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運転能力を伸ばしながら乗り続ける。そんな試みも欲しい気がする。

だいぶ以前から、アクセルとブレーキの踏み違えによる衝突事故が増えてきているように思う。昨年度は踏み違いによる事故が3000件を超えた。また、75歳以上による車の死亡事故の原因の1/4以上が「操作不適」によるものだという。高齢化社会において、移動手段の確保は必須だが、運転能力は歳と共に落ちていく。大きな社会問題となっており、なんとか対処しなければならないのは間違いない。

そんな中、国交相より新たな発表があった。来年6月から、日本が主導してきた「安全装置搭載の義務付け」に関する国際的な規制を、日本で適応するというものだ。「障害物の1〜1.5メートル手前に止めた位置からアクセルを完全に踏み込んでも障害物にぶつからないか、ぶつかった際に時速8キロ未満となっているよう加速を抑制。車内の表示器で「アクセルを離してください」などと警告する」という内容だ。自動運転の普及にまだ掛かることを考えると、これにより事故が減少してくれることを私も強く望んでいる。

さらに読み進むと、この記事にはひとつ面白い記述があった。「踏み間違い事故が起きにくいマニュアル車は対象外」という記述だ。私自身、大のマニュアル好きだが、うすうす思っていた通り、踏み違い事故はマニュアル車では起きにくいのだ。足裏の感覚を研ぎ澄まし、タイミングを見極めて、エンジンの動力を伝えるクラッチ操作は、複雑なため注意力が必要だ。一方で、2ペダルのオートマ車は、誰でも簡単に運転できる。少し言い過ぎだが、多少注意散漫になっても運転できてしまう車になった。

故に、オートマ車は運転能力を維持するには不向きだと感じてしまう。その上に自動ブレーキが標準となる。安全装置を、間違った操作を止める機能と考えれば、必要なものだとは思うが、その一方で、運転能力や集中力を削ぐ方向に働くようにも思える。とはいえ、事故が起きている中、それを止められるのであれば安全装置はつけるべきだ。結果としての安全を担保するのか、運転能力を維持するために、難しい操作を課すのか。どちらがよいのだろうか、いやおそらく両方が必要というのが答えだ。

では、運転能力維持には何をすれば良いか。少し暴論だが、高齢者はマニュアル車に乗ってもらうのが良い。マニュアル車に乗ることで、注意力を常に発揮しながら、的確な3ペダルの操作をしてもらう。もし、操作ができない状態になったら、免許返納で自動運転へと移行するタイミングとなる。今の技術を持ってすれば、車の操作履歴を解析することもできるだろう。都度運転するごとに、診断を行い、能力向上に必要なアドバイスもできたら最高だ。運転は人の命に関わるものなので、簡単なことは言えないが、運転する毎に脳の活性化も同時にできるので、トライする意味は十分にあると考えている。

また、高齢者になったら新しい操作方法の車に移行してもらうことを前提に、免許更新をしてもらうというのも良いアイディアかもしれない。玉川大の野渡教授は、新たな車として、床上のペダルはブレーキのみとして、アクセルはハンドルの手を置く位置に設置し、ハンドルには手を離せば自動的に減速する機構を組み込む方式を提案している。野渡教授は、同時に「エンジニアの奮起に期待している」と語っているが、こうした新たな機構を組み込んだ「運転が難しいマニュアル車」をぜひ高齢者の方々向けに創り出して欲しいと思う。その際、常に運転技量を上げたくなる気持ちが自然と湧き上がる仕掛けを、どんどん組み込んで欲しいものだ。

自動に近づけて、なるべく多くの役割を機械に任せて安全にするというアプローチに加えて、人の能力を維持向上させる構造の車や仕掛けを作って人の役割を増やすというアプローチも模索してみたいと思った。もしかしたら、2つが揃うことで初めて人の移動が豊かになるのではないだろうか。そんな世の中を生むべく私もできることをしてみたい。そんな思いが湧いてきた。

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