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ヴィーガン観光は、地域のSDGsを推進する

(Photo by Heather Barnes on Unsplash

ヴィーガン料理への注目が高まっている。

ヴィーガン:「完全ベジタリアン[菜食主義者]◆動物を食べることを避け、卵・乳製品などの動物由来の食品の摂取も避ける人。場合によっては、動物を利用した製品(皮革製品など)の使用も避ける。」(英辞郎)

ヴィーガンは、食に対してかなりとんがった考え方を持つ人たちだが、今はさまざまなレストランやカフェで、完全菜食主義でない人も、ヴィーガン料理やスイーツを「健康や環境によい」という理由で楽しむようになった。ヴィーガンが狭義の「完全ベジタリアン」という意味合いから、広義の「持続可能なライフスタイル」を象徴するキーワードへと広がってきた今、ヴィーガンのもつ新たな可能性を考えたい。


観光コンテンツとしてのヴィーガン

次の記事に、完全菜食主義者ではない人で、ライフスタイルとしてヴィーガンを楽しむ「ゆるベジ」と呼ばれる人たちが増えてきたことにより、ヴィーガンが観光コンテンツとしても注目され始めていると書かれている。

ヴィーガンは、ある意味で「とんち」のようなところがある。ヴィーガンの人が食べられるバーベキューとは? ヴィーガンが食べられる寿司とは? と考えると、シェフの創造性が楽しめる。

ヴィーガン料理を食べたいと思うのは、必ずしも完全菜食主義者だけではないだろう。私も菜食主義者ではないが、カフェでヴィーガンの料理やスイーツがあると、興味を惹かれて注文することが多い。純粋に、多くのヴィーガン料理は美味しく、それだけでなく、作り手の工夫を感じさせてくれて驚きがあるからだ。

また、記事にもあるように、ヴィーガンと地元野菜という組み合わせは相性がいい。ヴィーガンは「野菜が主役」であるため、地元のブランド野菜との相乗効果を出しやすいからだ。

ヴィーガン観光の市場規模

ヴィーガン観光と言うと、「いったいどのくらいヴィーガンの人っているのだ」と反論を受けるかもしれない。データとしては、次のJETROのレポートの中で「英国の人口の7%が自分自身はヴィーガンであると自認している」ことが紹介されている。

ヴィーガンの訪日外国人は、2017年には134万人、全体の4.7%であったと、次の記事にある。また、アレルギーなどによって何らかの食の制限のある日本人は2000万人もいるという。

ヴィーガンの人にとっては、旅先でのヴィーガン料理へのアクセスのしやすさは、観光の行き先を決める大きな要因になるだろう。ましてや言葉の通じにくい日本で、ヴィーガン料理を提供する店を探すのは一苦労だ。そうなると、ヴィーガン観光、つまりヴィーガンへのアクセスのしやすさを高める努力をすることで、世界のヴィーガンあるいはヴィーガン料理ファンの訪問を促すことができるだろう。

ヴィーガン観光から始まる「SDGsのまちづくり」

さらに、ヴィーガン観光に着目することには別のメリットがある。

動物を食べない、動物を使った製品を使わないということがヴィーガンの価値観なので、ヴィーガン観光、つまり「ヴィーガンの人にとって居心地がいい地域」を作ろうとすると、いきおいエシカルなまちづくりになる

次の記事は、「World’s Top 10 Vegan Friendly Travel Destinations(世界のヴィーガンフレンドリーな観光地トップ10)」を紹介している。アジアのシンガポール、マレーシア、タイ、台湾なども上位に名を連ねている。逆に言えば、欧州のヴィーガン観光客は、日本ではなく、こういった都市を旅行先に「食の制約」を理由に選んでいる可能性が高いのだ。

ヴィーガン観光で有名になれば、ヴィーガン料理店がはやるので、それにあった地元野菜が流通するようになるだろう。洋服や鞄、化粧品なども、動物製品を使わないものが置かれるようになり、ホテルの内装やアメニティにも影響を与えるだろう。そして何より、「ヴィーガン縛り」にすることで、今まで何の気なしに使っていたものを「これは何でできているのか」と考えるようになる。この習慣が、「どうせなら環境にいいものを使おう」「地元の資源を活用しよう」となって、結果的に「SDGsのまちづくり」につながる可能性が高い。

まだ日本では、「ヴィーガンってなに?」という人も多いだろう。市場規模から入るのではなく、地域のSDGsまちづくり推進の促進剤として、「ヴィーガン観光」を検討してみてはどうだろうか

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