が、教育現場の改革も含めて日本の特に地方で働く労働者の待遇の底上げにつながる可能性が高いものと期待されます。

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