国が方針を示すべきー再生エネか、原子力か

「命に危険の関わる暑さ」なんて言葉が普通にニュースから流れている昨今は確実におかしい。人工的に雨を降らせたり、晴れにしたり、余に身勝手な人間の行動に地球が悲鳴をあげている。

「我慢しないでクーラーを使いましょう」ともニュースは言う。こんな暑さの中、クーラーがなかったら恐ろしいが、はて待てよ、そういえば節電の話は最近聞かない。「電気は本当は足りているんだ」という解説をする人もいるが、何度か電力会社の施設を見学した経験から言うと、電力会社の関係者がそれこそ、必死に、間断なき電力供給に取り組んでくれている成果である。しかし、どう考えても年々暑さが増している昨今、電気の重要度は増していく。十分な電力確保は考えておく必要がありそうだ。

ところで、資源エネルギー庁が3月に発表した2030年エネルギーミックス実現のための対応策の中で、2030年の電源構成として、火力56%、原子力22-20%、再生エネルギー(以下再生エネ)22-24%を目標としている。現時点では再生エネは15%程度であるから、9%の上乗せが必要だ。

「原子力か再生エネか、どちらを選ぶか」と聞かれたら、クリーンな再生エネがいいと答える消費者は多いのではないか。が、それは、同じ価格だとした場合、であろう。国民が適切なエネルギーミックスを選択するためには、再生エネだと原子力よりお金がかかることをはっきり示す必要がある。たとえば再生エネ先進国のドイツ標準家庭はそのための費用を2016年月額2440円程度支払っているのに対し、日本は同585円。約4.2倍もの費用がかかっても、再生エネルギーを推進したいと国民が選ぶなら、国は再生エネルギーのための施策にさらに舵を切る必要があるし、そこまでは払いたくない、という意見が大勢なら、20-22%分を原子力に担わせる政策を取る必要がある。国民に細かいメニューも提示しないまま、結論をどっちつかずにしている結果、全方位のエネルギーミックス目標に落ち着く、ということになっているのではないか。

今般、富士通や丸井グループなどが事業に使う電力を10-30年かけてすべて再生エネに切り替えるという方針を示した。再生エネルギーの利用者が増えていくことで同発電コストが下がることが待たれる。再生エネルギーに全面的に切り替えるのも企業としての英断だが、2030年原子力の割合がそれなりにあることを見て原子力発電にかける企業が出るのも当然のこと。国の方針をしっかりと示さず、やんわりとエネルギーミックスを見せることで、あとは企業が判断して突き進んでいるのが現状である。あとになって仮に原子力は全面廃止となった場合には、移行措置としておそらく税金を投入するのであろう。それこそが一番の無駄になることだけは何も起きていない今からでも想像できる程だ。日本の資源状況と地球環境を勘案したうえでのエネルギーミックスとはどういう姿か―国が責任を持って示す必要がある。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33165760Z10C18A7MM8000/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?