見出し画像

テイクアウト自宅ディナーの楽しみ方と飲食店の採算

新型コロナの影響により、飲食店の大半は通常営業ができない状況の中、多様なテイクアウトサービスを考案してきている。じつはグルメな消費者にとっては、これらのテイクアウト探訪が新たな「食」の楽しみ方になっている。

通常は入りにくい高級なレストランでも、コロナの渦中では、料理人が腕によりをかけたテイクアウトメニューを、通常メニューよりも割安価格で提供している。コロナが落ち着くまでの期間限定商品であることから、有名人気店の料理を体験したい人にとっては、またとない好機となっており、1日30食限定のテイクアウト料理が1ヶ月まで予約で一杯ということもある。各地域では、自治体の支援を受けながら、テイクアウト情報サイトが充実してきたことも追い風である。

筆者の地元である浜松市でも、以下のようなテイクアウトサイトが立ち上がっており、うなぎ屋、寿司屋、日本料理、イタリアン、フレンチ、スペイン料理などの店が、独自に開発したテイクアウトメニューの情報を掲載している。もともと浜松は、新鮮な野菜や果物、水産物など食材が豊富な土地柄で、東京で腕を磨いた料理人が夫婦で移住して起業するケースも多いため、テイクアウトのクオリティも高い。

テイクアウト浜松
はままつ飯net
浜松テイクアウトマップ

数あるテイクアウトメニューの中でも、意外なヒット商品となっているのが、ステーキ弁当、新鮮な海鮮素材を使ったチラシ寿司、さらに、自宅でフランス料理フルコースを楽しめるように調理済みの食材が真空パックされた、単価の高いテイクアウト商品である。

画像1

黒毛和牛カルビと牛タンの二福弁当/1500円/炭火焼肉 上杉(浜松市)

画像2

ばらちらし/2500円/勢麟 せいりん(浜松市)

画像3

フランス料理フルコースのテイクアウト(5,000~20,000円)/ザ・ブラッセリー(浜松市)

これらの高級テイクアウト商品を購入しているのは、従来から店を利用している固定客に加えて、新規のファミリー層も多いという。高級店で外食するには、服装やマナーに気を遣うため、高齢者や子どものいる家庭では、躊躇しがちになることが多いが、テイクアウトであれば、作法を気にすることなく自宅で気軽に高級料理を楽しむことができる。

こうした三世代ファミリー(親子と祖父母)は、これまで客単価が高い高級店が取り逃がしてきた顧客層だが、コロナ禍のテイクアウトサービスでは、誕生日や母の日など「特別な日」を自宅で祝いたいというニーズから注文が増えている。テイクアウトは前日までの予約制で注文を受け付ければ、食材ロスのリスクは少なく、料理の数も、家族の人数分だけ注文されるため、商売的にも採算性は高いという。これは、店主もテイクアウトを始めてみるまでは気付かなかった、怪我の功名ともいえそうだ。

そのため、個人の料理人がコダワリの食材を厳選して、家族経営しているような小規模店舗では、コロナが収束した後にもテイクアウトを収益の柱として定着させていくことが検討されている。

これからの「新しい生活様式」では、飲食店内のテーブル間隔は1.8メートル以上に開けて、グループ客も6名程度までに抑えることが推奨されてるため、従来の稼ぎ頭であったパーティや宴会需要を収益源にすることが難しくなる。忘年会や新年会のような恒例行事も、当面は自粛となるだろう。

しかし、「美味しい料理を楽しみたい」というニーズ自体が無くなることはなく、消費者は新たな「食の楽しみ方」を模索しはじめている。家族でちょっと贅沢なテイクアウト料理を楽しむことは、新たな食文化としてコロナ後にも定着していくのかもしれない。

■関連情報
飲食店休業で暴落する高級食材に着目した産直ビジネス
コロナ危機で生じる食糧問題の特徴と新フードビジネス
コロナ失業者を救済する従業員一時雇用仲介ビジネス
不足物資のコロナ特需に活路を開く中小業者の生き残り策
飲食店のテイクアウト化を支援するアプリ開発
飲食業のビジネスモデル転換を促す、未来の食事スタイル

JNEWSはネット草創期の1996年から、海外・国内のビジネス事例を精力的に取材、会員向けレポート(JNEWS LETTER)として配信しています。また、JNEWS会員読者には、コロナ危機に立ち向かう副業の立ち上げ、経営者の事業転換や新規事業立ち上げなどの相談サポートも行っています。詳細は公式サイトをご覧ください。



この記事が参加している募集

おうち時間を工夫で楽しく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?