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日本の現在地点はDXではなくデジタライゼーションだ

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

※ 本記事は日経産業新聞連動投稿企画「#DXに失敗する理由」への寄稿でです。

日本においてDX(デジタルトランスフォーメーション)が語られ始めたのは、2016年ごろからでしょうか。基盤プラットフォームがクライアント・サーバー型からクラウド型へと移行していく必要性と共に、そもそものビジネス全体をデジタル前提で再定義しようという動きでした。

これは「SMAC」と言われることもあります。ソーシャルサービス(Social Service)、モバイル(Mobile)、アナリティクス(Analytics)、クラウド(Cloud)の頭文字を組み合わせた造語です。バックエンドのみならず、利用者側もモバイルとソーシャルが中心となったことから、売上・利益を伸ばすためにはこれらのIT投資が重要となります。

DXの至るには、2つの前段階があります。1)デジタル化 2)デジタライゼーション、です。デジタル化は、アナログ情報をデジタル情報に変換すること。紙をスキャンして画像データとして扱うことなどが該当します。

では、デジタライゼーションとはなんでしょうか? それは、デジタル化されたものを用いて、ビジネスプロセスが変化することです。先のスキャンによるデジタル化を例にあげれば、承認を得るのに使っていた紙をデジタル化して稟議業務を変化させることで、社内の承認プロセスそのものを根本的に変革するようなことです。

この次に、ようやくDXがやってきます。個別企業の内部のデジタライゼーションの枠を越え、取引先まですべてにこの新しいプロセスが導入される。するとどうでしょう。これは新しい業界標準のプロセスとなり、ひいては社会全体へと影響を与えることでしょう。ビジネスのスピードアップにより生産性が向上し、結果として売上・利益が向上していきます。

以下の記事でも、既存業務の効率化をDXと呼んでいるに等しいとの指摘がありました。

「事業変革を伴わない業務改善プロジェクトは、DXとは呼べない」。コンサル大手のアクセンチュア(東京・港)の山根圭輔マネジング・ディレクターは指摘する。

BCGの調査によれば、日本企業の67%はデジタル技術を「現在のビジネスモデル効率化を可能にするもの」と答えた。既存業務の効率化をDXと呼んでいるに等しい。これに対し33%が「ビジネスモデルの大幅な変更・拡張、または新規ビジネスモデルの開発を可能にするもの」と回答した。

2018年に経済産業省がまとめたDX推進のためのガイドラインは、「2025年の崖」という技術的負債のリスクにも触れながら具体的な経済損失に言及されており、大きな話題を呼びました。

DXに失敗する理由のひとつが、そもそもDX=デジタライゼーションと誤解していることだと思います。それも、既存業務をそのままデジタルに持ってきただけのものが多いのではないでしょうか(紙をまったく同じレイアウトの画面にこだわる、いわゆる神エクセルが跋扈するのも同じ理由)。

これでは業務効率化にも至らず、お金をかけてシステムを導入したのに前と変わらないため、経営者からしても「DXは失敗だった」と判断してしまいます。

DXに失敗しないために一番重要なことは、経営者の正しい理解と目的やデジタル技術で実現する事業の姿を明確にすること。そして、全力でコミットすること。これらが1つでも欠けている場合は、残念ながら成功する可能性はかなり低いでしょう。

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タイトル画像提供:tiquitaca / PIXTA(ピクスタ)

#日経COMEMO #DXに失敗する理由

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