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NOを伝えることを楽しむ ー即興演劇からの学び

「これを言ったら相手に嫌われそうだから、伝えるのはやめておこうかな…」

「気にしないそぶりをしてるけど、本当は嫌なんだよな…」

組織や家族、友人たちとのあいだで、思っていることを自分で検閲してしまい、表現しなくなってしまうことは多々あります。しかし、そんな自己検閲を続けていると、お互いが何を考えているかがわからなかったり、良いアイデアが出なかったりして、関係性が希薄化していくこともあるでしょう。

最近ぼくは、こうした関係性の問題にアプローチする方法として「即興演劇/インプロ」に着目しています。自分への検閲をゆるめ、リラックスして自然に発生したアイデアを表現しながらも、リスクある表現を楽しめる身体性と関係性を生み出していく手法だと感じているからです。

近年では、日本語の不自由な在留外国人や、認知症患者の介護者などを対象に、言語に依存しすぎないコミュニケーションを耕す実践例もあるようです。

プレゼントゲーム

そんな興味を仲間内で語るなかで、インプロに関する知識経験をもっている会社のメンバーに「プレゼント」というワークを教えてもらいました。

集まったメンバーに順番に架空のプレゼントをわたし、それをもらった人が嬉しいかいらないかを伝えるシンプルなゲームです。

まず1周目は相手が無難に喜びそうなものを渡します。そして2周目は喜ぶかいらないかをリスクをとってプレゼントを渡すことにチャレンジします。

たとえば相手がお酒が好きかどうかわからないけど「ウィスキーです!どうぞ!」といってプレゼントしてみる。すると、「ごめんなさい!私はお酒飲めないんです」と断られる。しかし、それが単なるプレゼント失敗ではなく、相手のことを知るきっかけになります。

また、不思議なことに、喜ばれるか、いらないかのギリギリのラインを賭けに出てプレゼントすること、そして面白おかしく断ることが楽しくなってくるのです。日常のコミュニケーションでは、ハラハラしたり、嫌な気持ちになることに、楽しみながら慣れていくことができると言えるでしょう。

Yes, Andだけじゃない即興演劇の魅力

通常、インプロというと「Yes, And…」が大原則で、どんなことも一旦受け入れる、というイメージがあります。たしかにそれによって広がっていくアイデアもあると思うのですが、ぼくが学生時代に大学でインプロの授業を受けていた時「前向きすぎる」その姿勢に、少なからぬ抵抗感を持っていました。

ですが、インプロの創始者とも言われるキース・ジョンストンの著作『インプロ 自由自在な行動表現』を読んでいると、ポジティブに受け止めるだけでない深遠なインプロの魅力が見えてきましす。

さきほどのプレゼントゲームのように、「楽しく断る」というある種の矛盾をはらむものもあれば、「罵倒し合うことを楽しむ」といった、人間関係の摩擦自体を取り上げ、それすらも楽しもうとする姿勢があることがわかります。明るく綺麗な面だけでなく、言葉や態度による暴力や抑圧をいなすしなやかな知性であることが感じ取れます。そもそもコメディとは、そのような風刺・毒の要素をもった芸術だったことを思い起こされるのです。

そんなわけで、インプロ面白いなと思ってます。


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