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なぜ人は焚き火に惹かれるのか オフィスにも広がる炎の力とは

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

焚き火好きですか?昨今のキャンプブームもあり、焚き火に親しむ人が増えた気がします。芸人のヒロシさんが配信している人気のYouTubeチャンネルでも、ソロキャンプや焚き火の魅力が取り上げられています。

いまではアウトドアの枠を飛び出して、オフィスに炎を導入する会社も増えているそうです。

炎を導入するオフィスが増えている。煙が出ないバイオエタノールを使う設備や、たき火を模したアイテムを導入し、キャンプ気分を味わえる。コミュニケーションを活発にするのはもちろん、生産性向上のため仕事の振り返りに生かすプロジェクトもある。外でするのが当たり前だったたき火が、室内にも進出してきている。

東京・浜松町のシェアオフィス「seesaw」。交流イベントの参加者が囲むテーブルの真ん中に、オフィスの担当者がバーナーを近づける。きれいなオレンジ色の火がつくと、「おおー」と歓声が上がった。

このシェアオフィスは燃料商社のシナネンホールディングス(HD)が2020年に開設した。シェアオフィス全体で脱炭素をテーマに掲げており、関連事業を手がける企業が入居している。炎のある場所は入居者同士の交流会のほか、外部の人を交えたイベントを随時開催している。

日経電子版

人と炎の関わりは長く、むしろ人がホモ・サピエンスへと進化するにあたって重要な役割を果たしたのが火の力と言われています。火を道具として活用できるようになったことで、食材を調理することが可能になりました。消化がよくなり効率的に栄養が摂取できるようになったことで、脳の容量の拡大に寄与。また、土器などの道具もつくれるようになったことで、焼くだけでなく煮ることもできるようになりました。そして、外敵に襲われる危険の高い夜の時間も、焚き火を中心に集まることでやり過ごし、またコミュニティへの帰属意識も増したのだろうと想像できます。祭事でも炎は欠かせないものとなりました。

今日でも火の力は深く私たちの文化に根付いています。火祭りや各地で行われていますし、3月と言えば奈良・東大寺の「お水取り」が有名です。

火祭りは各地で季節の変わり目などに行われる。正月は年始めに無病息災を願うどんど焼き、お盆は鎮魂を祈るねぶたや精霊流しなど、年間を通じて様々な形がある。

春はだだおしのように新春を迎える前に災厄を焼き払うタイプが多い。疫病や天災を国家の病気と考え、国家や万民の幸福を祈るため、奈良時代の752年に始まったとされる東大寺の「お水取り」はその代表だろう。

3月に入ると東大寺二月堂は毎夜、松明の炎と火の粉に包まれる。火の玉のようなひときわ華麗な籠松明があげられる3月12日がクライマックスだ。今年は観客を制限し、周囲に明かりが少なかったため、例年にまして松明の炎がくっきりと夜空を照らした。

堂内では「だったん」という火の行がある。ほら貝や鈴の音に合わせ、火天役が煩悩や疫病を焼き尽くさんばかりに松明を打ち振り床に打ちつける。二月堂の下に湧く若狭井から香水をくんで観音様に供える水取りと合わせ、浄火と浄水で清める行法だ。

日経電子版

炎には「ゆらぎ」があることから、心を鎮める効果があると言われてきました。しかし、これを科学的に検証した論文はなく、効果と言われるものも定性的な個人的見解に留まっていました。ここに着目した九州大学基幹教育院システム生命科学府の岡本剛准教授は、自らを被験者とした実験により世界初となる焚き火が脳の活動に及ぼす影響を解明しました。

人がリラックスするとアルファ波が出る、ということは広く知られていると思います。焚き火=リラックスだとすると当然これが観測されるだろうと思いますが、事実は逆であることがわかりました。

この結果、わかったのはたき火があるときは脳波のシータ波とアルファ波が低下しているということ。

「リラックスすると出るアルファ波が低下しているのはなぜ?」と疑問に思って尋ねると、岡本准教授は「いつもアルファ波=リラックスとは限りません」と解説する。

岡本准教授によると、脳から出る電気信号を計測する脳波は波長によって①シータ波(5ヘルツ程度)②アルファ波(10ヘルツ程度)③ベータ波(20ヘルツ程度)④ガンマ波(40ヘルツ程度)-などに分けられ、覚醒している度合いが分かるという。覚醒度の低いシータ波は「うとうとしている状態」、次のアルファ波は「目をつむってゆっくりしている状態」、ベータ波は「仕事中など覚醒状態」、ガンマ波は「ストレスのかかった状態」に相当する。しかし、脳波がなにを表しているかについてはさまざまな説があるため、実験ごとに脳波と心理状態の両方を調べることが重要だそうだ。

産経新聞

つまり、焚き火は心理的にはリラックス効果がある一方で、脳内は覚醒度を上げて頭が働くようになるということです。だからこそ、人が焚き火を囲むと普段は気づかないようなことに思いを馳せたり、深い議論が盛り上がったりするのではないでしょうか。そう考えると、オフィスに焚き火を導入することは非常に理にかなっており、新規事業のブレインストーミングをしたり、経営合宿での中長期の戦略の議論をする際などには積極的に導入してもいいのかもしれません。

いよいよ冬が終わり春が近づいてきました。新年度、キャンプシーズンには「焚き火の力」をビジネスに応用してみるのも面白いですね。


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タイトル画像提供:tsyboleg / PIXTA(ピクスタ)


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