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スピードは新しい信頼の通貨である

「仕事を速く仕上げる」には複合的なスキルが必要

人でも組織でも、相手の能力を計るのに一番手っ取り早い評価指標は「仕事の速さ」だと私は考えます。なぜかというと、仕事を早く仕上げるには、以下のような複合的な能力が要求されるからです。

論理的思考能力

OODAループという考え方があります。人や組織の行動を、Observe(観察)して、Orient(方向づけ=分析)して、Decide(判断)して、Act(行動)するという4つのプロセスに分けて考えるモデルです。

このうち、ビジネスにおいて最初の「観察」と「分析」を素早く行うには、大量の情報をうまく取捨選択する必要があります。

そして、それには、情報を階層にして整理することが有効です。例えば図書館は、フロア(人文)、エリア(哲学)、ラック(ドイツ哲学)、棚(カント)などと、階層をつくる事で膨大な本を整理しています。そのためには論理的思考能力がかかせません。

決断力

情報を観察し、分析したら、その情報に基づいて判断を下す必要があります。この判断にもたついてしまっては、いかに早く情報を整理してもその苦労は水の泡です。

なるべく素早く、明快な判断を下すには、勇気だけではなく知識と経験が必要です。リーダーそうした判断力・決断力を備えているかどうかで、仕事のスピードは激変します。

準備力

あらゆるビジネスコミュニケーションは、ある意味全て交渉と言えます。そして、勝ち取りたいことをリストアップし、それぞれについてここまでは妥協できる、という防衛ラインを設定し合意しておくのは交渉の基本です。

このような準備をしておくと、交渉テーブルのその場で妥協や譲歩ができるのでスピードが格段に上がります。

逆にこのような準備ができていないと、持ち帰って検討、ということになり数日単位でスピードが落ちてしまいます。

想定力

プロジェクトがスケジュール通りに進んでいないとき、一番多く使われる言い訳は「想定外のことが起きた」です。しかし、例えば大事な面接に向かうのに、電車が遅延した、というのは想定外と言えるでしょうか。

それは当然に想定しておくべき事態で、想定外のことが起きたのではなく、単に想定が甘かっただけだ。そう考える人も少なくないでしょう。

起こりうることを可能な限り想定し、それぞれに対応シナリオに備えておくことができる人や組織は、こういう言い訳をしません。結果遅れを最小限にできるので、仕事のスピードも速い、ということになります。

覚悟・コミットメント

いかに事前の準備を尽くして、あらゆる事態を想定したとしても、ときに避け難く予期しないことは起こります。また、急に状況が変わり計画の見直しを強いられることもあるでしょう。

強い覚悟を持った人や組織は、そんな状況に即応します。逆にそこで即応できない人や組織は、ダメージや見直しが必要なエリアを拡大させてしまい、初動の遅さをさらに上塗りしてしまう結果になるのです。

「速さ」はコスパ抜群の実力判定基準

このように、ビジネスにおいて速さを実現するには、様々な能力をそれぞれ高いレベルで備えている必要があります。

そして、その結果としての「速さ」というのは、誰でも簡単に客観的な評価ができ、その判断基準を使うのに知識もお金も人脈も必要ありません。

例えば個人の能力を測るのに、面接をしようとするとまずはお互いにその準備の時間が必要になります。また、面接で実力を正しく判定するには、一定の面接スキルと知識、そして経験が必要でしょう。

履歴書や面接で語られた内容が正しいかどうか、をチェックするには専門の会社を使ってリファレンスを取る必要もあります。

一方、その人の仕事が早く正確か、という判断基準に頼る場合は、このような時間とスキルとコストは一切かかりません。読み間違いはゼロではないものの少なくもあるため、これは非常にコスパのいい手段だと言えます。

「速い人・チーム・企業」が信頼を勝ち得る時代

先ほどのような能力の判定にかかる手間やコストは、業界、地域、国をまたぐ度にさらにかさんできます。

一方でその個人や組織が早く正確な仕事をするかどうか、というのは、別の業界や地域、国が相手でも評価に迷うことはないでしょう。

そうなると、当然コスパの差は拡大していくことになります。実際に色々な業界や国をまたいでビジネスをしていると、「速さ」が新しい信頼の通貨になってる、という感覚があります。

速い個人や組織は信頼される。遅い個人や組織は信頼されない。ビジネスのボーダレス化・グローバル化が進むなか、そんな傾向は今後より一層強まるのではないでしょうか。

生き残るには「速さ」を身につけることです。スピードは新しい信頼の通貨なのです。

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