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高まる欧州経済減速の確度

ECBが公表した2023年第2四半期の銀行貸出調査(BLS)は引き続き、金融引き締めが実体経済に浸透しつつあることをうかがわせるものとなった。この調査はECB理事会で進められている議論において、パズルの重要なピースとなるものである。金融政策決定会合時ハト派メンバーがこの調査結果を利用して、金融政策を過度に引き締めるリスクを浮き彫りにし、伝達メカニズムのタイムラグの重要性を強調する、と考えられる。

与信環境の総合指標など見るべきものは多いが、需要面に関する企業レベルの調査結果は特に注目すべきものである。このセクターの融資需要は、固定資産投資ローンに対する需要の低下と全体的な金利上昇を背景に、この調査が開始されてから最大のマイナスになっている。この点は伝達メカニズムが一段と効果的に機能していることを物語っており、最近の講演でレーン理事が主張した「マクロ経済環境が何らかの形で悪化すれば、それもローン需要の低下とクレジット・リスクの増大により、銀行経路を通じた金融政策の伝達効果を強めるものになる」との見解を裏付ける。

今後の見通しに関する調査結果を1四半期後の現状調査と比較すると、2つの点を導くことができる。第一に、政策金利が大幅に変更されたにもかかわらず、銀行は与信環境の変化を比較的正確に予測できていることである。実際にBLSにおける予測誤差は過去の利上げ局面よりも小さい。第二に、この指標は景気変動との連動性が強く、銀行は大規模な景気後退局面前に、与信基準の最終的な厳格化規模を過小評価する傾向にある。直近では銀行が見込んでいた厳格化規模が過大であったことから考えると、経済活動の顕著な悪化が間近に迫っているわけではなく、金融引き締めの影響が広がるに伴い、標準以下の経済成長が長く続くと見通している、ということである。
以上から、欧州景気は緩やかなトーンダウンの角度が着実に高まっていると言えそうだ。金融引き締めの完全な影響が表れて来るのもこれから、であることを考えればECBの利上げが休止する可能性は高まることも付け加えておく。


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