中国のクレジットリスクはまだ大丈夫か?①19年成長目標を分析

中国では全人代が開幕した。昨年の中国経済は対米貿易摩擦の激化という困難に直面しながらも、GDP伸び率を6.6%と、前年の6.8%からの小幅減速にとどめることができた。2019年については、米国からの貿易や知的財産に関する圧力の高まりを、自国の構造改革と市場開放に役立てる格好で、昨年打ち出された成長の安定化を政策の最優先事項として掲げるとみられる。

この政策の安定化を実現するために、地方財政や金融市場などのシステミック・リスクを抑制しながら、慎重な金融緩和とリスクを惹起しない財政刺激策を採用するのではないだろうか。今年の成長目標については、昨年の「約6.5%」をわずかに下回る「6.0-6.5%」といったレンジが設定される可能性が高い。

しかし、この6%台前半という目標は至極妥当な数値に思える。信用供給増大による成長押上げ効果がかなり減殺されているから、である。

実際、①この数年でレバレッジが上昇して利払い負担が増大したこと、②レバレッジが高い割にGDPへの寄与度が低い不動産購入の増加(不動産価格上昇により借入額も増加した)、③金融アービトラージ取引のための融資が増えたことなどから、信用供給の伸びが成長に与える効果はかなり低下しているのである。過去数年においては、レバレッジ比率が上昇する一方で経済成長率が低下するという現象が生じており、この構図は今後も続くと思われる。実態経済の力強い成長加速を伴わない以上、信用伸び率の回復も過去の上昇サイクルよりも弱いものとなりそうだ。

成長鈍化を回避するには信用拡大が不可欠だが、それだけでは成長の下降トレンドを反転させることは困難であろう。やはり必要なのは需要喚起であり、2019年においてそれを決定するのは次の三つの要因である。第一に輸出・投資・金融市場に顕著な影響を及ぼす米中貿易交渉、第二に不動産セクターに対する中国人民銀行の政策スタンス、第三に地方政府の隠れ債務に対する中央政府の政策を反映したインフラ投資の回復規模、である。なかなか難しい舵捌きが必要な中、“成長はするもペースは穏やか”という目標は理にかなったものに見える、というわけである。


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