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【実録】未上場スタートアップが経営統合して1年。良かった事、大変だった事。

Mintoの水野です。SNS・Web3領域で漫画・アニメ・キャラクターなどをクリエイターと共に創っています。エンタメ・スタートアップです。

2022年を締める記事は、スタートアップへ関わる方々へ少しでもノウハウや情報を還元できれば!ということで、今年、未上場スタートアップ同士で経営統合した弊社(Minto社)の良かった事、大変だった事をまとめてみました。

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2022年1月に完全経営統合

Minto社は、クオン社とwwwaap社の2社が合併した会社です。2021年10月に正式発表し、2022年1月に合併が完了しました。

一般的に、スタートアップは大企業とは違い、リスクを負って、スピードを重視し、小規模で事業を進めます。市場や社内組織のちょっとした変化で、一気に経営状況が変わってしまうことも、しばしば。

多くのスタートアップがIPOを目指しますが、大企業とのM&Aに舵を切る事例も増えましたし、そもそも、事業成長せずに会社を畳んでしまう事も多々あります(スタートアップは、挑戦+リスクマネーで成立する領域なので、倒産もある種必然だと、僕は思います。)

そんな中、未上場スタートアップが経営統合する事例は、まだまだ少ない。2022年に経営統合したMinto社の良かった事、大変だった事から、その良し悪しや意義を感じていただければ幸いです。大変だった事を先に読みたい方はそちらからでもどうぞ笑

経営統合の1年、良かったこと

良かった事は、沢山あるのですが、10個に厳選しました。もしお時間があれば、先に経営統合noteを読んで頂けると、更に理解しやすいと思います。

①事業(売上/利益)が成長した事
通期で前年比150%、4半期ベースだと前年比170%の売上成長を果たせました。上海ロックダウンの影響を受けた中国支社以外は全ての部門で成長し、想定以上の成果でした。しっかり投資をしつつ、利益を出すことができる状態に。

②志が同じ仲間が増えた事
漫画・アニメ・キャラクターが好きで、クリエイターと向き合ってこの領域の事業をもっと拡大したいという2社が経営統合したので、当然と言えば当然ですが、改めてすごく良かったなと。社内のSlackでちょっとした相談をすれば、すぐ意見が集まる。互いの仕事にリスペクトがあります。

③経営の役割分担、迅速な意思決定ができた事
経営陣が各人の得意な領域にフォーカスできました。毎週1回の経営会議で、忖度せず、互いに意見を言い合い、重要な意思決定も迅速に行えたと思います。これは、すごく良かったです。経営陣が増えるとこんなに物事進むのかと… 逆に言えば、日本のスタートアップって経営人材不足が課題なのではないかと… そう、思いました。

④メンバーの意識変化があった事
今までの2社の事業がマンネリ化してた訳ではありませんが、経営統合、IPO準備、新規メンバー増など刺激的なトピックがあり、働いているメンバーの意識を変えるきっかけになったと思います。それが結果として各事業の成長にも寄与したと思います。事業の軸が増え、従来だと知り合いの会社へご紹介していたような仕事が自社で賄えるようになった、という事も良かった気がします。

⑤シナジーよりも集中できた事に価値
旧wwwaap社と旧クオン社は、同じ事業領域でありながら、BtoB、BtoC、漫画、キャラクターなど事業モデルや領域が少し異なっていました。シナジーを出すことを意識しすぎた部署の統合はしないようにして、被っている領域だけ整理して、強みの成長に集中できたことが、結果良かったのでは?と思います。シナジーの焦り過ぎは禁物だなと思います。

⑥新たなクリエイターとの関わりが増えた事
Mintoの事業の源泉は、クリエイターです。2社が経営統合することでクリエイターとの関わりが増え、更に新規事業(Web3、Webtoon)で関わるクリエイターも増え、その中でMintoが向き合うべきクリエイターの課題やも新たに見えてきました。もっとクリエイターを増やして活躍できる世界を作ろう、という意識にも更に。

⑦新領域・新事業の拡大ができた事
経営陣の役割分担で、僕自身は完全にWeb3事業にフォーカスできました。この1年でMintoのWeb3事業はNFT、メタバース領域で大きく拡大できたと思います。また、中川がWebtoon事業にフォーカスしたことで、年間10数本の作品を手掛けるWebtoonスタジオとして成長しています。普通は新規領域を2事業同時に手がけたらVCさんに怒られますよ笑

⑧資本業務提携(資金調達)ができた事
4月にカカオピッコマ社と資本業務提携しました。経営統合で事業面が広がった事が評価され、今まで一番時間をかけずに資金調達に至りました。また、資本業務提携後も、Twitterを活用したマーケティングなど、コンテンツソリューション事業での連携が既に進んでいます。

⑨モメンタムを広報で発信できた事
経営統合、資本業務提携、新規領域の事業などのトピックスが多数あり、それによってモメンタムを作り出し、社内だけでなく、その勢いを広報活動を通じて社外に発信していくことができました。広報チームの活躍で、僕自身も様々なメディア露出や執筆に時間を割きましたが、そもそもその時間を作れたのも経営陣の役割分担に起因します。モメンタムの重要性は、下記のY Combinator Sam AltmanさんのMITでの講演をどうぞ。

⑩採用が活性化できた事
この1年で、国内18名、海外8名のメンバーが、新たにMintoに加わりました。採用チームの意識やコミット力がすごかったです。モメンタムを作り出せても採用に寄与しないと意味がないので、本当に、事業、広報、採用はセットですね。改めて採用の重要さを感じた1年でした。


経営統合の1年、大変だった事

一方で、大変だった事も、当然ながら沢山あるのですが、こちらも10個にまとめました。

①ステークホルダー対応
ステークホルダー(株主)調整は大変でした。会社、VC、事業会社、個人など株主の様々な利害は一致しません。心掛けたのは、経営統合した方が絶対に事業が成長すると伝え、見える化し、丁寧に説明すること、それらを迅速にやる事。株主には4-5回の説明会をしてQ&Aを繰り返させていただきました。

②創業者/経営陣の意識合わせ
2社の創業者である、僕と中川は経営統合前に4年程度の付き合いがあり、2ヶ月に1回位のペースで飲みにいく経営者仲間でした。そういった関係値があった上でも、経営統合に際してお互いが大事にしている事やVisionを話した時のズレはありました。そのズレを双方で理解するのに統合前に20-30時間くらいは議論したと思いますし、経営統合後は、経営陣で時間を使いました。ここは、他社の経営統合でも失敗ポイントになりそうだなと思いましたね。

③社名
双方の経営陣、メンバーにとって社名はすごく重要です。新しい一歩を踏み出すために僕らは社名を変えましたが、社名を考える際には、双方のメンバーや事業モデルが頭に浮かび、その間を取ろうとして難航しました。社名はロジカルに決まりません。もちろん社名に込める意味は最重要ですが、結局、最後は「音の響き」だったり「覚えやすさ」などが、重要な要素になりました。

④膨大なコーポレートタスク
経営統合直後に一番大変なのはコーポレート部門です。会計、経理、労務、法務に始まり、細かい社内決裁・承認ルールなどの整備は壮絶なものがありました。スタートアップは、それほど盤石なコーポレート体制を敷けていないケースが多く、MintoでもBtoB事業部門管掌の取締役の高橋がコーポレートを兼務する形でスタートしましたが、本当に大変でした… 感謝。そして、この大変さを経営陣が改めて理解でき、さらにIPO向けて体制整備に真剣に向き合う事ができました。結果、2022年には公認会計士の資格を持つ2名のメンバーがジョインして体制を強化しています。来年はさらなる強化予定。

①-④までは、経営統合の準備の期間含めて、高橋がnoteに詳細の記事を書いていますので、ぜひこちらもお読みください。めちゃくちゃ具体的です。

⑤カルチャーの再定義(MVV)
2つの会社がそれぞれのMission、Vision、Valueを掲げていました。そして、MVV浸透度やMVVの位置付けも異なりました。新しい会社には新しいMVVが必要になります。Mintoでは、経営陣が新しいMissionを作るのに3-4ヶ月かかり、経営陣が発表した新しいMissionについては、当初すぐに受け入れられなかった面もあったと思います。そのため、Value作りは全社員参加で、更に3-4ヶ月の時間をかけて議論しました。今から振り返るとこの6ヶ月間くらいの期間が一番カルチャーがふわふわして、組織が不安定だったかなと思います。それでも、一番大事なプロセスだったと思います。

⑥組織が急拡大することへの対応と準備
2社が経営統合すれば、単純に2倍、またはそれ以上の人員になります。さらに新しいメンバーが加わり、わずか数ヶ月の間に組織が急拡大しました。マネージャー、部長といった管理職メンバーが増え、それぞれの役割を気にするようになってきます。管理職は、ポジションに対して人数が足りないので、兼務の嵐になります。スタートアップなのだから兼務して当たり前だし、経営メンバーも管理職・メンバーとしてガンガン出陣していきますが、兼務しているメンバーのリソースが、どの部署に寄っているかで優先度が左右されてしまう、ということも起きました。

⑦事業モデルの違い=仕事上の評価軸の違い
BtoB、BtoCの事業モデルの違いは、仕事上の価値観や評価軸の違いにもつながります。クリエイターを軸としながらもクライアントがいる業務なのか?ファンとどう向き合うかが重要なのか?締切は絶対的優先か、クオリティ優先か?などなど。直接同じ部署でなかったとしても、同じ会社の他のメンバーがどのように仕事をしているかは気になりますし、その上でどう評価されるかもすごく気になります。評価制度のアップデートも大きな課題でした。評価制度は、現段階でも継続的にアップデート中です。終わりない旅。

⑧仲の良いメンバーと、全く知らないメンバーの同居
Mintoでは、シナジーの為にむりやり部署をひとつにする、というような統合の仕方はしなかったため、自部署のメンバーが完全に変わるというようなことはありませんでした。一方でオフィスに行けば、他部署のメンバーもいます。話しやすい人といつも通り話してしまうと、なかなかか他部署と話すきっかけがないということが頻発しました。経営統合してから6ヶ月くらいで、MVV制定の課題や組織拡大の課題などの合わせ技で、組織が非常不安定に。そのタイミングで横串の組織開発チームを作り、飲み会・部活動などが立ち上がって、ようやく落ち着いてきた感じです。Face to Face 大事。

⑨シナジーは?統合メリットは?
当初は、シナジーを無理には作らないという方針でしたが、「じゃあなんで2社統合したのか?」という風に社内では思われることもあったかと思います。シナジーや統合メリットは時間をかけて浸透され、発揮されていくものだとは思いますが、メンバーの気持ちを考えれば、そう思われて当然ですし、それに向き合って、対話していくのがもっと大事だかなと思います。

⑩事業説明の難しさ
Mintoはいくつかの事業が並行・成長して進んでいるスタートアップです。そのため、どの側面を切り出して伝えるかで事業説明の仕方が変わってきます。この説明は、広報・採用のいずれでも悩んだところでした。メディアが求めるのは、新しい事業ですが、既存事業ももっと情報発信したいし、採用したい。正直、いまだにこの課題に対しての正解はありませんが、採用資料の作成などを通じて、各人が全社の事業を語るようになってきた事は大きいと思います。

振り返ってみると、大変だった事は、良かった事の裏返しで、経営陣が事業成長にコミットできた反面、カルチャーや、メンバーの感情と真摯に向きあえていなかったな事だなと思います。結果として退職するメンバーもいました。何が正解かはわかりませんが、来年、そしてその先でも、この経験をもっと活かしていきたいと思います。

最後に:もっと経営統合が増えるといい。

2022年は、Minto以外にも未上場スタートアップ同士、いくつかの経営統合がありました。それぞれの経営統合で、きっと様々な成功や失敗のドラマがきっとあったと思います。

スニダン運営のSODAとモノカブ

PlottとBUZZCAST

Brave Group


ひとつだけ、再度繰り返すなら、日本のスタートアップって経営人材不足が課題なのではないかと…感じていることです。そしてそれを解決する手段として未上場スタートアップの経営統合があるのではないかな、と思います。

そういう意味で、来年はもっと経営統合が増えるといいなと思いますし、その際にこのnoteが少しでも役にたてば幸いです。

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それでは良いお年を!

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